その3

原発事故 避難計画の問題点

PAZ(5㎞)とUpz(30㎞)の時間差避難

避難計画では 5㎞圏(PAZ)と 30㎞圏(UPZ)で避難の内容が分けられています。

5㎞圏(PAZ)は刈羽村の大部分と柏崎市の一部が含まれ、住民は2万人です。

30km圏(UPZ)には柏崎市6.5万を含め、40万人の住民が生活しています。

 

 

PAZ (5km圏)は事故発生で避難

5㎞圏はEAL3という状況で避難します。

EAL3 というのは 「住民に放射線の影響をもたらす可能性が高い異常事象が起きた時」 

とされ、全ての交流電源を喪失した状態が30分以上継続した場合などということです。

福島事故でいうと、津波で全電源が喪失して30分後には避難開始という事です。

 

 

PAZの住民は事故発生後指示を待って、すばやく避難することになっていますが、

この範囲には合計2万人が住んでいます。

基本的にはマイカーで、あとはバス、船、ヘリでの避難が考えられていますが、

ほぼマイカーが基本となるでしょう。

車のない人には、バスで輸送することになっていますが、バスや運転手が集まるのかなど疑問は多く、機能するか疑問が多い部分です。これは別項で検討します。

原発の北側から、原発の南に、原発の横を通って、職場や学校に通っている人もいます。子どもなど、家族離れた場合どうするのかという事も心配ですが、これも後で別項で見ます。

さて、2万人が一斉に動いたときどうなるのでしょうか?

道路網が大渋滞することは明らかです。

 

事故後の渋滞は避けられない

柏崎では2007年の中越沖地震でこれに近い状況を経験しました。

市内から市内への移動が主でしたが、町中どこに行っても大渋滞、一部通行不能で絶望的な渋滞となりました。

<市民ネット通信5号>

 

福島第一原発の事故の時には、ずっと人口密度の少ない福島原発周囲でも、避難する車で大渋滞したことは忘れてはなりません。

そして、今年のような大雪での通行止め、移動自体が不可能となる。

地震による道路の断絶。  

すべて私たちは経験している事ですが、国や市の説明に避難可能な方法は示されていません。

UPZ(30km圏)住民は、屋内退避が義務

 

さて、うまくPAZ2万人が避難を始めたとします。その時、UPZ 6万人も一緒に避難することは許されません。

家の前をPAZ住民が避難するのを横目に見ながら、UPZ住民は屋内で退避することを

求められています。

6万人が家の中でじっとしていることが可能なのでしょうか?

更に、UPZの対象人口は周辺市町村のかなりが含まれますので、柏崎市以外でも、

合計で35万人が避難することにもなります。

 

昔の机上の計画ならそれでよかったでしょう。

しかし、福島事故を経験して、まもなく原発が爆発するかもしれませんというときに、

誰もが避難を急ぐことは目に見えています。

 

UPZ住民の避難は放射が漏れてからです

 

方針通り、待機を続けたUPZ住民40万人余りは、(柏崎市のパンフレットに従えば)全面緊急事態【EAL3+OIL】という状態となって初めて避難が許されます。

具体的には20μシーベルト/hが測定されてからです。 

これは、2日間で1mシーベルトの線量になり、一般人の一年間の被ばく許容量を二日間で浴びる線量です。

実はこの時は正しくは「避難」とはいわず「一時移転」といいます。

一時転移とは1週間程度で戻ってくるという説明です。

あのチェルノブイリで、3日間の避難だと言われて避難した住民が、二度と故郷に戻れなかった事を思い出します。

ではUPZ住民が「避難」するのはいつでしょうか。 

それは500μシーベルト/hを越えた頃です。

福島での年間被曝基準を20mSvに引き上げ、あまりに非人道的だと国際的批判を受けていますが、500μシーベルト/hは2日でこの基準を超える線量です。

ここでUPZ住民は「避難」を許されます。

 

UPZ住民は、被曝なしで避難できず、

勝手に避難することはできません

UPZ住民は、被曝なしで避難することは、できないという前提となっているのです。

もっと基本的なことですが、緊急時、国が線量を測定して、避難を決めるというプランですが、福島事故を見ていると、国の測定が正しく行われるのか、それが正しく発表さえるのかも大きな疑問です。

柏崎市避難計画から

 

柏崎市の避難計画では、「指示があるまで外出しない」とか「勝手に避難を始めない」などと決められています。

一刻も早く逃げようとする事は禁じられているのです。

避難しようとすると、そのうち罰金刑とか、懲役刑とかいう話になるかもしれません。

実際には、自宅待機の間にヨウ素剤の配布を受ける(取りに行く)必要があります。

自宅待機とヨウ素剤を受け取りに行くことを両方求めている。

ちょっとイメージできない避難計画です。ヨウ素剤については次回検討します。

ようやく避難した後に控えているのは何か? 

これもまた大問題ですが、別項で検討します。

 

ま と め

 

■  PAZの即時避難。2万人避難で大渋滞が予想される 

■  車がない人にバスはあるのか?運転手は来てくれるのか?

■  大雪や地震いによる道路の閉鎖や断絶、通行困難は解決策なし

■  UPZで福島事故を知った住民に自宅待機を強いるのは不可能

■  急いで避難するのは禁じられている

■  被曝前提の避難計画であり、とても受け入れられない