『清水ミカ』 9 | 佐藤です、小説書いてます。

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 過ぎ去ったことは忘れるようにしているミカにとってもこのことはなかなか忘れられないことだった。

 卒業間近になって当初考えていたのとは違う職種であり業種でもある今の会社に就職が決まり、なんとか自分を立て直そうとしているうちにも、どうかすると佐々木くんのことが頭をよぎった。ユキのこともだ。

 しかし、それは開けてはならない箱の中のことだと考えるようにしていた。

 だって、私は理由を聴いていないのだし、まさか自分の考えているようなことが現実にあるわけがない――とだ。まるで安っぽいドラマみたいと考え、そう考えるとBMWも佐々木くんの台詞もほんとうに安っぽいドラマの道具立てのように思えた。

 もちろん胸を切れにくいナイフで傷つけられているような気分にはなったけれど、これはよくあることだと思うようにした。そして、よくあることは忘れられることでもある、と思った。


 はからずも次につきあった男が別れ際に言ったのもほぼ同じ内容だった。その男は同期で入った本社勤務の人間だった。半年ほどつきあってから、やはり突然別れを切りだされたのだ。そのときに男はこう言った。

「よくあるだろ、こういうの。すぐに忘れちまうさ」

「そうね。ま、そうなんでしょう」とミカは言っておいた。

 その言葉を聞いたときにはどうしてこんな奴とつきあったりしたんだろうと思いもしたけれど、男の言ったことはある一面真実だった。

 こういうのってよくあること。そして、よくあることは忘れられることでもある。

 

 

 

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