「じゃ、お待ちかねの質問タイムね。――っていうか、皆さん大丈夫? 訊きたくないってなら、それでもいいんだけど」

 

 

 借金まみれの女性レポーターが背筋を伸ばした。顔は青くなってるものの、声だけはくっきりしている。

 

 

「では、私から。――えっと、釈放されたのはあなたが事件と無関係だからなんですか?」

 

 

「いや、まったく無関係とはいえないでしょう。第一発見者でもあるし、亡くなられた方とトラブルがあったのも事実ですから。しかしですね、そのトラブルも先方から仕掛けてきたことだったんですよ。それは警察でも把握してますので問い合わせてみて下さい。――ま、とはいえ、あの方の死とは無関係ですがね」

 

 

「なるほど。それで、そのトラブルなんですが、」

 

 

「ああ、駄目。あなたは終わりでしょ。質問したかったら、また占ってもらってからにして。――じゃ、次の質問ね。誰がするの?」

 

 

「じゃあ、私が、」

 

 

 夫婦交換してるアナウンサーが手を挙げた。顔にはびっしりと汗が浮かんでる。

 

 

「あなたにはアリバイがあるということですが?」

 

 

「その質問でいいの? 一回だけなのよ。それで大丈夫?」

 

 

 考える表情をしたもののアナウンサーはうなずいた。蓮實淳は明朗にこたえた。

 

 

「そうですね。だから、警察も釈放せざるを得なかったんですよ。ま、迷惑になるんで誰だったかは言いませんが、私はその時間にある人物と会ってたんです。それに、私は警察の人間と先方へ向かう約束をしてたんですよ。どうしてそのタイミングで殺人などするんです? 常識的に考えてそれはないでしょう。違いますか?」

 

 

 マスコミの連中はふむふむと聴いている。先制パンチが効いてもいたのだろう、詰問調になれないのだ。

 

 

「さ、これでわかったでしょ? うちの先生は亡くなられた方を助けにいっただけなの。だって、お爺さんが倒れてたら誰だって様子を見にいくものでしょ? それをオマワ――ううん、警察が勘違いっていうか、誤認逮捕っての? それをしたってわけ。それが真相よ。それと、もうわかってるでしょうけど、この人は『自称』なんかじゃないの。本物の占い師よ。わかったら、『自称』なんてのは取っちゃって、『驚異の』とかにして」

 

 

 彼は椅子にもたれかかってる。驚異の占い師? それも嫌だな。そう思いながらも無表情で押し通した。

 

 

「じゃ、代金はここで頂くわ。一人二万円。領収書が欲しい人は言ってね」

 

 

 マスコミの連中は財布を出しはじめた。望んだ過程と違っていたにせよ結果は得られたのだ、それで良しとしたのだろう。ただ、途中で全員が首を曲げた。ガラス戸がひらいたのだ。

 

 

「え? なに? 今度はなにがあったの?」

 

 

 戸口に立ったまま千春は瞼を瞬かせてる。蓮實淳は口をあけて笑った。これじゃ、集団喝上げの現場に見えるもんな――そう思ったのだ。

 

 

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《雑司ヶ谷に住む猫たちの写真集》

 

 

雑司ヶ谷近辺に住む(あるいは
住んでいた)猫たちの写真集です。

 

ただ、
写真だけ並べても面白くないかなと考え
何匹かの猫にはしゃべってもらってもいます。

 

なにも考えずにさらさらと見ていけるので
暇つぶしにどうぞ。