男にしかわからないバラード学⑤One In A Million You/Larry Graham | kobacabana 3.0

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懸命にまとめています。

<オリジナル:2004-10-17 21:58>
<39歳、秋の夜。あなたはその時何を?>



砂漠の中をひとりきりで彷徨っているとする。
誰も自分の存在を認めず、喉を潤すオアシスもない。
ここで死に絶えても、きっと誰も悲しまず、
世の中は何も変わらず進化していくであろう。
恋をしていない、ということは、それだけ寂しく空しいものである。

カリスマ・ベーシストであるLarry Grahamは、その独特のディープな声で、
とうとうと語るように、この楽曲を歌い上げた。
Barry Whiteの低音ボイスが子宮の奥を突くようなセクシャリティーと
インパクトがあるとするなら、
このGrahamのそれは、より誠実で清廉さを持ち合わせ、
胸を突くような感動を与えてくれる。
この曲は、誰にも愛されていない極めて寂しい状態の時に、
人は往々にして被害妄想に陥り易い、ということを示唆してくれている。
「どうせ、おまえなんか誰も見つけることなんかできやしないよ」と
友人みんながそう思っているのではないか?と悲観的に考え、
どんどん悪循環となっていき、結果誰かが微笑んだだけで、
愚かな自分を見て笑い者にしているのでは?と思うようになっていく。
そして最悪なのは「もう恋なんて面倒くさい」と言い訳をし出したら、致命的だ。

人生において、原子力とカネに匹敵するパワーは恋だ、と思い込みさえすれば、
少しは幸せな気分を味わえるのに、そういう幻想に目を背けてしまうと、
この唄の主人公の過去のように、ただ寂しいだけだ。
大砂漠にひっそり立つ看板のようなもので、誰も気がついてなんかくれないし、
やがて風化し朽ちるのみ、である。
LARRY GRAHAM
千載一遇のチャンスとばかりに、その女との出会いを喜ぶ男。
その喜びようは、なんとも寂しさが拭えないが、
孤独という名の長いトンネルを抜け出した時に眼に入る光は、確かに眩い。
Grahamは,4分10秒をかけて、我々ソウル・ファンに、
ただそのことだけを伝えたかったんだと、そう思う。