川がはんらんすると水田がため池となる。稲は数日間水没しても実りの秋を迎える。ところが、減反で水田は荒れ、貯水機能を失い、はんらんした川は一気に集落を襲いすべての家屋が浸水した。濁流は川沿いの商店街の店舗を流し、建物がかろうじて残っても中はがらんどう。立ち尽くす住民がいた。今年、鹿児島・川内川流域で起きた7月豪雨のつめ跡を視察し、現場にこそ政治への本当の痛みと課題と知恵があると改めて痛感した。
 9月下旬、自民党も民主党も私たち公明党も新しいスタートを切った。5年半続いた小泉政権から安倍政権へ、連立も新たな幕開けである。
 自民党は安倍新総裁が「美しい国」を掲げ、活力とチャンスと優しさに満ちあふれた国へしていくという。民主党は「政権交代」を唯一のテーマに、来年の参院選挙がその最大のチャンスと位置付け戦うという。政治家や党が国民へ一方通行のメッセージを送るだけでは物足りなさを感じるし、ましてや権力闘争のためだけが政党の目標というのではあまりに国民に迷惑な話だ。
 公明党は新しい出発となる党大会の運動方針で「民衆のために働き、奉仕する政治家」「闘う人間主義、現場第一主義に徹する」と叫んだ。権力の魔性の中でいつの間にか泥まみれになる政治屋たち。私たちは現場でこそ、住民のためにこそ大地をはいずり、泥まみれになり同苦し格闘する。「大衆とともに」の創立の心を自分の心としての新たな出発である。
  (2006.10.4 公明新聞より転載)