「そうですか。それを聴けて安心しました。――いえ、非番のときにでも、」

 

 

 そこで小声になり、警官は顔を近づけてきた。カンナは一度引きかけた顎を突き出してる。

 

 

「非公式というのもなんですが、お詫びに行きたいと思ってるんです」

 

 

「いえ、そんなのは気にしないでいいですけど、是非お立ち寄り下さい。――あの、えっと、」

 

 

 背の高い顔を見上げ、カンナは息を止めた。お名前くらいは訊きたいけど教えてくれるかな?

 

 

「どうされました?」

 

 

「あの、お名前教えていただけます?」

 

 

「ああ、」

 

 

 頬をゆるめ、警官はうなずいた。カンナは胸に手をあてている。――そう、これが本物のドキドキよ! あんな馬鹿に感じるのは偽物に違いない。これぞ本物!

 

 

「北条と申します。北条裕哉です」

 

 

「北条さん」

 

 

「あなたはカンナさんでしたね?」

 

 

「はい! そうです!」

 

 

 ああ、なんてこと! 名前を憶えて下さってたなんて! カンナは足の方からゾワゾワしてきた。これはきっとドキドキの最上級なんでしょうね。こんなの初めてだもの。

 

 

「で、こちらのお子さんは?」

 

 

「へ? ――ああ、いえ、ちょっとした知りあいっていうか、」

 

 

 顔を向けると、男の子は固まったようになっている。もしかして私のこと殺人犯の助手と思ってんのかな?

 

 

「そうでしたか。では、蓮實さんにもよろしくお伝え下さい。そう遅くならないうちに伺いますので」

 

 

 長い脚を広げて警官は自転車に乗った。カンナは縋るように前へ出てる。手も伸ばしかけていた。

 

 

「――行っちゃった。でも、出てきてよかったのかも」

 

 

 男の子は立ち上がっていた。抱きしめられたペロ吉は四肢を垂らしてる。

 

 

「ね、もしかしてだけど、テレビでうちの先生のこと――」

 

 

 そう言いかけると、くるっと後ろを向いた。そして、駆けていってしまった。

 

 

―― ちょっとばかりお休みして、

    第15章へ行きますね。

    お読みいただきありがとうございました。

 

 

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《雑司ヶ谷に住む猫たちの写真集》

 

 

雑司ヶ谷近辺に住む(あるいは
住んでいた)猫たちの写真集です。

 

ただ、
写真だけ並べても面白くないかなと考え
何匹かの猫にはしゃべってもらってもいます。

 

なにも考えずにさらさらと見ていけるので
暇つぶしにどうぞ。