●両国の両文化のよさが輝く作品に
たしか先々月に観たのですが、日本の同名漫画が原作で、日本版映画も2014年と2015年に四部作で作られている同名作の韓国版リメイク『リトル・フォレスト(리틀 포레스트)』(イム・スルレ監督)です。『1987』でとてもよい演技を見せてくれていたキム・テリさんが主演で、魅力あふれる演技を披露してくれています。さらに男性主人公役はドラマ『応答せよ1988』のリュ・ジュニョル君で、お母さん役もこれまた魅力的女優のムン・ソリさんです。時が経つほどに思い出される、とっても心に残る感動作でした。ネタばれになる部分もあるかもしれませんが、日本版と韓国版の違いが面白いので、大方のストーリーと共にご紹介してみようと思います。ヾ(≧∇≦)〃♪
まず、全部は読んでいないのですが、美しいスケッチペン画のような原作漫画も、それを日本の美しい自然の風景に置き換えた日本版映画も、個人的にとても好きな作品でした。でも、私がこの韓国版リメイクを見てラストにほとんど号泣してしまったのは、その日本版でとても悲しかった内容を、再解釈で「喜び」に変えてくれたからであり、きわめて日本的な原作の美しい世界を背景にしながらも、そこに韓国の人情ドラマによる新しい輝きと希望を載せてくれたからです。本当に両国の文化のよさを共に輝かせることで相乗効果が生まれた、すばらしい結実であると嬉しくなってしまいました。♪ヽ(´▽`)/
原作は、東北の田舎「小森」の母子家庭で暮らしてきた主人公の「いち子」が、高校生の頃に母親が何もいわずに突然失踪してしまい、その後、一人でお金を稼いで生活しながら、やがて自力で都会の大学に合格して都会暮らしを始め、恋人と同棲生活もするけれど、つまずいてしまって、すべてを捨てて田舎に戻ってくる、というところから話が始まります。田舎で自給自足の農業生活に戻り、母親から教わった料理を次々に作りながら、ひたすら食べること=生きることに向き合い続ける様子が、あたかも料理もの、グルメもの、園芸もの映画のように続きますが、それはひたすら彼女が内面の声と向き合っているという、孤独な世界の心理表現でもあります。
生き物を育て、生き物を殺し、それを料理の形にするということがひたすら繰り返されながら四季を過ごしてみると、やがて失踪したお母さんから、送り主住所のない手紙が一通届くのですが、それを読んだ時に、初めてお母さんもまた今の「いち子」と同じように自分自身と向き合っていたのだということ、そして何かから逃げていた葛藤の期間が終わって、自分を探しに家を出て行ったのだ、ということを理解します。そうして、お母さんがお母さんの人生を生きていたように、「いち子」もまた同じ決心をもって自らの生き方を見出していくという話でした。
いっぽう、韓国版映画も、登場人物の構成や自然描写の美しさ、基本的な流れなどは皆一緒なのです。もちろん自然は韓国の自然であり、料理も基本的に韓国の料理です。だからこちらは韓国の料理もののようであり、韓国伝統グルメものとしてとても学べるものともなっています。エピソードもよく置き換えが利いていて、たとえば、日本版ではお母さんが家でウスターソースを作る人であり、「いち子」がやがてスーパーでウスターソースが売られているのを見た時に、「これはお母さんのもののはずなのに」と思って、「騙された(お母さんの発明じゃなかった)!」となるシーンがあります。韓国版ではお母さんが、かつお節を特製の「木」だといって、木を削ってふりかけると生きているように動き出して美味しくなるんだ、という話をするのですが、やがて主人公の「ヘウォン」が都会でお好み焼きを食べる人を見た時に、「あれ、これはお母さんの特製の木のはずなのに」と思って、「騙された!」となるというシーンがあります。
●母の愛と恋愛…韓国版の結論は「愛」
そういう一つひとつの材料は、日本も韓国も一緒なのですが、その上で、韓国版『リトル・フォレスト』の場合、主人公の「ヘウォン」は決して自己の内面世界に留まってはいません。たとえば、料理を作って食べることにしても、「ヘウォン」の場合は最初はひたすら飢えから逃れて食欲を満たすためであり、日本版のそれが、豊かな自然の産物と主人公の知識とセンスのゆえに「美味しそう」なのに対して、韓国版のそれは主人公の飢えている思いに共感する部分が、かなり本能的な「美味しそう」を演出しているわけです。
さらにその後も彼女は決して孤独にはなり得ないのですが、その理由は、ひたすらその家にお母さんの思い出が生きていて、常にお母さんが記憶の中で語りかけてきてしまうからなわけであり、韓国版のテーマは、孤独な「自分探し」というよりは、むしろ「母の愛の発見」の話となっています。日本版では「母」は自分の前を歩く影のような一人の女性なのですが、韓国版では「母」は「ヘウォン」を愛しているがゆえに、「ヘウォン」に答えを示すために家を出て行ったという、娘のほうを向いた、どこまでも母親であることが次第に明確になっていきます。つまり、母はあくまで親の愛を持って上から「ヘウォン」を愛していて、実は「ヘウォン」の人生を導く師匠であり、「天」のような存在なのだ、ということが分かるのです。
