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エルゴの小人たち

iTHINK therefore iam...

早産になるきっかけは分かっていても
その原因特定は難しく未だに解明されていない。
だから完全に予防するのも難しい。

私は、高血圧も喫煙や飲酒は無かったので
考えうるのは「過度なストレス」か
「遺伝的要素」であるけど…
仕事をバリバリしていたとも思えないし
母や妹は超安産型で、どちらもピンとこない。


*** 5年前の11月9日、10日 ***

子宮収縮の原因が不明のまま時間が過ぎる。
白血球の数が多いことから多分どこかで
炎症が起きているのだろう。
そう判断し抗生物質ものんでいる。

ただ場所が特定できない。調べようがない。
絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)
だろうという推測で治療が進められた。

絨毛膜羊膜炎は簡単に言えば
子宮を覆う膜が細菌感染している炎症。
身体が子宮を「害のある物」とみなして
排除しようとするから収縮が起きる。

「今のところ胎児への影響はなさそうだから
赤ちゃんが自力で呼吸ができる35週まで
妊娠を継続させる方が良い。」
担当のH先生を初めとする産科チームが
考えて下さった方針である。

「あと3週間ママと頑張ろうね」と
1日何回も赤ちゃんに語りかけた。

『コウノドリ』を見て毎回泣いてしまうのは
きっと病院で読んだ出産ノートを通して
色んな出産体験に触れたからだと思う。

今までにも色んな本を読んで
人生観が変わったことがあったけど…
著名な作家さんではなく、普通の人が書いた
生の声に力強く心動かされると思わなかった。


***  5年前の11月8日  ***

入院してから約1週間が過ぎようとしている。
お腹は時折張るし、出血もあったり止まったり。
血液検査では白血球の数が凄く多いと言われ
原因は分からないけど、身体のどこかが
不調を訴えているらしい。

何かしらの病気にかかっていることや
いつ退院できるのか分からないことで
暗い気持ちになっていた私に母が
産科の休憩室にある「自由ノート」を
2冊ほど持って来てくれた。

普通に何事もなく安産で産んだお母さん。
不妊治療や高齢出産で産んだお母さん。
僅か750gの赤ちゃんを緊急で産んだお母さん。
私のように切迫早産で入院していたお母さん。

色んなお母さん達の色んな出産体験が
書かれていて、読みながら目頭が熱くなった。
どんな結末になるかは分からないけど
私も退院する前に一筆書いていこう。
私の出産体験を読んで励まされる後輩ママ達が
いることを願って。そう覚悟を決めた夜だった。

自他共に認めるママっ子の私。
母無しで生きていけないと今でも思う。

両親に日々感謝しているつもりだったけど
自分自身が親になって初めて知ったこともある。
更に両親の偉大さに気付かされた。

まだまだ若い両親だけど…母ももうすぐ還暦。
いつまでも一緒に笑っていられるように
2人には健康で元気であり続けて欲しい。


***  5年前の11月7日  ***


母がNYから駆けつけてくれた。 

1週間前にNYに大きな爪痕を遺した
Hurricane Sandy…実家は幸い被害なく
停電にも断水にもならなかったらしい。
けど、何処でもかしこでもガソリンスタンドが
激しく混み合い、なかなか給油できない状況。
安全に空港まで向かう手段が確保できると
見通しが立ったタイミングで即帰国してくれた。

「無事に産まれてきますように。」
孫の出生はもちろん、娘である私の無事を
祈って母は沢山のベビー服を買ってきてくれた。
プレゼントの箱から愛情が溢れ出てきた。

母が傍にいてくれる。
そう考えただけで心強かった。