■1994年を演じていた家族と社会に対するいとおしさのゆえに!´▽`)/ | 韓国・ソウルの中心で愛を叫ぶ!
新型コロナウイルスに関する情報について

韓国・ソウルの中心で愛を叫ぶ!

ポッドキャスト韓国語マガジン“サランヘヨ・ハングンマル”の編集長が、韓国と韓国文化の見つめ方を伝授します。

「1994年、最も普遍的なウニから」

 

 

●『82年生まれ、キム・ジヨン』を彷彿

 

コロナでたいへんな中ではあるでしょうが、どうやら映画館が始まっている日本で、今ちょうど上映中らしい、ということを知ってご紹介してみます。私も共にこの国で生きてきた1994年という時代を切り取って、とある少女の生活をとてもリアルに描いた映画『はちどり(벌새)』(キム・ボラ監督)です。(→日本のホームページ)ヾ(≧∇≦)〃♪

 

昨年の秋に観た映画で、まったく知らなかったのですが、公開前から世界中の映画祭で50冠以上の賞を受賞しているし、韓国の青龍映画賞でも『パラサイト』を押さえて最優秀脚本賞を受賞したということなんですね。それを知って何か不思議な感じがしてしまいました。私としては、共に生きた1994年の韓国の、見覚えがある日常を描いたシーンの数々と、記憶に生々しく残る聖水大橋崩壊という背景を組み合わせた、既視感のほうが大きかったからです。

 

ちょうど昨年公開のチョン・ユミさんとコン・ユさん主演の『82年生まれ、キム・ジヨン』(キム・ドヨン監督)と同じで、その当時の文化的常識や視点から見ると、当たり前の痛みや生きにくさとされていたものが、今の最新の機械で測定し直してみたら、そこには超音波のように聞こえない叫びがあったし、不可視光線のように目に見えない輝きがあった、ということだろうと思います。

 

主人公の少女ウニは、1994年に数えで14歳、1981年生まれであって、まさに「キム・ジヨン」と同じく、今よりはるかに家父長制的であったその時代に生きる女性であることの痛みを描いた映画です。途中、ウニの母親が外で魂が抜けたように虚空を見つめているところをウニが目撃して、大きな声で呼んでもまったく返事をしないというシーンがありましたが、まさに『82年生まれ、キム・ジヨン』を彷彿とさせました。

 

かつ、この映画では、そこに子供の立場で、当時のひどい過当学歴競争社会の様子が描写されます。中学校で先生が、生徒たちに、「カラオケの代わりにソウル大に行く!」と唱和させるシーンなども当時らしいです。ただ、現在、その過当競争が緩んでいる理由として、実際よい大学を出てもよい就職ができるとはかぎらない、という就職難があるとしたならば、単純に無邪気に「よい大学を出れば幸せを手にできる」という夢を追うことができた当時は、今より幸福であったのではないかとも感じます。

 

 

●作品意図とかなり逆の感想ですが

 

実際、当時、まさに私が韓国社会にいたく感動していた内容までが、どうやらこの映画ではよろしくない記憶、として描かれているようだという違和感がありました。まあ、これは実は『82年生まれ、キム・ジヨン』にも感じた感想なのですが、「それは必ずしも悪い側面ではなく、それどころか美風良俗といってもいい」という部分ですよね。

 

すなわち、男女とも子供は親に必ず敬語を使い、反抗心があってもはむかわず、怒られる時には正座し、罰を受ければ、いいといわれるまで玄関の外で両手を挙げて正座して座り、親が出勤する時には必ず玄関まで行って「行ってらっしゃいませ」ということなどですよね。その上で、たしかに父親は不器用で血の気が多く、怒鳴ることも、きつい言葉を使うこともあるけれど、しかし、娘が手術をしなければならなくなれば、オイオイ声をあげて泣くような情にあふれたお父さんであって、それらのすべてのことがなくなれば、韓国の文化にいったい何が残るのかという思いがしてしまいました。

 

そういうこととの対比として表現されているのが、ウニが漢文塾で出会った大学生の女の先生が、年配者で先生でありながら、自分のことを謙譲語で「チョ(わたくし)」といって子供相手に敬語を使いながら授業をするというシーンであり、ウニもその先生に強く惹かれて、誰にも関心を持ってもらえず、世界に裏切られ続けていたウニの心をただ一人開かせます。その先生がウニにいい聞かせる最も強い言葉が、受験勉強の鬱憤晴らしの暴力を兄から振るわれているというウニに、「暴力を受けたら絶対に黙っていてはいけない」という言葉でした。

 

その上で、現代的演出として、今ではふつうにあり得るだろうけれど当時なら破格である、ということを一種の主人公の逸脱行為としてさせたのが、中学生のウニが男友達とディープキスをしたり、自分を慕う後輩の女生徒にキスをしてあげたり、というシーンですよね。前述の倫理的厳格さと実にアンバランスな材料として、ウニの心の揺らぎをよく表現しているとも思いましたが、でもちょっと違和感も大きかったです。

 

ということで、そこまで多くの賞を世界で受けている理由は、おそらく韓国の男尊女卑的傾向が色濃かった時代の少女の悲痛を淡々と描いたことにあるとは思うのですが、私自身は監督の意図とは関係なく、その時代を生きた一人の少女と、その時代を文字通り演じていた、父であり、母であり、先生であり、大学生であり、医者だり、おじさんであり、おばさんである、その時代の人々に対するいとおしさに浸ってしまいました。

 

それを描き出す演出力が、とても卓越して美しいものであり、私もその時代がかぎりなくいとおしく、この言葉は作品意図と反対になるのでしょうが、私自身は「またそこに帰りたい」という思いのゆえに、とってもいい映画でした。そういう私の一つの思い出の時代を紹介する、という意味でオススメです!♪ヽ(´▽`)/

 

 

【あらすじ】 1994年、知り得ない巨大な世界と出会った14歳のウニのとても普遍的で最も輝かしい思い出の話。1994年のソウルに、家族と集合団地で暮らす14歳のウニは、学校に馴染めず、 別の学校に通う親友と遊びながら過ごしていた。 両親は小さな餅屋を切り盛りするのに必死で、子どもたちと向き合う余裕がない。無関心な大人に囲まれて孤独な思いを抱えていたウニは、初めて自分の人生を気にかけてくれる漢文塾の女性教師ヨンジに次第に心を開いていく。しかしある朝、いつも姉が乗るバスが橋を通過する時間帯に聖水大橋が崩落したという知らせが入る。そしてウニのもとにヨンジから一通の手紙と小包が届く…。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


映画『はちどり(벌새)』(キム・ボラ監督)予告編。

 

 

☆。.:*:・'☆'・:*:.。.:*:・'゜☆。.:*・'゜☆

韓国情報ランキングに、現在参加中です。
ブログランキング
↑上のバナーをクリックするだけで、一票が入ります!
更新を願って下さる方は、よろしくお願いいたします。