それから彼は五人連続して占った。

 

 

「ふむ。あなたはけっこうな借金がありますね。それもギャンブルで拵えた借金だ。パチンコ、競馬、競輪、オートレース、あらゆるギャンブルに手を出している。少し前には堅いと考えていたレースで五十万すった。借金は増えるばかりだ。だから、――いや、だからってのもどうかと思いますが、あなたは取材費名目で空の領収書をもらいまくってる」

 

 

「あなたはいま離婚を考えてますね。奥さんが不倫してると思ってるんでしょう。いえ、あなたの経験は見えづらいところがあったんですよ。しかし、――うん、そうか。仕事仲間で家族ぐるみの関係にある方がいますね? その方と奥さんの仲を疑ってるんだ。ただ、あなたもそちらの奥さんと会って、――ん? ちょっと待って下さい。――ふむ、そうだ、こりゃ、違いますね。不倫とかじゃない。夫婦交換だ。いや、すごいことしてますね。その挙げ句に離婚ってんじゃ救われない。違いますか?」

 

 

 本来の自分を出しつつ彼は占いつづけた。抑留生活からの解放を実感できたのもあるのだろう、楽しくもなってきた。ただ、脂ぎった顔の中年男(どこぞの局のディレクターだった)を見たときはげんなりした。最も目にしたくないものを見てしまったのだ。

 

 

「ええと、あなたには新しい彼氏ができましたね。彼は若く、活きがいい。少々戸惑ってしまうくらいにね。その彼は、――ん? なんか知ってる人のような気がします。テレビで見たことがあるのかな? ぼやけていたが、――ああ、俳優さんだ。この前ドラマで見ましたよ」

 

 

 中年男は腕をつかみ、片手で拝むようにした。目は仕切りのカーテンに向かってる。

 

 

「いいでしょう。違う話にしましょうか。――うん、あなたは痔ですね。まあ、そうなるのもしょうがないが、ひどいキレ痔だ」

 

 

 占いが終わると全員が暗澹たる顔つきになった。ところどころ聞こえていたのだろう、互いを見合っては唇を歪めてる。カンナはそれに満足した。

 

 

 

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《雑司ヶ谷に住む猫たちの写真集》

 

 

雑司ヶ谷近辺に住む(あるいは
住んでいた)猫たちの写真集です。

 

ただ、
写真だけ並べても面白くないかなと考え
何匹かの猫にはしゃべってもらってもいます。

 

なにも考えずにさらさらと見ていけるので
暇つぶしにどうぞ。