■韓国男の背景には「原初的父」がいる! | 韓国・ソウルの中心で愛を叫ぶ!

韓国・ソウルの中心で愛を叫ぶ!

ポッドキャスト韓国語マガジン“サランヘヨ・ハングンマル”の編集長が、韓国と韓国文化の見つめ方を伝授します。

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ドラマ『大物(대물)』のシーン。検事役のクォン・サンウが父の遺影の前で思い出に浸っている。



以前、「韓国にカッコイイ男が多いように見えるのはなぜか?!」を面白おかしく書きましたが、今日は、それをまた文化論の別の角度から考察してみます。ヾ(≧▽≦)ノ"♪


これは、実は私の大学時代の研究内容でもあったんですけど、韓国文化の中には、共通の理想としての「父」というイメージが明確にある、という話なんです。これは私自身が韓国に来て、ますます実感された世界でした。


たとえば、日本文化だと、無条件の愛の象徴というと、間違いなく母の愛だという感じがありますが、韓国では、どちらかというと父の愛というイメージになります。


もちろん、韓国でも母の愛は偉大な愛なんですけど、父の愛よりは小さいイメージ。父の愛よりは若干、要求もあるような感じがする。たとえば、韓国のお母さんって、子供に夢と希望を託して、お金をかけて塾にやったりレッスンに通わせたりという感じがあると思うんですが、そういうイメージが伴ってしまう。


ところが、父はどうか――。



●「うんちを舐めてお前を育てた」?!


今、私がはまって視ている、コ・ヒョンジョン主演のKBSドラマ『大物』――視聴率が30%近くにもなる、ただ今大ヒット中のこのドラマでも、検事役のクォン・サンウのお父さんが、まさに典型的な「韓国の父」です。味一つで大統領直属の料理師に選ばれたほどの、偉大なコムタン屋の主人ですが、このお父さん、息子が策略にあって検事を辞めさせられた時には、敵の議員の家の前で毎日、毎日、どしゃぶりの中でもひざまずいて議員に息子の復職を頼むわけです。結局、それがもとで殺されてしまうのですが、父の死を知ったクォン・サンウが、父親の亡骸にすがって、わんわん甘える子供のように泣くシーンが胸に迫ります。


これこそが、まさに韓国人が共通に持っている父親のイメージであり、そして自らの根源としての「父」という存在に対する愛なわけです。このお父さん、まだ生きている時に、笑いながら息子にいった言葉が、「私は、お前のうんちの味をみながらお前を育てた」というわけですが、これは本当の話で、医療などのしっかりしていない昔は、韓国の親が赤ん坊の体の状態をみるために、うんちの味まで舐めて診断したという事実に由来しているわけです。


子供が病気になった時、便を舐めて甘ければ生きて、苦ければ難しいとか、そういう判断をしたらしいのですが、それは韓国人にとっても究極の親の愛。いずれにしてもそれほど、息子のためならどんなことでもできるという、その愛の象徴が、韓国では特に「父」であるということが驚きなわけです。日本ではそういうドラマや映画は、みたことがありません。


ただこれは、文化としての「イメージ」の話であって、現実の韓国の父たちが、日本の父たちに比べて立派だという意味ではありません。韓国人の場合、たとえ自分の父が、現実にはダメ親父であったとしても、それに関係なく、文化的に抱いている「父」の理想像があって、それは父親自身も抱いている共通のものなので、父の父、太初の父、「原初の父」といっていいものなわけです。そこから、父のほうに思い入れが強く、父のほうが偉大に描かれる韓国のドラマや映画が生まれているのです。


いっぽう、日本の文化では、その「父」の位置に理想の「母」がいる。文化的に神話の世界でも、韓国は頂点に「檀君」という父がいるんですが、日本は「天照大神」という母がいるわけです。「天照大神」は皇祖神として、日本人の太祖の立場ですが、「檀君」も国の祖であり、韓国人の太祖。ちなみに、「檀君」の父親は、天神・桓因の子の桓雄であり、母親のほうは熊の化身の女ということになっています。



●父の愛→兄の愛→韓国男性の愛


韓国におけるこの「原初的父」は韓国人の意識を支えています。日本でも、私は日本人の持つ共通の「原初的母」が日本人の意識を支え、日本社会の「和」をつくり出していると思うわけですが、韓国で、「父」が支えているものとは、「愛の秩序」です。


たとえば、韓国人は、兄弟関係がとても愛情深いわけです。それは男女の兄弟であっても、実に健全に愛情が深いのをよくみます。特に、兄と妹の関係で、兄が父親のような愛を立派に果たすということをみた時に、それは「父」という存在が中心にある文化なので、兄妹の距離がいかに近くても「父」が「愛の秩序」を守っている、その安心感があるためです。


「母」のつくり出す「和」は調和であって、秩序ではないので、日本人は男女の兄弟が近くなることを避けるし、近くなり過ぎることに不安感があるわけです。韓国人は、それが原初的な共通の「父親」によって守られるので秩序が立てられる、というわけです。


それで、韓国の女性は、年上の男性を「オッパ」といって心から慕います。別に恋愛感情でなくても、「オッパ」と呼んでいる段階において、兄と妹の愛としてどこまでも愛を深められるからです。韓国男性もそのように慕われて、韓国社会の理想の愛である父親的な愛を、兄として与える。父親のごとく責任を持ち、頼もしく、主体としての愛を立派に施すわけです。


まさにその段階を超えて、その延長上に、韓国の男女の愛が始まるので、韓国の男性の愛が、おのずと、深く、男らしく、頼りがいのあるものにならざるを得ない、ということなんです!


すなわち、「韓国男がカッコイイ」、それが本当だとしたら、その原因には、韓国文化が「原初的父」を中心とした文化だということがある、という話なのでした!ご理解いただけたでしょうか!(^^;)


おまけですが、率直な話として、私自身も日本にいた時には、日本人として、個人的にあまり父の愛の偉大さはよく分からなかったんです。もちろん、親の愛として父親も偉大なんですが、でも「父の愛」といってもピンと来なかった。ところが、韓国に来てみたらもう、「父の愛」という世界がよく分かるようになって、亡くなった父を前よりずっと慕わしく思い出せるようになったんですね…。これも韓国文化のおかげ。天国の父も喜んでいることでしょう。(^^;)




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