続いて、日本版にも韓国版にも、同じく地元の男友達と女友達が出てくるのですが、これがまた違います。日本版では、いわば彼らは単なる「村人たちの代表」であって、決して彼女の内面には入ってきません。もちろん、きっかけや刺激をくれる存在ではあるのですが、あくまでも日本版のほうの舞台は、「いち子」の内面と周囲の自然であって、彼らはその「周囲」の一員にように感じられます。だいたい、日本版のほうでは一番仲良しの女友達が「いち子」の前に現れるのは、4部作の2部以降だったと記憶していますが、韓国版は「ヘウォン」が家に戻るとすぐに訪ねてくるのが、女友達の「ウンスク」です。さらに「ウンスク」は、「ヘウォン」を愛する仲良しでありながら、村で自分が目をつけている男友達「ジェハ」を「奪ってはいけない」と「ヘウォン」に警告を与え、でも「ジェハ」は結局、「ヘウォン」を愛するようになって、3人が三角関係になってしまうけれど互いの友情は美しい、みたいな友情&恋愛ドラマになっています。
やっぱり複数の人間が出てきている以上、そういう人間同士の愛情ドラマになるしかないのが韓国文化であり、だいたいにおいて、彼らは入れ替わり立ち替わり、しつこく「ヘウォン」の家に飲みに来るし、食べに来るので、「ヘウォン」は一人の内面に浸る時間もありません。韓国人にとっては、近所に友達がいるのに一人飯や一人酒はできない文化だからですよね。韓国人も最近は、日本のドラマの『孤独のグルメ』や『ワカコ酒』を見ながら一人飯や一人酒に憧れているわけですが、同時にそれがうまく行くわけがないのが、やっぱり韓国なのでした。(^ヮ^;)
そうして日本版のほうでは、世間の「現実」の表現として、村の農家の助け合いや村の祭りへの参加ということが出てくるわけですが、韓国版のほうでは、その「現実」は親戚づきあいということになります。「ヘウォン」が田舎の家に戻ったことを知って、「コモ」(お父さんの姉妹)が訪ねてくるわけですが、すぐに「あなたの母親も変わり者だが、あなたも変わり者だ」と話す「コモ」の言葉に、「ヘウォン」は心の声で、「やっぱりコモはコモだ、イモではない」といいます。「イモ」というのは母親の姉妹であり、韓国では母親以上に無条件に甘い愛をくれる存在なのですが、「コモ」は父方の家門の立場で話す存在なので、その「情」+「しがらみ」の世界があるわけです。でもそうであっても、「コモ」も情の存在ですから、「ヘウォン」をすぐに無理やり自分の家に呼んで、食事を山のように食べさせては、「これも食べろ」、「あれも食べろ」とうるさくいいながら、帰りに食べ物を両手にいっぱい持たせてくれます。
●韓国版だけの感動のラストシーン
最後に、私が韓国版で何よりも感動したのが、ラストシーンです。日本版のラストは、よくいえば「人生の悟り」、悪くいえば「人生のあきらめ」の結論であり、そこが「いち子」がたどり着いた自らが生きる「現実」でした。しかし、韓国版のラストへの流れは、まず「ヘウォン」が母親の残していった手紙から、母の人生の中のとても深い部分に、自分に対する愛情を発見するくだりとなります。そして、自然の中に食物を求め、料理をして食べて暮らしている、その今の自分の人生というもの自体が、実は「母の小さな森(リトル・フォレスト)」の中にいたのだ、と気づくわけです。
「これまでお母さんにとっては、自然と料理、そして私に対する愛が、お母さんだけの『小さな森』だった。私も自分だけの『小さな森』を探さなければならない」――そのように悟った「ヘウォン」は母の手紙に返事を書きます。振り返れば自らの人生が母の愛であった、ということに気づいたからです。そうして、日本版と同じようにしばらく田舎を去って、人生と愛、家族を再び探し出していくようになるわけですが、そこにおいて韓国版だけの本当に感動的なラストシーンが待っています。私はこのラストシーンのゆえに、号泣するようになり、完全にこの韓国版の映画に軍配を上げてしまいました。(これだけは書かないことにします)
これは私が日本版を観ながら、日本人である私自身の中にもある「寂しさ」を強く感じていたからだろうと思います。その上で、まったく思いがけずに、私の中にはない韓国人の情緒の世界に出くわしたことで、私の中に新しい希望と救いが生まれたのではないか――。いずれにせよ、日本でしか生まれないような、自然に対する深い情緒をベースとした文化の上に、韓国の人間愛、家族愛の世界を展開させたという、この異色なミックスリメイクが、私には本当にすばらしく感じられたという話です。お勧めです!♪ヽ(´▽`)/
映画『リトル・フォレスト(리틀 포레스트)』(イム・スルレ監督)予告編。
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