二階俊博・自民党幹事長が中国人ビジネスマンに脅されていた
「何が起きていたんだ」──警視庁詰めの社会部記者たちは、事件の情報を掴んだ時に色めき立った。解散・総選挙の真っ最中に、政権与党の大黒柱である二階俊博・自民党幹事長が“大物中国人経営者”に脅されていたことがわかったのだ。それを受けて警視庁捜査一課が「強要未遂容疑」で大がかりな強制捜査に着手したのだからそれも当然だった。
ところが、この事件は警察の発表事案にならず、記者たちが知った時は、すでに事件は“解決”された後だった。捜査は不可解な経緯を辿り、メディアは今に至るまで一切報じていない。一体、二階氏はなぜ脅されたのか。
本誌は捜査関係書類を入手し、日中関係に影響を与えかねない事件の核心を掴んだ。まずは経緯を辿っていく。
事件が弾けたのは2017年9月26日、折しも衆院解散の2日前で、小池百合子・東京都知事の「希望の党」結党宣言で政界に激震が走り、国民もメディアに視線を釘付けにされていたタイミングだった。
その日、警視庁捜査一課の捜査員10数人が中国籍の会社経営者・王俊彦氏の自宅や関係先に捜査に入り、王氏を逮捕した。
王氏は上海出身で1988年に来日。不動産コンサルティング会社などを経営し、中国政府が関わる日中間の大規模ビジネスを展開、中国国営企業の日本法人や大手投資会社の顧問などを務めている。在日中国人社会では名の通った“大物”だ。「駐日中国大使館とも太いパイプを持つ」(公安関係者)とみられている。
事件のカギを握るのは王氏の会社が買収した静岡県小山町のセミナーハウス「東富士リサーチハウス」の倉庫から押収された段ボール約40箱分の資料だった。捜査一課の「押収品目録」にはこんな記載がある。
〈段ボール箱(「衆議院議員二階俊博」等と記載のある封筒在中のもの) 2箱〉
〈段ボール箱(「新しい波」の契約書類等在中のもの) 1箱〉
〈段ボール箱(「金銭出納帳」等と記載のある書類等在中のもの) 1箱〉
──など。「新しい波」とは旧伊吹派と合併する前の二階派の正式名称であり、派閥の経理資料などが保管されていたことが読み取れる。この段ボール資料が強要未遂事件の“材料”になった。
◆「大変なものがある」
捜査令状(勾留状)に添付された被疑事実の要旨に事件の概略が書かれている。
〈被疑者は、株式会社〇〇の取締役であるが、自由民主党幹事長二階俊博が同派閥事務所の閉鎖に伴い、同事務所の書類等を△△株式会社が管理していた倉庫であるMother Village東富士リサーチハウス内に保管依頼していたところ、平成26年10月17日、株式会社〇〇が同倉庫の所有権を取得し、前記書類等も同時に入手したことを奇貨として、平成28年11月4日午後1時頃、二階俊博の二男である二階直哉(当時44歳)を被疑者が顧問を務める××に呼び出し、「東富士リサーチパークを買い取った。そこにあった荷物は大変なものだった。これを流せば大変なことになる。」「まだまだ大変なものがある。」などと同派閥「新しい波」名義の通帳の写しや事務連絡メモ等を示して、同人の父である二階俊博の名誉に害を加える旨を告知して脅迫し、(中略)政治家である同人の父親に働きかけさせて義務のないことを行わせようとしたが、同人がこれを拒否したためその目的を遂げなかったものである〉(要旨内では〇〇、△△、××は実名が記されている)
王氏が段ボール箱の書類を「奇貨」として二階氏に何らかの“口利き”してもらおうとした。それが強要未遂にあたる──とする内容なのである。
要旨の中には、王氏が二階氏サイドに求めた具体的なビジネス案件として、都内ターミナル駅周辺の大規模再開発事業が記されていた。運輸大臣(現国土交通大臣)を務め、国交族の大物として知られる二階氏の影響力を期待した形跡がうかがえる。
事件の被疑事実からはいくつかの謎が浮かぶ。東富士リサーチハウスはかつて二階派が研修セミナー会場として利用していた施設である。
警視庁の捜査文書では二階事務所が経理資料を施設側に「保管依頼」していたことになっているが、前の所有者である不動産会社A社は2009年に民事再生法を申請し、そのときに施設は閉鎖された。A社の担当者は、「二階派の資料が保管されていたことは全く知らなかった。当時の社員はほとんど残っていないので経緯もわからない」と答えた。何年もの間、保管料さえ払われないまま段ボールは眠っていたことになる。
◆「中国大使館から持ち込まれた」
王氏はどんな経緯でその施設を所有することになったのか。現在釈放されている王氏を訪ねると、取材に応じた。
