外は夕暮れの薄暗い曇り空…

人もまばらなファミレスの店内…

2人の男の笑い声が響き渡る…

『なぁ…プリちゃん…
“リフレ”ってとこに行ってみねぇか?』

俺は目の前に座る二代目ヲタクプレイボーイ“プリぴょん”に話しかける…

「リフレって何すか?」

プリぴょんが訪ねてくる…

『リフレってのは…
リフレクソロジーの略だよ…』

「リフレクソロジー?」

『そう…まぁ簡単に言えばマッサージだよ…』

「はぁ…」

プリぴょんは、何で急にマッサージなんだ?という表情を見せる…

『だが…
俺が今から行こうとしてるのはただのマッサージじゃねぇぜ…!?』

「ほぅ…」

少しだけ身を乗り出して聞いてくるプリぴょん…

『JK(女子高生)の格好した女の子やメイドの格好した女の子が
マッサージしてくれる店なんだぜ…!?
どうだ?行ってみぇか?』

俺は煙草を口に咥えながらプリぴょんに訊ねた…

「行きましょう!!」

プリぴょんは考える仕草も見せずに即答してくれた…

俺は彼のこういうノリが良い所が大好きだ…

彼ならきっと二つ返事でOKしてくれると思ってた…

「リフレかぁ…
ハマったらヤベェなぁ…」

プリぴょんがオムライスを食べながら独り言の様に呟く…

「でも…
ナップルさん…俺等…
もし万が一…
リフレにハマったら…
もはや…ヲタクでも何でもないっすよ!」

『バカ野郎!
俺達がそう簡単にハマる訳ねぇだろ!
俺達は、なんなのか言ってみろ!』

「ヲタクプレイボーイっす!」

『そうだ!
ヲタクプレイボーイとは…』

アイドルを逆にイカれさせちまうようなヲタクだ!!』

俺達は声を合わせてそう言うと顔を見合わせて笑いあった…

しかし俺もプリぴょんもリフレに一度も行った事がない…

完全にリフレ童貞だ…

風俗で華麗にボッタくられた経験を持つ俺は店選びに非常に慎重だった…

とりあえず客引きは危なすぎる…

俺達は、スマートフォンで調べた…

血眼にして調べた…

きちんと日本人の女の子がやってくれて…
値段もリーズナブルで…
普通に可愛い娘が結構いそうな店を…

そして…長考した結果…

メイドリフレchocolat(ショコラ)という店に決めた…

さっそうとファミレスを出ると雨が止んでいた…

なんだか…良い予感がする…
そんな期待を胸に俺達は踵を返しメイドリフレchocolatへ向かい歩き出した…

メイドリフレchocolatの前に着くと
そこは怪しさ漂う小さなビルだった…

大丈夫なのか…

強烈な不安だけが俺の心を支配していく…

胸の心の奥にある小さな勇気を絞り出し…

俺達はビルの中に入りエレベーターのボタンを押した…

エレベーターの扉がゆっくりと開く…

エレベーターの中に入りメイドリフレchocolatのある5階のボタンを押す…

1階…

2階…

エレベーターの数字がどんどん上がっていくと共に…
俺の心臓が跳ね上がるくらいバウンドしているのが分かる…

3階…

4階…

止まらない鼓動…
震える手足…
まだ見ぬ世界だが俺には不安しかなかった…

5階…

エレベーターの扉が開く…

エレベーターから足を踏み出すとすぐ左手に
