まだ帰らない家族 独り彼を体に感じたまま リビングのソファーに横になっていた 愛している こんなにも人をいとおしく思ったことはない 離れたくないできればいつまでも彼の側にいたい でも いつかは悲しみに自分が壊れてしまうかもしれない 彼の背中ばかり見ていることに辛くて壊れる だって彼は 彼が愛してるのは城山さんだから・・・・・・・・・・・ 着替えを持ってすばやくお風呂に入った 全て流そう彼の温もりも記憶も お湯の中に体全てを浸し 涙とともに流した 鏡に映る自分に言い聞かせた『忘れな それが一番いい 後で後悔する前に 我慢しな 彼の心は貴女には向いていないよ』・・・・・・・彼にメールを送った『貴方を愛してます けれど 貴方が愛してるのは 私ではない だから 貴方を忘れることにしました』送信した後 私はメールアドレスを変え 彼の電話を着信拒否した 全てが終わる 会社で顔を合わせるのが辛いでもいつかは上司と部下に戻るだろう そう願った。

やはり 戸惑いの顔を彼は見せた 話す機会を求めたが 私はそれを避けた 彼を忘れようとする頭と忘れたくないと悲鳴をあげている心と格闘していたから 彼を避けた これでいいと自分に言い聞かせた 『我慢しな 美里』 瞼に涙が溢れた こらえようと上を向いて涙が流れるのを防いだ 辛い・・・・・好きでいることも諦めるのも・・・・・・・二つの心を両手に持ったとき どっちが重いだろうかと 手を握り締めた 好きでいる心の手を開いた 私は彼の手を離してしまったのだ・・・・・・・・・開いた手を見つめながら階段を下りていくと安川が走りよった 「なぜ!」腕を強く握られ引きとめられた「貴方が好きなのは私じゃないから それが辛いから」安川の手を解く 階段を下りながら「さようなら」と私は彼に告げた 必死にこらえていた涙が頬を伝う『泣き虫になってしまったかな 彼の存在が私を泣き虫にしてしまった 強くならなきゃ!』流れる涙を手の甲で拭った 


安川と会う日が来た 九月の土曜日 その日は旦那と子供たちが野球を見に行く日だった 私はあまり好きではないので 会社の同僚と遊びに行くと言ってある メールがはいる 『病院の駐車場で待っている』 『今から行きます』旦那と子供たちを送り出してから急ぐ 彼の車が止まっている 車に乗り込むと「やっと会えたね」優しく微笑む彼 私の体が少し震えている こんなことは初めてだ 黙って車を走りださせる安川「どこ行くの?」「二人だけになれるところ」車は隣の街まで来た ホテルの地下駐車場に止まる 不安そうに辺りを見る私に「帰りたい?」安川が私の顔を覗き込む無言のまま頭を左右に振る 私の肩を押しやり部屋に入る ドアに鍵を掛け ベットの近くまで誘う 抑えきれない感情が私をベットに押し倒す 少しの抵抗で彼の腕を押して離れようとしたが 逆に押さえ込まれた むさぼる彼の唇 感情を抑えないまま私の服を脱がす 「待って」やっと離れた唇の間から喘ぎながら言った「待たない!」より強く私を愛撫する 体が熱い 神経が痺れていく周りの音も空気も全てが安川だけになる 首筋に這わせる唇 彼の手が服を全て剥ぎ取ると 私の秘密部を優しく愛撫する すでに官能の世界の虜になっていた 体が解ける 彼が私の中に入る 「ああぁぁぁぁ・・・・」「旦那のことは 今は忘れろ俺のことだけを思え」すでに旦那のことなど頭に無い 私の体を這う安川の唇と私の中に入ってゆっくりと動くものだけ 安川の体に絡ませた私の腕に力が入る 彼が激しく私を貫く「あああぁぁぁぁ・・・」大きな揺れが二度三度と私を揺らす 絡み合い激しく愛し合う 抑えることのできない私の喘ぎ 何度も私を貫く彼 止まらない離れることも無く 絡み続ける 二人の大きな揺れが最高の官能に達する 静かに喘ぐ二人 「後悔しないか?」 体を離し タバコを吸いながら背中を向けている私に言う「後悔したほうが いいの?」「バカ」彼の胸に顔を押し当て答えた「私でいいの?」「君が好きになった だから君が欲しかった」心臓の鼓動が早くなる 体のほてりも取れた 「聞いていい?」