10年くらい前から注目していたピアニストの五十嵐薫子さん。ソロだけでなくアンサンブルでも経験を重ね、前回のショパン国際ピアノコンクール出場後はジュネーヴ国際で見事3位入賞を成し遂げました。コンクール視聴をしていて選曲がとても良いなぁと感心し、演奏も立派だったので本選に進んだ時はとても嬉しかったのを覚えています。コンクールで「ハンマークラヴィーア」ソナタを選ぶタフさ&スケールの大きさと、シューベルト=リストの歌曲集で別の魅力も表現していた薫子さんが印象に残っていました。
なかなか生で聴く機会に恵まれず、今回初めてリサイタルを聴かせてていただきました(名古屋でのデビューリサイタルだそう)
電気文化会館に行くのは何年ぶりだろう...最近しらかわホールや芸文で聴くことが多かった。なんだか懐かしさを覚えました。
早めに着いてからホールそばのカフェで時間調整。コンサートを聴きに行く時バタバタ滑り込むのは苦手です
アールグレイとレーズンサンドを
2024.1.13 14時開演
五十嵐薫子ピアノ・リサイタル@電気文化会館 ザ・コンサートホール
【Program】
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」ハ長調 Op.53
ラヴェル:「鏡」より第2曲"悲しき鳥たち“
〃 「夜のガスパール」より"スカルボ”
〜 休憩 〜
ショパン:ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 Op.58
♪アンコール
ショパン:練習曲Op.25No.1「エオリアンハープ」
〃 ワルツOp.64No.1「小犬」
〃 ポロネーズOp.53「英雄」
このプログラムの前半、なぜラヴェルの夜のガスパールの全曲じゃないんだろう....なぜ鏡の抜粋とスカルボの組み合わせたんだろうと疑問に思っていました。
紺色に近いブルーのドレスで登場した薫子さんは、いきなりマイクを持ち話し始めます。
前半は同音の連打が入っている曲を関係づけて選曲したそう。
なるほど!言われてみれば確かにそうですね。こういう組み方もあるのかと驚きました。
丁寧に解説を入れる薫子さんのお人柄が、演奏前から伝わってきました。
プログラムの全曲通してテンポ設定は速め、でも技術的には安定していて不安要素は何も感じません。さすが実力派ピアニストの風格です。
1曲目のワルトシュタインは弾き慣れた感じでしたが「小学生の時から弾いてました」と やはり世に出るピアニストさんは小学生で大曲を弾きこなすのですね。
私の中のイメージは女性でありながらスケール大きく強いタッチ、確かなテクニックをお持ちであることでした。それは期待を裏切らなかったのですが、何だろう.... ピアノも充分鳴っているのに心を揺さぶる何かが....。弱音も美しいし、クライマックスにくると彼女の熱いものが溢れ出し、左足をバタンバタン鳴らしながら全力投球の演奏をしているのだが...。
歌い方なのかな... 音の奥行や広がり方なのかな...。あっさり弾く割にはフレーズの頭がいつも長めだったり溜めもあって、薫子さん節が現れる。
思えば女性ピアニストを聴くのは小林愛実さん以来で、意図したわけではないけれど男性ピアニストが多かったからか、頑張らなくても骨太な音質、重厚な音質を奏でられる面での違いに少し物足りなさを感じたのかもしれません。電気文化会館の残響はラヴェルなどには良いけれど、ベートーヴェンは濁りも気になったりペダルの使い方も難しいホールだなぁとつくづく思いました。
プログラムの曲数(量)は少な目でしたが、アンコールは3曲弾いて下さいました。
ソナタ3番の4楽章は鮮やかだったし、情熱的でパッションもあって聴きごたえあり、かなり消耗した様子でしたが、にこやかにアンコールに沢山こたえてくれたのはプロ意識の高さを感じました。
2曲目に入るとき「もう1曲よろしいでしょうか」と薫子さんが問いかけると「難曲でもいいよ~!」と会場から
時代の流れでしょうか、小犬のワルツの時は撮影OKでした。
薫子さん曰く、撮影してSNSにあげてもらうと色々気付くこともあるそうで良いことも多いのだそう。
後半は真紅のドレスに衣装替えしていました。女性ピアニストならではですね☺️
弾き姿も姿勢も美しく、可憐な雰囲気なので見渡すと会場は男性のお客様が多かったです(笑)これが人気男性ピアニストだと逆ですものね。
ただ、会場の入りは半分満たないくらい...。著名国際コンクール入賞者でも集客は厳しいのだという現実をみました。
まだまだこれからの人なので(現に本番の数は多く、引っ張りだこですよね)一歩一歩誠実な演奏を重ねて活躍していって欲しいです。
今度機会があるなら他のホールで聴きたいなぁ。やはり電気文化会館の残響は好みではないというのを再認識しました。しらかわホールも閉鎖になったら、どうしても電気文化会館の開催が増えるんでしょうけどね。
ランディたん、ありがとう!
おりこうさんでした