「chocolat」と書いた鉄の扉があった…

怪しい…
怪しすぎる…

俺は不安からかすぐにでもエレベーターで引き返したくなった…

だがここで逃げる訳にはいかない…

新たな扉を開く時はいつも不安が伴う…

でも…勇気を出して…

その扉を開き一歩を踏み出さなければ…

何も手に入りはしない…

俺はありったけの勇気を振り絞り…

重い鉄の扉を開いた…

扉を開くと…

狭いが綺麗な空間が広がっており…

まるで箱ヘル(店舗ヘルス)そのものだ…

受付にはレベルの高いイケメンがおり…
「10分待ちますが宜しいでしょうか?」
と物凄い丁寧に聞いてくれた事でこの店はきっと大丈夫だと思った…

イケメンの店員さんからシステムの説明を聞く…

俺達はリフレ童貞という事もあり…

一番金額的に安いコースの10分コースを選んだ…

この日、店に出勤していた女の子は3人で…

3人とも写真を見る限り可愛い…
うち1人は埋まっているという事で2人の内から選ぶことになった…

せっかくお金を払って揉んでもらうのだから…
可愛い娘に揉んでほしい…



ことのはちゃん…



まりあちゃん…

個人的に写真を見る限り…
もうどっちの娘でも何の問題もないレベルだ…

おそらくプリぴょんも同じことを思ったはずだ…

しかし…写真はいくらでも盛れるからここで油断してはいけない…

だが…どう見ても…
完全にどっちでもイケる為、俺達は逆にどっちにするのかを迷ってしまい…
最終的に2人で、謎にじゃんけんをし始める…

結果…プリぴょんが勝利し、プリぴょんは…
“ことのは”ちゃんを選んだ…

そして俺は、自動的に“まりあ”ちゃんになった…

そして…イケメン店員さんに部屋に通される…

部屋には薄暗い照明にマットが敷いてあり…
リラックマの可愛い枕がおいてある…

完全に…ヘルスじゃねぇか…

俺の緊張感はMAXに達した…

無駄にソワソワし始め、完全にどうして良いか分からず…

とりあえずマットの上で正座をし、オプション表をひたすら眺めた…

すると、プリぴょんの部屋に女の子が来た様で…
プリぴょんとことのはちゃんとの会話が嫌でも耳に入ってくる…

『いやぁ~僕ヲタクなんすよぉ~』

「えぇ~~こんなヲタク初めてぇ~~」

楽しそうだな…

しかし…俺の所には中々女の子が登場しない…

待ってる時間が俺を苦しめる…

無駄にマットの上を歩いたり、体育座りしたり、正座したりと…
全く落ち着かない様子で女の子が現れるのを待った…

おそらく20回くらいオプション表を読んでた所で「失礼しまぁ~す!」と可愛い声が聞こえた…

俺は、弾かれた様に振り向いた…

めっ…めっちゃ可愛い…

写真よりも可愛いじゃねぇか…

はっきり言って普通にアイドルよりも可愛かった…

胸が弾かれた様にバウンドする…

落ち着け…

落ち着くんだ…俺…

俺は…誰だ!?

仮にもヲタクプレイボーイを名乗る男だぞ…!?

アイドルにだって滅多に心揺れないのに…

こんなとこで…素人に思い切り動揺してどうする!?

俺は静かに目を閉じて軽く深呼吸をした…

そう…俺は…こんなとこで心を乱されるような男じゃない…

心頭滅却の術!!

