では前回の続きです。
お話しすると年齢が近いこともありお互いの家族の話となり、お聞きするとその方は結婚して奥様と一緒に暮らされるのが今回の任地で初めてだそうです。
それまでは中東での仕事が多く、イスラムの戒律や中東の国独特の法律、慣習に慣れていない日本女性が暮らしていくのは難しいだろうということで、結婚後も奥様は日本、ご主人は任地で暮らすという別居生活を数年されていたそうです。
中東の国々では何かと女性には不便なことが多く、極端な例ですがサウジアラビアでは女性が車を運転することが認められず、公共交通機関のほとんどないその国で車を運転できないと買い物にも行けないそうです。
(サウジアラビアではこういう事情があり、多くの家庭では使用人を雇って買い物を含めた家事をさせているのだが、そういう習慣のない日本人では使用人を使いこなすのが難しいといわれています)
ただ、その方が社用などで日本に帰国されたときは短い間ながら一緒に暮らされていたそうですが、ご主人の任地で長く一緒に暮らされるのは今回が初めてだそうです。
その奥様とは建設工事関係者のパーティでお会いしたが、「これでやっと夫婦らしく一緒に暮らせます。」と、とてもうれしそうにお話されていたのが印象的でした。
次の任地がどこになるか分からない中、もし次のご主人の赴任地が治安の悪い場所、国、もしくは再び中東の国であれば、また離れ離れになるかもしれないという漠然とした不安を心に秘めながらも、いまの幸せな生活を精一杯楽しみたいという率直なお気持ちがその笑顔にあふれているように私には思えました。
その当時、私は海外に行くとはいっても、この方ほど次々と渡り歩くこともなく、会社の方針で治安の悪い場所でのプラント建設はしないので、家族同伴で任地に赴いていた。
そんな私にいつ会社の都合で家族が離れ離れになるかわからない不安を抱えながらも、世界を渡り歩いて仕事をされている方を知った、家族持ちとなって海外赴任した三十代の思い出でです。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。