「なに」「城山さんとはどんな・・・・・」言葉が詰まる「・・・・・・・何が聞きたい」「本当のことが聞きたい 付き合ってるの?」「・・・・・・君も知っているんだろ?」「ええ・・・・・でも・・・・・」「付き合ってるよ でも 今は会っていない」「・・・・・・・」「どうした?嫌か?」「・・・・・・・でも別れていないのね」「もう 潮時かな 長く付き合いすぎた」「別れていないのに どうして私と?」「好きになったから それでは駄目か?」私の心に迷いが生じた 彼はまだ 城山さんを愛してる 「分からない 貴方を好き でも 貴方の心は まだ 城山さんにあるんでしょう?」涙がこぼれた 彼を好きになるのは間違いだったのか・・・・・・・でも引き返せない 彼から体を離そうとする 私の体を引き寄せる 頬に伝わる涙を手で拭う「泣くな 俺は君が好きになった 城山とはもう 会っていない それでも駄目か?」再び彼は官能の世界に私を引き戻した 前よりも激しく私は何度も喘ぎ体が溶けた 体が彼の愛撫に痺れた・・・・・・・・今日だけ その後は 忘れなければいけない 傷つく前に 悲しいけれど 辛い 喘ぎながら頬に涙が零れ落ちた・・・・・・・・・


最近色々考えることが多く いつもより早く目が覚める そんな時 一人で散歩に出かけた すっぴんでいても朝早いから誰にも会わないだろうと 服装も軽く出かける 朝の光を手で遮り空を見上げた時 安川の車に似た車が私の横で止まる「おはよう 早いね」安川だった 「え?!」思わず顔を背け服から露出している肌を隠す「綺麗だよ」笑みを浮かべて走り去る安川 「どうしているの?」どうしよう恥ずかしい・・・・・・・・・・・・覚悟を決めて会社に出る 予想どおり私の顔を見るなり 安川はニヤニヤしていた 同僚の話によれば 急ぎの仕事で昨日から坂井と徹夜で仕事をしていたみたいだ だから 朝早く居たのだ 自宅には着替えに戻っただけらしい どこか疲れが残ったような顔をしている しばらく電話やメールは無いなと思っていた 夕飯が終わり テレビを見ているとメールが入った『何してる?』『テレビ見てた まだ 仕事?』『あと少しで 今日は帰る』『昨日から仕事していたのね 大丈夫?』『眠い でも 今日は 朝からいつもと違う君の姿を見たから 元気でた』『やだ 恥ずかしい 見られたくなかった』『綺麗だったよ 露出度が刺激的だった』『バカ』『あいたい』『私も会いたい』『今度どこかで会いたい 君の全てが欲しい』メールする手が止まった 全て? 体が熱くなり安川の愛撫を思い出してしまった『貴方の全てをくれる?』『あげるよ』『私だけに くれる?』『君だけに あげるよ』『時間つくります 貴方は?』『いつでもいいよ』『その時は 連絡します』『早く会いたい 君が欲しい』『私も 早く 会いたい』『オヤスミ』『おやすみ』体が安川を求めている 唇が乳房がそして秘密部が これほどまでに男を欲しくて思うことは無かった たとえ旦那でも 安川が欲しい・・・・・・・・・・・・
仕事はいつもと変わらない 変わったのは安川の視線と仕事中でも来る メール 『どうした?元気がないぞ』 『真剣に仕事してるんです!』『へー』『バカ!』『バーカ』『会いたい』『今会ってる 仕事で』『バーカ もういい!』『怒るな』『会いたい会いたい会いたい会いたい』まるで 子供の恋愛ごっこを楽しんでいるみたいだった 他の人に見つからないかハラハラした そんな私の行動を安川は楽しんでいた 本当に二人だけで会いたくなった そんな思いがこもる視線を空間に向けた そこに丁度坂井が居た「林さん 熱い視線 俺ドキドキしちゃいましたよ」「え?やだ からかわないでよ」 「罪滅ぼしに コーヒーご馳走してくださいよ」「どおしてそうなるわけ?」坂井が時計を指差した「ただ単にコーヒーが飲みたいだけでしょ?」二人そろって自販機にコーヒーを飲みに行く 笑いながら雑談していると 安川が現れた「坂井 今日中に仕上げないとならない仕事があるんじゃないのか こんな所で息抜きしてていいのか?」