まだ、バイクって言い方は定着してなかった

16の時に親父がオートバイを好きならと

部下を紹介してくれた。

北海道から就職で千葉に来てる人懐っこい人で

僕には650に乗る兄貴が出来た様な

気がしていた。


その兄貴分は間もなく事故で入院してしまった。

これは見舞いに行かねばならない。

どうせ、行くならバイクでと思った。

幸いバイクは親父が同僚から借りてくれた

ヤマハボビーが取り敢えずある。



          (愛称とは単なる偶然)

入院先は家から30㎞程の木更津市だった。

今でこそ大したことのない距離なんだが、

しかしそれは僕にとってバイクを使った

初めての遠出で、走って帰ってくるのは

大冒険だったんだ。


たよりになるのはボビーだけ

途中、道はわかるんだろうか?

転んで怪我するんじゃないだろうか?

バイクが動かなくなったらどうしよう。


おっかな、ビックリ、

途中、気持ちが折れそうになって

何度かバイクを止めた。

真っ直ぐ走るだけなのに…。

何故、余計に不安になる

夕方近くに出発したんだろう?

普通に走って到着する倍の時間までは

かからなかったが、なんとか病院には

たどり着いた。


病院で兄貴分を見舞って

帰りは少し自信がついたのか

止まることはなかったと思うが、

不安が、無くなった訳じゃなかった。


今となっては少年の頃の思い出だが、

旅の前に多少の違いこそあれ不安があるのは

今でもあの16の時と変わらない。