歯医者は怖いか? | こばやし歯科医院 web分院

こばやし歯科医院 web分院

東京中野の駅前にあるこばやし歯科医院のBLOGです。
歯医者に関すること、庭で咲いた花のこと、鬘の話etc.etc.
役に立たない話が多いですが、気楽にお読みくださいm(_ _)m。

私の家は父の代から、歯医者を営んでいます。
父が歯医者、兄が歯医者、叔母が技工士、従妹が衛生士で、甥が歯科大学に通っています。
零細企業は、親族で固めるのが原則ですね(^o^)。

別に歯医者だから、とんでもなく見えるかもしれませんが、親族で同じ仕事についているなんていうのは、当り前です。
父ちゃん社長、母ちゃん専務、俺平社員なんていう個人事業は、世の中一杯あります。

そんな次第で、父の代から歯医者をやっております。

しかし未だかって、『歯医者が怖くない』という患者さんに会ったことがありません。
父からも、兄からも、そんな人に会ったという話は聞いたことがありません。
大学の恩師、先輩、同期、後輩、果ては同業者にも聞きましたが、答は同じです。

……不思議ですね(^o^)。

一度でいいですから『歯医者は大好きです(^o^)。昨日は楽しみでよく眠れませんでした。今日はどの歯を削るんですか?』なんていう患者さんにお会いしたいものです。

……無理でしょうけど(^^;。

では、何故怖いかというというより、イメージとして怖いという印象しかもっていらっしゃらないのが、世間の常識というものです。

この背景には、歯科の治療そのものに原因があります。

基本的に、歯科の治療は歯を削るのですが、歯は硬いといえ身体の一部です。
削られれば、痛いに決まっています。
ところが、つい最近まで、歯科側がこの件に関して、あまり積極的に対応していませんでした。

何故かと言うと、そんな余裕がなかったからです(^^;。

戦後、食生活の変化などの様々な要因で、急速に虫歯が拡大しました。
しかも、歯を磨く習慣は、それほど普及して居ませんでした。
とどめに、全ての病状を悪化させる煙草が、今の何倍も飲まれていました。

今からみると信じられませんが、昭和30年代、40年代は、小学生に虫歯が十数本あるのが、ざらでした。
歯槽膿漏に関しては、もっと悲惨な状況でした。

これに対し、歯科医の数が非常に少なかったのです。
一つの診療所で一日あたり五十~六十人ぐらい診ているのが、普通でした。
ちなみに、今の小学生の平均虫歯経験数は一本以下です。
診療所の一日平均患者数が、二十人を切っています。

……偉い差です(^^;。

当時の虫歯の治療の基本が、大雑把に言うと、『削って詰める』です。
今の感覚から言うと信じがたいことに、詰めるものはアマルガムが主流でした。
アマルガムといっても判らないでしょうが、要は水銀です。

水銀は常温で液体の金属です。
他の金属片を混ぜると硬くなる性質があります。
虫歯を削って、水銀と銀などの金属片を混ぜ合わせたものを詰め、固まらせるという治療をしていました。

ちなみに余剰水銀は、嗽をして、そのまま下水に流してました。
東京の神田川沿いは、日本で一番歯科大学が集まっています。
このため、当時の神田川の水銀汚染は、他の川と比べても凄い数値だったいう話がまことしやかに伝わっております。

他にも歯周病の治療も、今と全然違っています。
当時は、歯周病は歯槽膿漏と言われていました。
歯槽膿漏は、今の定義からいうと、歯周病の末期段階に相当すると思ってください。

歯槽というのは、古い言葉で歯が埋まっている骨のことを意味します。
膿漏というのは、腫れていて膿が漏れている状態を意味します。
つまり、歯茎が腫れて歯がぐらぐらになっていて、膿がでている状態です。

歯槽膿漏は、歯があるからグラグラして腫れている。
だったら、歯を抜いてしまえば、歯槽膿漏は無くなる。
そういう次第で、歯槽膿漏になったら、ドンドン歯を抜いて総入歯にするというのが、原則でした。