「あの施設を買ったのは2014年10月です。中国大使館からある団体を通じて『建物を改修すれば中国人向けの観光・宿泊施設に利用できるのではないか』と私に話が持ち込まれた。大使館とか、仲介者の顔が立つように資金を集めて買い取ったら、100箱近い段ボールが出てきた。中には二階さん本人や、二階派議員の物と思しき資料が入っていた。最も新しい資料には2014年8月15日と日付がありました。そのうち押収されたのは約半分でした」
証言通りであれば、2009年に施設が閉鎖された後も、2014年まで二階派の資料がひそかに持ち込まれていたことになる。
王氏は、逮捕の経緯に強い怒りを感じているようだった。二階氏に接触しようと考えた理由について、こう続ける。
「上海には日本資本の世界最大級の超高層ビルがあり、ホテルや日本企業のオフィスなどが集中的に入居している。私は以前から日本に中国資本のシンボル的なビルを建設するプランを持っていたが、なかなかいい感触がない。そこで事業を通じて面識のあった発電事業会社の役員だった二階直哉さんに、“お父さんのような力のある人に話をしてもらったら、対応がもう少し違ってくるかもしれない”という話をして、その時に資料の話をしたのも事実です。それが2016年11月でした」
だが、その“依頼”が実を結ぶことはなかった。
◆二階氏へのメール
直哉氏との“交渉”が失敗すると、王氏は二階氏に直接コンタクトを取った。その“働きかけ”は1年近く続いたという。
「二階先生とは数年前から日中交流のパーティーで何回かお会いし、携帯電話番号も交換していた。そこで、直接電話やメールで二階さんの資料を持っていること、日中友好の事業についてお話ししたいことを伝えると、会うと言いながら、なかなか実現しない。あまりに不誠実な対応だったので、手紙に資料のコピーを同封して送ったこともあります」(王氏)
その内容というのが、〈日中関係の逆風の中で両国の友好の為に尽力されている事、尊敬しております。なのでより二階先生を大事にしなければなりません。同封の一部コピーを読めば、わかっていただく事と思いますが、変な人の手に渡ると二階先生のみならず、旧保守(旧保守新党)の先生の方々、銀行、国土交通省等方々にもご迷惑になります〉というものだ。
そして衆院解散が迫った2017年9月22日、王氏は二階氏に〈こちら誠意を持って、何回も連絡しましたが、なんの返事もありません。26日を期日とし、明確の返事ない場合は、各コピー、特捜部と主なマスコミに送ります〉というメールを送った。その最終期限の9月26日に王氏は「直哉氏に対する強要未遂容疑」で逮捕されたのだ。
王氏はいまも捜査に納得いかない様子だ。
「資料についても直哉氏は『ゴミみたいなもの』と問題にしていなかった。それを『強要』といわれ、1年ほども前のことでいまさら逮捕されるなんて理解できません。そもそも私は、二階さんにはずっと連絡していましたが、直哉さんとは、昨年(2016年)11月4日以来、一切連絡を取っていなかったのですから」
◆不起訴処分
ここまでの経緯を一言でまとめてしまえば、「二階親子を脅した中国人が逮捕された」ということである。日本の与党トップを脅迫する“重大事件”であるのだから、「日本の法律で裁き、その罪を償わせる」という流れになって当然だろう。日中関係を考慮するにしても、中国への強制送還という処分が自然に思える。ところが──。
その後、事態は不思議な展開を見せた。
逮捕から9日後の10月5日、直哉氏の代理人は王氏の代理人と「王氏はこの件についてお詫びし、二度と同じようなことをしないことを誓うことを約する」「資料を二階事務所に返還する」との示談書を交わして、被害届を取り下げたのだ。
王氏は翌6日に釈放され、検察は不起訴処分を決めた(10月30日)。
「強要未遂罪」は非親告罪で被害届がなくても検察は起訴できるが、「示談で被害届が取り下げられると情状を考慮して検察が容疑者を不起訴にするのはよくあること」(元検事の落合洋司弁護士)という。
二階氏側はなぜ、自分を脅した王氏がすぐに“赦免”されるような対応を取ったのか。約40箱の段ボールの中に早く取り戻したい重要な資料が含まれていたとすれば、どんな資料だったのか。あるいは、二階氏側は事件が大きくなった場合の日中関係に与える影響を心配したのかもしれない。
二階氏は自民党きっての親中国派政治家として知られ、現政権の日中関係の最重要キーマンだ。
2017年5月には安倍首相の親書を携えて訪中し、習近平・国家主席と会談、冷え込んでいた日中関係の改善に大きな役割を果たした。この年末にも、12月24~29日の日程で与党訪問団を率いて訪中を予定しており、習氏とも再び面会する方向で調整が進められている。
