ランチの王様「ソルジャーの森」 | kobacabana 3.0

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音楽、食、酒、街、男と女・・・・
日々に感じる雑感を
懸命にまとめています。

タベルナなんとか、

や、

クッチーナなんとか、

も、

いいけれど、

この赤暖簾が一番眩しいし、

胃袋が唸るくらい、

魅力的だと、思う。

この店は家族経営である。

三人兄弟で、

おっかっぁんも加わる、

強力な布陣である。





この手の店には必ず、

カレーライスやカツ丼など、

ご飯ものがラインナップに加わる。

チキンライスを置く店もあるし、

天津丼でドロドロな官能美も見せる。今朝は、その「官能」について、少し触れたい。





園児の頃から早くも、

近所のよろず屋、大島屋の雑誌コーナーに日参しては、

ヌード雑誌を立ち読みしたものだった。

はたきを持った店員から、

「こんな幼い子が、何見てんのよ!」

と、蠅の扱いで追い出された。

が、

僕は諦めなかった。

「そこにヌードがあるから」

と抵抗したかどうかわからないが、

いつしか張り紙がされたらしい。

母の弁である。

「園児含ム未成年ノ立チ読ミヲ禁ズ」



卵とじが、はみ出している。男ははみ出しに、滅法弱い。最初から丸出しよりも、淫靡なはみ出しに、食指を伸ばす。






小学生に上がると、

活動範囲が広がった。

誰が攻めてくるわけでもないのに、

「基地を作ろう」

と誰が言い出し、

段ポールや枝を集めて建築。

家から持ち出したプロ野球スナックなどを備蓄、

迫る大戦に備えた。

誰かが基地の外で叫んだ。

「女の裸の本、見つけたよ!」

皆で食い入るように眺めた。

誰かが自宅で読めないこの手の本を、

雑木林でこそこそと、

木々が風できしむように、しこしこと、

読み耽っていたのだろう。



湯気が漏れる。ちらりと中を覗いてみる。男は、漏れるのと、ちらり、に滅法弱い。舌なめずりして、妄想で舌先が痙攣しだす。

森の中で、

大戦前夜の少年たちは、

輪になって、ヌード雑誌を食い入るように、見る。

誰かが、次へと焦ってページをめくると、モメる。

「ちょっと待てよ。もうちょっと見させてよ。ここ、ここ、霧吹き?」

「バカ、汗だよ。スポーツした後の撮影じゃないか。よし、次、次に行こう」

おおおおおっ、と皆で唸る。森に木霊する。

「この女のひと、苦しそうじゃないか?

うちのママみたいに、眉間に深い皺が」

「痛いのかな?」

「かゆいんじゃ?」

「どっちにしろ、いつもと違う感覚で、苦しそうなんだな」

森の色に、

夕暮れを知らせるオレンジ色の光が横から差し込んでくる。

僕らは、それも気づかずに、

夢中になって、一ページ、一ページ、

ヌードを眺めた。


「ね、暗くなってきたから、帰ろうよ。」

「ちょっと、待てって。いいところだから」

「でも、母さんに怒られるから」

「後、じゃ、二ページ。明日、また、ここで残りの半分を、

皆で見ないか」


大戦前夜のソルジャーたちは、

統制が取られており、皆で、うん、うん、そうしよう、

と合点した。


基地にヌード雑誌を格納し、

翌日の放課後に、また、迫る大戦の準備のため、

基地に集合することに、した。





ででん。全てを剥ぎ取ると、こんもりと隆起豊かな肢体が横たわり、風呂上りのように、
湯気でこちらを誘惑する。もう、我慢、限界。理性は捨て、飛びつく。地位も名誉も要らない。



翌朝基地を作った木の下に行くと、

友達らが、オイオイ、としゃがんで泣いている。

基地が何者かによって破壊されたのだ。

僕ら6人は、輪になってしゃがみ、泣いた。



誰かが、思い出したように、叫んだ。



「あ、あの、裸のおねえさんの雑誌、あの雑誌が、

ない!



統制が図られていた。

僕らは広大な森の中を均等に散らばって、

ヌード雑誌を捜索することにした。


会計士の息子の刈谷は、

まだ小学二年生なのに、

おとなのような冷静さを持ち合わせていた。



「意外に、広い森だ。何かあっても不味い。

敵がスキをついてくるともわからない。


kovaクン、きみは、ここで陣地を守っていてくれないか」


「ラジャー」

刈谷は皆に向かって、こう指示した。

彼は司令官だった。


「みんなは、150を数えて、そして、ここに一旦戻ってきてくれ」

「なんで?」と、畳屋の大沢が聞く。

「はぐれても不味いから、この決まりを守ってほしい。」


ラジャー!と皆が叫んで、森の中に消えた。

遠くで、21、22、と数字を口ずさむ声も聞こえる。



静かになった破壊された基地の前でひとりたたずむ自分。

心の中で数字を数えてみるが、

200を超えても、誰も基地に戻ってこない。

400を数えたが、まだ、だ。

だんだん、心配になってくる。

結局、時間にして、

5分は待ったと思う。

三々五々、仲間たちが戻ってきた。

僕は、怒った。


「決まりを守らなければ、軍隊の統制は図れないぞ」

刈谷が申し訳なさそうに、紙を手に、言った。

「ごめん、バラバラになったこの、ヌード雑誌の一ページが、草むらに落ちてて。」

「落ちてて?」

「しばらく、見入っていた。」

僕は、バカッ!と刈谷を怒った。

しかし、他の兵隊たちも、手に数ページの紙切れを持っている。

ポケットに隠していたやつまでいた。

僕は、落胆した。

「皆、もしかして、僕がここで陣地を守っていた間に、

それぞれ、切り捨てられていたヌード雑誌を、見入っていたのか??」


皆、一斉に、

「そのとおりです。」

と頭を垂れた。



これが、僕が生まれて初めて体験した、





同時多発エロ




の全容である。







バダイの中華T。ずば抜けて美味しいわけでもないが、存在は大きい。