俺は心の中で思い切りに喝を入れて目を開いた…

まりあちゃんが目の前にいた…

おいおいおい…
可愛すぎんだろ…
それに…めっちゃ良い匂いするし…

ねぇ…神様…
これ…なんなんすか…

彼女からリフレについての説明を聞いている間…
俺は…ずっと彼女に見惚れていた…

どこをマッサージするか聞かれた…

俺は…“肩と背中”と答えた…

普通に体のコリをとって欲しかった…

「顔見えないけど良いの?」

まりあちゃんが悪戯な笑みを溢しながら訊ねてきた…

『いや…マジで好きになるから…無理…』

俺は…とてつもなく気持ち悪い返答をした…

マットに胡坐をかき…
まず、肩のマッサージが始まった…

普通にマッサージがうまい…
俺には心地良い強さでコリがほぐれていくのが分かる…

歳を聞くと20歳という事で10個下の女の子かと思うと自然と胸が高まる…

まりあちゃんの太ももや胸の感触が…
これでもかというくらい俺の背中を駆け巡る

まりあちゃんの良い匂いが…
これでもかというくらい俺の鼻腔をくすぐる…

まりあちゃんの可愛い声が…
これでもかとうくらい俺の耳を撫でる…

『ここ高校生とかも来るの?』

「来るよ~!前とか高1の子とか来たよ!」

『高1!? 高1でこれは…不味いっしょwww』

「うん!テント張らないように…気を付けたよwww」

うん…
まりあちゃん…気を付けても無駄だよ…
今、目の前に30にもなって…
君に触れられ…
思い切り…
テント張ってるオッサンがいるよ…

俺は心でまりあちゃんにそっと囁いた…

その後…

マットにうつ伏せで寝そべり俺の背中にまりあちゃんが俺の上に乗っかった…

まりあちゃんの股間が俺の背中をなぞる…

まりあちゃんの股間の熱が背中越しに伝わる…

俺の全神経がまりあちゃんの股間のある位置に集中する…

相変わらず…
天にも昇るような甘い匂いが俺の鼻腔を刺激し続ける…

相変わらず…
可愛い声と優しい言葉が俺の耳を撫でまわす…

今にも張り裂けそうな胸のトキメキが止まらない…

今にも張り裂けそうなテントの先から我慢汁が止まらない…

神様…教えて…
この気持ちは…なんなんすか…

神様…教えて…
俺は…ヲタクなんですか?

神様…教えて…
リフレ嬢に…ガチ恋しても良いんですか?

俺は背中をなぞる股間の熱と…
まりあちゃんの良い匂いと…
自分のパンツが濡れていくのを感じながら…

思い切り眼を瞑ると…
涙が溢れてきた…

身を切り血を流しても…
癒せないPAINだけが俺の体を蝕んでいた…

でも…なんだか全てが許された様な気がした…

誰もいないと思っていた…
僕を許してくれるのは…

誰もいないと思っていた…
僕を包んでくれるのは…

信じられなかった…
こんなに胸が痛いのに…
きっと…いつか…忘れてしまう事が…

楽しい時間はあっという間だ…
終わりの時間は訪れる…

マッサージが終わると俺のサングラスをまりあちゃんが手に取り…
おもむろにかけ始めた…

可愛い…

もう…
やめてくれ…
これ以上…
俺の心を掻き乱さないでくれ…

こんな気持ち悪い男がどんなに優しさ溢れる言葉を…
君に伝えようが宙に消えるだけなのだから…

部屋を出て…受付に向かうと…
一足先に終わっていたプリぴょんが待っていた…

まりあちゃんが俺達の靴を持ち…
急にどっちが俺の靴で…
どっちがプリぴょんの靴なのか…
というクイズ始めた…

可愛い…

神様…この娘…なんなんすか…!?

なんで…
こんなにも…
俺の心を揺さぶってくるんすか…!?

そして…
まりあちゃんは見事に俺達の靴を当て…
弾けるような笑顔を見せて…
俺達を見送ってくれた…

エレベーターが来て…
エレベーターが閉まるその時まで…
見送ってくれた…

エレベーターが下がり始める…

「楽しかったぁ…」

プリぴょんが独り言の様に囁く…

『あぁ…楽しかった…
俺の予想を遥かに超える楽しさだった…』

俺も…パンツをビショビショにしながら囁いた…

エレベーターが開き…

俺は煙草を口にくわえ…火をつけた…

煙草の紫煙が秋葉原の煌くネオンに溶け込む…

紫煙を胸奥深くまで吸い込み…

後戻りのない人生を…
今初めて振り返り…

少し浮かれ気分で…


俺達は秋葉原の煌くネオンに向けてそっと歩き出した…

Don't Leave Me…

そう祈りながら…


完!!