『FishBowl』 vol.7 - 18 | 佐藤です、小説書いてます。

佐藤です、小説書いてます。

小説を書くこと、読むこと――について。
あと、思いついたことなどを、
まあ、そこはかとなく。

 

 そして、十二月二十四日。

 

 この日は父さんも母さんもFishBowlにいた。父さんは年末年始の番組を撮り終え、しばらく自由の身だった。復帰後はじめてのまとまった休日だったのだ。母さんの方は一月の頭にヨーロッパへ行くことが決まっていた(モーツァルトの半生を追うというドキュメンタリーの仕事だった)。それまでの短い休暇を憩いの我が家で過ごそうとしていたのだ。

 

 しかし、父さんも母さんも望んでいたようにはその休みを充実したものにできなかった。素人探偵たる真昼ちゃんがほぼすべての時間と労力を放火犯対策に費やしていたからだ。真昼ちゃんは自分の言動が「二時間ドラマっぽい」と思われてるのにも開きなおっていた。

 

「十時半頃になってるのよ。二時間ドラマでいえば、そういう時間ってわけ。もうクライマックスなの。これで、このいやらしくも長ったらしくつづいた馬鹿な放火騒ぎからバイバイできるってことでもあるわ」

 

「それはおめでたいことだが、」

 

 父さんはチキンにかぶりついた。近所の肉屋で買った甘辛くローストしてあるチキンだ。

 

「これはちょっとひどいんじゃないか? いや、出された飯に文句言うのはよくないけどよ、それにしたって手を抜きすぎだろ?」

 

「そういうのとも今日でバイバイよ。私、考え過ぎちゃってご飯つくる気力もないんだもの。そのかわり量だけはたくさんあるからね。気が済むまで食べて。ああ、ケーキもあるからね。山崎のだけど」

 

 確かに量だけはたくさんあった――大振りな皿には骨にクリスマスっぽい飾りのついたチキンが山盛りになっていた。ケーキも大きいのが二つ、冷蔵庫に入っていた。

 

「気が済むまでって言うけど、こんなのそれだけ食ったら喉が渇くぜ。それに、この前も俺は鶏肉食ってた気がするな。ほぼ同じ味付けのものをな」

 

「ねえ、ほんとうに今日なの?」

 

 この前と同じように鶏の皮を全部取り除いた母さんが口をはさんだ。

 

「ほんとうに、ここに火がつけられるの?」

 

 真昼ちゃんはワンパイントグラスになみなみと注いだソーダ水を口に含んだ。放火にそなえてアルコールは控えていたのだ。

 

「まあ、きっとそうなるんでしょうね。私の考えではそうなるわ」

 

「でも、誰が?」

 

 全員が真昼ちゃんを見つめた。見られた方は背筋を伸ばし、謎の微笑を浮かべた。

 

「誰がというのは別にして、そいつは相当しつこい性格の人間よ。粘着質なのよ。そういう奴は自分が決めたことに忠実であろうとするものよ。ほぼ一直線に放火していったのもそれを物語ってるし、犯行のあった曜日が同じなのもそうだわ。それにね、きっとそいつは全員が揃うであろう日を狙ってたのよ。クリスマスならそうなるだろうって考えたんでしょうよ」

 

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