前回の修理記録はこちら
からくり時計ファンタジアの修理記録 (1)

奈良榛原のカフェ『ナチュラル』のお客さんから依頼された、からくり時計ファンタジアの修理。

再び動き出す可能性を残したまま、2月に3度目の修理作業で訪れました。

メーカーからの回答では、端子や配線・電池ボックスの腐食原因としては、
長い間入れたままの電池自体から酸性のガスが吹き出したのではないかとことです。

バネと配線の朽ち果てていた箇所は、前回までに電池ボックスと配線を復旧させました。
時計自体は年代物でメーカーでは修理不可との判断だったのですが、部品一つ一つを取り出すと現在入手可能なものが多くありました。



部品自体に錆が見られていたICチップは前回訪れた時に品番を書き出し、日本橋の部品店やインターネット商社から一通り入手ができました。
それを持って時計を分解しハンダづけするのですが、今度は前回のように一瞬音が鳴ることもなく、反応がありません。


その後3月にも別の部品を持って訪れましたが、付け替えてもどうしても変化がありませんでした。

どの部品が壊れているのか見当もつかず、基板とにらめっこしながらテスターを当てたりして原因を探ってました。
トランジスタ数ヶ所を計ったものの正常動作のため、これらは交換せず別の方法を考えました。

あと1つ、僕が図面を見て当初から気になっていた部品がありました。

CDSセルというセンサーです。

明るさに反応して動作し、夜のように暗い時は動作しないというスイッチの役割を担う部品です。
これをまだ交換していなかったのです。
最後に交換して、ダメなら自分ではお手上げなので他の時計業者などに見てもらうしかないと伝えました。

 

緑の円の下にある、半円状の穴にあるセンサーです。
(QUARTZ JAPANの上)


そして4月18日。再び僕はナチュラルを訪れます。
5度目の正直となるか、CDSセルの交換を行いました。


電池を再びセットし時計を立てかけました。

すぐには動作しなかったので、立てかけて右下のスイッチを触っていたら…。



 ゴーン!!ゴーン!!


鳴った!ついに動いた!!!

時計はついに本来の動作に戻りました。
軽快な電子音メロディが鳴り、文字盤が回りはじめた…と思ったら、


「先生!先生!時計直った!」


なんと鳴りだした瞬間に、オーナーが大声で呼びかけました。
時計の持ち主である書道の先生が店の前を通ったんです。

偶然の一瞬でした。
まさか音色と共にご本人が現れるなんて、驚きましたね。

お店で預かって4ヶ月経って、こうして修理完了の快挙を3人で立ち会えるなんて劇的じゃないですか。
嬉しかったですね。


オーナーも諦めかけてたみたいですが、僕は知識が深い訳ではないながらも必ず直せると見込んでいたので、成功して一安心でした。


その時計が鳴った瞬間、メロディと共に文字盤が回る動作は映像に撮ってみました。
ぜひご覧ください。

Seiko Fantasia からくり時計 ファンタジア修理成功の瞬間

このファンタジアというからくり時計は、20数年前に作られていたモデルのようです。
オーナーの話だと、医院・病院の待合室によく見かけたそうでした。
九州に居る僕の友達の方は、新築祝いで同じ時計をいただいたとの話です。

そういえば近所に古くからある喫茶店にも、デザインはナショナル(パナソニック)のテレビ広告になっている同じ時計が置いていました。


こうして時刻が来たら回って動きを見せてくれる時計は、家にあると賑やかになりますね。
子供にとってメロディとともに人形が回って出てくるのは大好きだと思います。

楽器とは異なるものの電子音で動く製品ですからシンセサイザーなどの楽器に共通する部分もあるし、初めてながらも修理を完了できたのは自分にとっても自信になりましたね。

こちらこそいい経験をさせてもらいました。

右上の『穂高』の書は、持ち主の先生が書かれたものです。
オーナーは時計をしばらくカフェで借りて、お客さんに見せてあげたいのことでした。