文字/段落スタイルのまとめ(Illustrator編) | 3倍早くなるためのDTP講座

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Illustratorでは文字/段落スタイルを使っていない方も多いことでしょう。かつてのデファクトスタンダードだったver.5や8にはなかったですもんね。使わなくても仕事できるし。私、別にスタイルの普及活動をしているわけでもないのですが、便利な機能があるのなら使った方がいいと思ってご紹介しております。

ただ、文字/段落スタイルはとっつきにくいのは認めます。前回のバグもそうですが、いろいろなルールがあり、覚えるのも面倒。よくわかります。

以前にもスタイルに関して記事を書いていますが、InDesignとの比較として紹介していたためIllustratorのスタイルとしては分かりにくく、内容も不十分なところがいくつかございましたので、今一度まとめてみました。


●InDesignとIllustratorは違うもの



私の文字系スタイル遍歴はQX3→QX4→ID→Aiときています。文字系スタイルはQXとIDでは細部の違いはあれど概念はほぼ同様です。しかし、Illustratorは根本的に違う完全なオレ仕様。なまじUIが似ていて同じメーカーだったのが災いの元で、同じように考えてしまったおかげでドツボにはまりました。

IllustratorのスタイルはInDesignのスタイルと共通点よりも相違点が多く、レイヤーやカラーのように同名の似た機能と違い、いわば別物です。Illustratorでスタイルの概念を理解したからといってInDesignで使えるというわけにはいきません(逆もあり)。この記事は絶対、絶対にInDesignの文字/段落スタイルの参考にしないでください。いいか、絶対だぞ(フリではない^^)。


●スタイルのメリット
スタイルは、
1. 適用するだけで設定した属性を一瞬で変えられる、
2. 適用後は設定を変更するだけで一括して変更できる、
という2つのメリットがあります。

スタイル搭載以前は、設定済みのダミーをにテキストを流し込んだり、スポイトで設定をコピーしたりしていました。入り組んだものはダミーをコピーしてから手で打ち替えたりした記憶もあります。

スタイルを使えば属性を素早く変更できるので、コピペや打ち間違いなどのオペレーションミスもなくなります。

ランクの設定をスタイルで管理しておくと、見出しやキャプションの変更のようなデザイン変更時に設定を変更するだけで全て変更されるので、とても助かります。

書式のスタイル管理は、新規プロファイルにスタイルを仕込んでおけば、同一書籍の指定書式を逐一属性を変更する手間が省けます。定期物などには最適です。


●スタイルの概念
スタイルには文字スタイルと段落スタイルがあって、段落スタイルにも文字スタイルと同じ項目があります。フォントとサイズだけ設定したい場合など、どう使えばいいかよくわかりませんよね。

一般的には見出し、本文、キャプションなどテキストのランクを段落スタイルに、太字やイタリックなど部分的な変更を文字スタイルにします。

基本はコレに準じた使い方が望ましいですが、後述のとおりIllustratorではこの限りではなく、ケースバイケースでの対応もありかと思います。これがまた混乱の元になっているわけですが…。

スタイルのルールとしては、段落スタイルは段落内全ての文字(先頭から改行まで)、文字スタイルは文字ごとの適用になります。また属性がバッティングした場合は優先順位が決められています。

以前Twitterで、段落スタイル:総入れ歯、文字スタイル:被せる銀歯、属性変更:マジックで書くと例えました(今回の図では色だけでなく形状もということでねんどにしました)。


↑スタイルと属性変更を入れ歯に例えた概念図。全部装着すると…



↑こう見えるわけです



↑ねんどは水溶性のヤツってことで。あぶらねんどは水かけるとべちゃべちゃになるよね

わかるようで分からない? これはおおまかな概念ですが、厳密に言うと標準文字スタイルと標準段落スタイルがあるので、実際はもっと種類が増えてしまいます。



●Illustratorの特殊な事情
IllustratorはInDesignとはちょっと事情が違います。

まず、ショートカットなし、子、孫スタイルなし、(標準で)検索置換から適用できないなど、InDesignにはある便利な機能がことごとく欠如しています。

Illustratorの基本は1パーツ、1見開き、1ページで1ファイル単位なので、例えばスタイルを使ったキャプションに変更があった場合、複数ファイルで整合性を取るのは大変です。スタイルを使うよりもその場その場で対処した方が手っ取り早いかもしれません。

Illustratorでは圧倒的に多い「ポイントテキスト」の場合、折り返しは任意改行なので、段落スタイルが別々に適用された状態になり、扱いづらくなります。

カーソルを入れて反転選択よりも、選択ツールでオブジェクトとして選択するケースも多いので、段落設定を重視しない場合、段落スタイルでも文字スタイルでもほとんど変わりません。

ポイントテキストでの引き出しキャプションのような場合、段落スタイルで揃えを固定してしまうよりも、文字スタイルとして文字関係のみ設定する方が良い場合さえあります。


↑キャプションだけど、段落スタイルだと3つ作らなければならない


また、スタイルを使わない方には理解できない「スタイルの統合」や「初期設定が原因のバグ」(前回記事参照)が起こります。

これらにプラスして、Illustrator独自の文字構造やアピアランスなどが、スタイルを使いづらくする原因になっています。

こう羅列すると、Illustratorでスタイルを使うメリットが無いように思えます。でも、スタイルを理解し使い方を間違えなければ便利な機能なのは間違いありません。たとえInDesignの半分以下の機能しか無くてもです。後述の「便利な使い方」を一度知ってしまったら…。