そんなタイミングで“大物中国人”とのトラブルが降って湧いたのだから、恐るべき偶然である。
過去、日中間では、故・橋本龍太郎元首相の“中国人愛人”問題(*)をはじめ、親中派とみられた政治家たちほど、中国絡みのスキャンダルに見舞われてきた歴史がある。
【*1996年、当時の首相・橋本龍太郎氏と中国人女性との親密な関係が発覚。女性が情報工作員だったことから、“ハニートラップ”の疑いが浮上した】
「中国側にすれば、反中国派の政治家を籠絡するのは難しい。親中派の政治家にトラップを仕掛け、弱みを握って自分たちの意向を実現しやすくするのが常套手段です」(公安関係者)
今回の事件について、二階氏、直哉氏に聞いた。二階事務所へは何度も返答を求めたが、期日までに回答はなかった。
直哉氏へは、二階事務所に質問書を送った数分後に携帯電話に連絡し、こちらが名乗ったところ、「質問をいただいているみたいですよね?」と、すでに情報が伝わっている様子だった。直接尋ねたい旨を伝えたが、「(質問書が)届いたっていうことでしょう? それなら結構です」と遮られた。
多くを語ろうとしない「被害者」。“隠したいもの”があるとしたら、一体何なのだろうか。このような中で、果たして二階氏はどのような思いで訪中するのだろうか。
※週刊ポスト2018年1月1・5日号
http://www.news-postseven.com/archives/20171220_638489.html
中国の対日工作機関 河野外相と翁長知事に伸ばした魔の手
永田町が政局に揺れ、国全体が北朝鮮のミサイルに緊張感を高めるなか、沖縄県・那覇を訪ねる謎の一行がいた。その名は中国国際友好連絡会(友連会)。表向きは日中友好を謳う。だが、実態は対日工作活動の一翼を担っているとされる。
9月4日、北京からやってきた友連会の一行4名が、沖縄県庁6階の応接室に翁長雄志知事を訪ねた。今回、訪日団長を務めた辛旗副会長は翁長知事に要請した。
「ぜひ北京を訪れてほしい。私の大学の同級生が故宮博物院の館長ですので、招待したいと思っています。また、私の娘も学芸員です。彼女は、昨年沖縄を訪れて、琉球王朝を研究しているので交流したい」
だが、友連会のいう「交流」の本当の狙いは、沖縄と日本本土との間に楔を打つことにある。基地問題を背景に沖縄では日本政府への不満が高まっているが、友連会の中にそうした気運を利用しようという動きがある。事実、2012年8月、中国の友連会と「交流」していた日本の日中友好団体である、沖縄・中国友好協会が主催したセミナーでの議論をもとにまとめられた文書には、尖閣領有権問題の処方箋として、短期的に「領有権の棚上げ」を行い、その上で「政府と沖縄との間で、尖閣の土地の賃貸借契約を締結」し、沖縄に「尖閣の管理を委託」することを目指す、といった内容が書かれていた。
このセミナーが講師として招いたのは、清華大学の劉江永教授。中国きっての日中関係の研究者として知られ、友連会の理事でもあった──。ジャーナリストの竹中明洋氏がレポートする。
* * *
友連会の活動は沖縄だけにとどまらない。今年9月、前述の沖縄訪問後、東京に移動し、自衛隊の将官クラスOBからなる「中国政経懇談会(中政懇)」のメンバーと昼食を共にした。
中政懇とは、日中国交正常化から4年後の1976年に中国側の要望で設立された団体だ。毎年6月に友連会の招きで将官OBのメンバーらが北京を訪問し、中国の退役軍人らとのフォーラムを重ねてきた。
今年で40回目。日中関係が悪化する中で、両国の軍事関係者がチャンネルを維持することについて、危機回避のメカニズムとしての意義を評価する声がある一方で、OBといえども数年前まで自衛隊中枢にいたメンバーが参加することに情報流出への懸念も少なくない。
「OBを通して現職に影響力を行使されることが懸念されます。さらに中国の情報収集は、ロシアが得意とするように金銭で協力者に仕立て上げて秘密文書を入手するやり方ではなく、接触を何度も繰り返し人間関係を構築しながら会話の中で情報を得ていくという息の長いもの。中政懇と友連会のフォーラムがまさにそうした場になっていないか」(防衛省関係者)
今年6月19日に北京で開かれたフォーラムでも、中国側は「(日本は)北朝鮮のミサイル関連施設を先制攻撃する意志があるのか」「あるいは東シナ海で日中の緊張が続くなか自衛隊の現場指揮官には具体的にどのような権限が付与されているのか」など自衛隊の作戦遂行に関わる情報を聞き出そうとする質問が目立ったという。
