短編小説 「私はいつだってあなたの味方です」 より

 

 

 

「もう、大丈夫だからね」

 

はなは、それだけ言うと、私の右手を自分の両方の手で包み込んでいた。

話し終えた私の少しの興奮を母親のようになだめているようだった。

 

はなから聞いたその言葉に、なつかしさを思い出していた。

そう、その言葉を聞いたのは三度目だった。

一度目は出会った時、最初で最後のもみほぐしをしてもらった時、

二度目は突然病室に現れた時、そして今日。

その言葉の意味をずっと考えていたがわからなかった。

 

しかし、やっとその言葉の真実を見つけることができた。

 

「私は、あなたのことをずっと見ていたから」

 

それだけ言って、はなは不思議なことを話し始めた。

 

私は、あなたのことをずっと前から知っていた。そう、あなたが生まれる前から。

あなたは、ずっと一生懸命だった。

小学生の頃、いじめにあっていたよね。

今でこそ「いじめ」という言葉はみんなに理解されているけど、

そのころは、「なかまはずれ」と思っていたよね。

だからあなたは、友達に受け入れてもらおうといつも自分を我慢していた。

 

その我慢がいつか爆発してしまうんじゃないかと、私は心配だった。

中学生になっても友達とうまくいかない。

好きな女の子とも心が通じ合うことができないでいたみたい。

仕事についても途中、お父さんのことで悩んでいた。

 

でも、頑張った。すごいよ。

 

結婚して、明君が生まれた時、私はすごくうれしかった。

随分難産だったけど今もいい子に育ってるよ。もういい青年だけどね。

妹の麻衣ちゃん、もう可愛くてしょうがないよね。

少女から大人になって綺麗な女性に成長している。

私も少しやきもちやいてた。

 

離婚の原因なんて考えなくていい。あなたは頑張ったんだから。

でもその頃、少し人に対して攻撃的になっていたかな。

自分の悩みを打ち消すかのように自分にも周りの人にも厳しくなっていた。

一時的な無茶はいいけど、それが長続きする無理はいけないよ。

 

あなたは、みんなが自分から去っていったと思っているけど、そうじゃないんだ。

あなたが自分のことを蔑んで、みんなを避けていたんだよ。

 

誰もあなたを嫌いじゃなかった。

 

だから、とうとう身体が悲鳴を上げてしまった。

あなたの身体はあなただけのものじゃないからね。

私もたまにお邪魔してたから。

 

こんなはなし、信じられないでしょ。でも本当なの。

 

もう大丈夫。

 

私には人の色が見えるの。あなた、とてもいい色してきた。

 

 

それだけ言うと、はなは合わせていた両手を離し、そっと立ち上がった。

そして、「じゃ、またね」といつものように短い言葉を残して病室を出ていった。

 

もう何も思いつかなかった。ただただ泣けてきた。

 

 

「そんなことは信じられない」、そう思うのが当然だ。

でも私は、はなの正体をうすうす感ずいていたかもしれない。

はなは、私をやさしく包んでくれた。

そして、私のすべてを許してくれた。

 

 

「私はいつだってあなたの味方です」 はなの正体 より