●スタイルを含む文字構造のルール
さて、ここが本題。

全ての文字は標準文字スタイル、標準段落スタイルが適用されています。というか、書類内の文字の初期設定を司っています。新規書類に文字を打つと、標準文字スタイルに設定された文字属性、標準段落スタイルに設定された段落属性が適用されます。

ただし、この2つのスタイルは内容の変更はできますが、解除や削除することは出来ません。特権階級、魔法の効かないラスボスクラスだと思ってください。

次に複数の段落スタイルと文字スタイルを追加で作成できます。これらを適用すると属性を設定した部分は、標準スタイルを覆い隠す形で見た目が変更されます。項目の空白部分は下位のスタイルで設定されている部分が表示されます。

Illustratorでは手動で属性を変更したものを「属性変更」といい、スタイル名に「+」マークが付きます。これは選択中の文字属性が、適用されているスタイルと相違があることを示します。

属性変更は必ずスタイルの上位に現れます。これらはレイヤー構造になっていると考えるとわかりやすいです。


↑文字構造の概念図(達磨落としバージョン)



属性変更はスタイルよりも優先度が高いので、属性変更している文字と属性がバッティングしたスタイルをあてても見た目がかわりません。その場合、属性を削除すれば下にいるスタイルが現れるわけですが、削除する際は全ての属性を削除します

そう、全ての属性変更を削除するのです。大事なので2度いいましたよ。これにより意図しない下のスタイルが現れ、フォントやサイズなどが化けることがあります。ここがIllustratorのスタイルで一番の注意点です。


↑手動で色とフォントを変更したものに段落スタイル「リュウミンR」を適用。む、フォントが変わらん



↑スタイルを当てたイメージ図。ここから属性を削除します



↑属性削除でフォントが変わるが色も変わる



↑属性削除したイメージ図


そして、Illustrator独自の「アピアランス」という塗りやサイズに影響する特別ルールがありますが、これは文字構造の外側、別の世界のお話です。例えば塗りを追加して色が変わっていても、スタイルに「+」は付きません。もうここでは説明しきれませんので、そういうものだと理解してください。


●スタイルの便利な使い方
RegXAiRegStyleai_TextRangeRegexGUI_3.0など、指定の文字列やパターンをスタイルに変換できるソフト使うとスタイルの恩恵が倍増します。たとえば、中黒で始まるテキストに段落スタイル:キャプションとか、ハイフンに文字スタイル:等幅半角をあてるとかが簡単にできてしまいます。

特に、段落スタイルは一文字でもマッチすれば段落全てに適用されるので、戦艦並みの破壊力と言われるのも頷けますね。まじ、すごいっす。


↑これがあるじゃろ



↑こうして



↑こうじゃ。余計な文字を削除しつつ段落スタイル適用!

ここで気をつけたいのが、属性変更を削除するかどうかです。RegXとAiRegStyleには選択式、ai_TextRangeRegexGUI_3.0は属性削除して実行します。

属性変更を削除しなければ、属性変更のある部分はスタイルが隠れてしまいます。意図した結果になるよう、前項の構造をよく理解して使いましょう。トラブルの回避にもなります。


●ここまでを理解したら
以上のことからスタイルを適用する文字は、できるだけ属性変更をしないほうがよいのはおわかりでしょう。属性変更はバッティングするスタイルを覆い隠してしまいます。属性変更削除時に余計なトラブルを起こさないよう、「+」のないプレーン状態で適用するようにしましょう。

プレーン状態であれば、設定通りの属性になりますし、スタイルの設定変更で連動します(アピアランス適用時除く)。

また、一部属性変更のみに文字スタイルだけを使わないようにしましょう。InDesignでは当たり前ですが、フォントとサイズを手動で変更し文字スタイルで色を変えるというのはIllustratorでは危険な行為です。

スタイルは属性変更削除時にストッパーになります。文字スタイルで一部の属性のみ変える場合は、他の変更は手動でなく段落スタイルで設定しましょう。


↑文字スタイルで赤文字だけ適用。InDesignではよくやる



↑しかーし、属性変更削除したら文字が化けた!



↑段落スタイル併用ですっきりプレーン状態


ただし、Illustratorのスタイル使用は、内容によって向き不向きがあります。私はスタイルを使えば絶対に効率化できるとは思っていません。

ここまでを理解できればどの場面で使えば効率が良いのか、危険なのかは判断できると思います。知らずに使うor使わないのと、知った上で使うor使わないは全く違います。


●おまけ
さらっと流しましたが、「大元が標準文字スタイル」というのはInDesignから来た者にとって大どんでん返しでした(私だけかもしれませんが)。InDesignの文字スタイルは最後にちょこっと乗っけるデコレーションケーキのイチゴ的役割なので、まさか黒幕が文字スタイルだったとは…。火サスばりに楽しめましたよ。


↑これくらい驚愕。バラデュークとかメトロイドのノリで^^

でも、よくよく考えると、InDesignを使わない人はこのルール、わかってしまえばそれほど難しいことではないかもしれませんね。

さあ、よいスタイルライフを!

InDesign編は…、だれか-。