9月上旬の東京滞在中、友連会の一行は、外務省の飯倉公館で河野太郎外務大臣とも会っている。
儀礼的なやりとりが交わされただけのようだが、日本外交のトップが対日工作機関と疑われる一団と面会しただけでも、憂慮すべき事態ではないか。北朝鮮有事に対し日米と中国の足並みが揃わぬなか、外交の最前に立つ河野大臣は日本側のキーマンであることは間違いない。
河野大臣に友連会との面会について尋ねると、「諸外国から来日する様々な関係者との間で積極的に意見交換を行っており、9月8日にご指摘の中国国際友好連絡会の表敬を受けたが、先方とのやりとり一つ一つについて、お答えすることは差し控えたい」(外務省国内広報室)とのことだった。
また、翁長知事からは、「国交正常化45周年、そして沖縄県と福建省との間で友好県締結20周年ということで来庁された。こちらも感謝の意をお伝えしました。(中国と沖縄は)歴史的なつながりが深いので、交流を継続していくことが大事だと考えています」(沖縄県庁知事公室広報課)との回答を得た。
日本国内で何の憚りもなく活動する彼らには政府として、もっと注意を払うべきだろう。
●たけなか・あきひろ/1973年山口県生まれ。北海道大学卒業、東京大学大学院修士課程中退、ロシア・サンクトペテルブルク大学留学。在ウズベキスタン日本大使館専門調査員、NHK記者、衆議院議員秘書、「週刊文春」記者などを経てフリーランスに。著書に『沖縄を売った男』。
※SAPIO2017年11・12月号
http://www.news-postseven.com/archives/20171112_626627.html
中国大使館が裏活動 意外な組織に潜む禁じ手に日本は無防備
中国の対日工作機関は網の目のように広がり、日本の中枢に浸透している。最も知られる情報機関は、国務院(中国政府)に所属する「国家安全部」。詳しくは後述するが、ここから様々な組織に「工作員」が潜り込んでいる。
中国共産党直属の「中央対外連絡部」は党の外交を推進する機関だが、実質的には対外工作機関として、日本の政治家とのパイプ作りなどに勤しむ。日本国内における中国の工作活動の拠点となるのが、東京都港区の一等地に居を構える駐日中国大使館だ。大使館トップである程永華・駐日大使は創価大学に留学経験がある。産経新聞外信部次長の矢板明夫氏が語る。
「2010年の就任以来、7年を超える職務は歴代最長です。程大使の公明党人脈を生かして、自公政権に影響力を及ぼすことを習近平が期待しているからです」
幅広い対日人脈を誇る程大使のもと、大使館員は日々様々な工作を行う。
「中国の外交官は日本の政界に深く食い込み、副大臣、大臣経験者クラスとサシで食事します。彼らは外交力を武器に東京でのウイグル会議やダライ・ラマ訪日など、中国の不利益になる日本の動きを阻止すべく奔走します」(矢板氏)
これらは言わば「オモテ」の活動だが、大使館には「ウラ」の活動もある。
200人以上と言われる大使館常駐スタッフは日本の外務省にあたる「国務院外交部」に所属する者だけではない。前述した国家安全部は、参事官や書記官などの肩書で中国大使館に要員を送り、日本の警察庁にあたる「公安部」も自前の人員を配置する。
こうした“出向組”は外交部の人間より権力を持ち、独自の情報活動を進める。“出向組”は意外な組織にも潜んでいる。
「国家安全部や人民解放軍からの出向者は、人民日報や新華社など、日本に支局を置く多くの中国メディアに潜り込んで働いています。記事を書く者も、メディアの仕事をまったくしない者もいます」(中国メディアに詳しいジャーナリスト)
彼らはメディア関係者として様々な立場の日本人と会って情報を収集する。防衛省のインテリジェンス担当者が身分を偽ってNHKの北京支局に勤務するような“禁じ手”だが、これが現実なのだ。情報史研究家の柏原竜一氏は言う。
「中国は情報活動の重点をプロパガンダに移している。世界中で進める中国の拠点づくりや日本での土地買い占めなど、長期に及ぶ“侵略”を正当化するための宣伝工作に注力しています。それに対して日本はあまりに無防備。このままでは日本を含め、世界は中国のものになるでしょう」
もはや隠されることもなくなった「中国の野望」を直視しなければならない。
※SAPIO2017年11・12月号
習近平政権 「反日日本人」を支援育成し利用する工作進行中
http://www.news-postseven.com/archives/20171120_626635.html
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