そりゃ、歯が無くなれば、グラグラするわけがありません(^^;。

戸を突き破って入ってくるから押し込み強盗なのであって、戸を全部外してしまえば、押し込み強盗は設立しなくて只の窃盗犯であるという、落語みたいな理屈です(^^;。

結果、ある一定以上の人達は、総入歯が当り前という状況でした。

ともあれ、当時の治療は、一日に何十人も歯を削っては詰める、歯をドンドン抜くという処置を繰り返したのです。
さながら野戦病院もかくやという修羅場です。
当然、患者の痛みは二の次です(^^;。

子供が来て泣き喚いたら、無理やり抑えて削るなんてことが、頻繁にありました。
私が子供の頃、父の診療所は自宅と一緒でしたので、その頃の喧騒を覚えています。
あの頃の感覚からすると、歯医者が怖いと世間の人が思うのは、当然でしょう。

そして、一度ついた評判を変えるのは、中々難しいです。
ですが、今は状況が激変しました。

歯磨きの習慣は定着し、虫歯の本数は激減しました。
ヘビースモーカーは、世間から重犯罪人の如き扱いを受けています。
歯周病に関する知識も普及してます。

今では、虫歯を削るには、麻酔を打つ事が基本になっています。
歯を削るにしても、様々な技術が開発されています。
歯周病の治療は進化し、今では如何に歯を残すかが、歯医者の腕の見せ所になっています。

何より、歯医者の数は増え、コンビニエンスストアよりも多いというのが、現状です。
その意味では、30年前の歯医者と今の歯医者は別物と言っていいほど、状況が変化しています。

でも、歯医者のイメージは変わりません(^^;。
世間一般では、怖いというイメージのままです。
患者さんに歯の状態を説明すると、こんな返事が返ってきます。


「この虫歯は、大きいですね。今のうちに治さないと痛みがでますよ」

「抜くんですか?」

「抜きません(ToT)

「だって、虫歯だから抜くのが当り前だとおもっていました」

何時の時代の治療ですか(ToT)



それはそれは、いい年をした患者さんが、泣きそう形相で迎しゃるんです。



私は虫歯を説明しただけです。
癌の告知をした訳では、ありません(ToT)。
そんなに、おびえないでください(ToT)。



今は、なるべく歯を削らない、歯を抜かないが、治療のトレンドです。
その上、私のところは、ある特殊技能の開発に成功して、歯を削る本数がドンドン減ってるくらいです。



確か、とある小説家の文章で、こういうのがありました。
時代は超未来で、人類は銀河系全体に進出しています。
それなのに、主人公はこう言うんです。



英雄は、飲み屋には大勢居るが、歯医者の診療台には、ほとんどどいない』って。



……名誉毀損で訴えてもいいと思います。



そんな訳で、私は歯医者のイメージを向上させるべく、患者さんにこう言っています。


「うちは、父の代から歯医者をやっています。

 でも、『歯医者に来るのに楽しいです』と迎しゃる患者さんにお会いしたことがありません。

 皆さん、無理やり怖いのを我慢してくるんです。

 大丈夫。

 うちで怖いのは、私の顔だけです(^o^)」



……歯医者のイメージが向上しないのは、私の顔が怖いからでしょうか(^^;。




写真は、新井天神北野神社の梅です。
天神様ですから、境内に梅が一杯咲いています。

それにしても、今日が天皇誕生日と言われても、どうもしっくりしません。
私の中では、天皇誕生日は、未だ4/29なんですよね。
まぁ、昭和生まれの戯言です。聞き流してくださいm(_ _)m。

■■□―――――――――――――――――――□■■

こばやし歯科医院

【住所】
 〒164-0001
 東京都中野区中野5-66-3 木村ビル3F

【電話番号】
 03-3388-7887

【URL】
 http://www.kobayashi-shika.com

【診療時間】
 月火水金 10:00 - 13:00 15:00 - 20:00
 土    10:00 - 13:00 14:30 - 17:00

【定休日】
 木,日,祝

■■□―――――――――――――――――――□■■