ばつ悪そうに仕事に戻る坂井 まだコーヒーの入っている紙コップを私の手から奪い 飲み干す安川「坂井が好きです そんな視線だった」どこかで坂井との事を見ていたのだ「まさか」少し不機嫌そうな顔をして仕事に戻っていった『もしかして ヤキモチ?』ありえない 自分だって城山さんと怪しいじゃない 二人で話していれば私だって嫌よ お互い様だわ!私も仕事に戻り 今日中に終わさなくてはならない仕事の為に 坂井が仕事の手助けを私に頼むと 必ず安川は別の仕事を私に頼んだ 上司には逆らえない坂井は 安川の仕事を優先するように私に告げた 倉庫にしている室で 頼まれた製品を探していると安川がきた 「君に仕事を頼むなんて 坂井は 十年早い」「でも 私も手が空いてたし」私の髪に顔を近づけ髪の匂いをかぐ そのままで「あいつのためだ 一人で仕事させるんだ」そういい残し室から出て行った また体が熱くなる 『バカ 強引なんだから』彼の行動は独占的に思えたが怒るよりも嬉しさを感じてしまった 人を好きになると 心が色々変化する
愛撫が エスカレートして 彼は私のジーパンのボタンを外した 「だめ!」あえぎながら 彼の手を止める「なぜ!」「今は駄目! 誰が来るか分からない・・・・・・・」違う私の心に戸惑いがある このままでは私は絶対に彼から離れられなくなる 嫉妬 ねたみ 独占欲 色々生まれる 引き返せない 「俺はもう止められない!」「だめ!今は駄目!それに ここではいや!」手を止めた安川は さらに激しく 私を抱きしめ 唇から首筋えと 愛撫する 体が熱い 気を失うくらい彼を感じた 旦那には感じなかった快感 私は彼に溺れる 「ああぁぁぁ・・・・!」胸をまさぐる彼の手に 声をたて あえいだ その声に 彼はより強くまさぐる 「か・・かえ・・らな・・・きゃ・・・」声も絶え絶えに 彼に告げる 「駄目だ!帰さない!だめだ お前は俺のものだ!」「また・・・・あ・・・とで・・・いまは・・・・」離れようとした 大きく息をする私の唇を指でなぞる 「また会えるのか?」「ええ 会いたいと貴方が思ってくれれば」「会いたい 別のところでゆっくりと」「でも・・・・・」また城山のことが頭に浮かぶ 「でも 私でいいの?」やはり城山のことは 口に出せない「君が好きになったんだ」軽くキスをすると「また メールする 旦那は怪しまないのか?」「私のことは あまり 関心ないから お手伝いさんみたいなものだから」「いつでも メールしても 平気か?」「大丈夫よ」再び激しいキスを交わし 気をつけて帰りなさいと安川はつげ 仕事に戻った 私は帰る間に体のほてりをとり 心臓の鼓動を和らげた もはや旦那のことなど頭にない 体全てが安川で一杯だった 罪を罪とは思えなくなる ふと ガラスに映る自分の顔を見る その顔は男を求める鬼の顔に見えた 

城山のことは いろんな噂や自分の見た限りで だいたい分かった やはり 安川は城山を好きで何かの関係はある 私の心は深い傷が広がった 愛しても私は気まぐれの女 ただの雑草 悲しい でも もっと悲しいのは それでもいつかは振り向いてくれると信じている私の心 会いたい・・・・・貴方に会いたい 離れたくない 側にいて欲しい バカだ 私はバカだ 不安定な一本の細い糸を渡っている 体に振動が伝わる 『会社にいる 会いたい 今 来れるか?』悩んでいるのに安川からのメールは 来る『大丈夫だけど』『待ってる』『でも』『まってる 来い』随分強引だね 私の気持ちは無視? 城山さんにメールすればいいじゃない!私は貴方の何 私の心を乱さないで 後戻りできない 色々なことを考えても 私は彼の元に急いだ 会いたい 今すぐに 会社で待つ彼の姿を見ると 心臓が私の制止を無視した 母から女になった 抱きしめる彼の行為が心地よく安らぎを得た 離れたくないどんなことしても 快楽に溺れた 抱きしめる腕 むさぼる唇 吐息 私は地獄に落ちた 快楽の地獄に・・・・・・・・・・・旦那に嘘を付いてまでも会うことに幸せを感じる毎日でも彼に会いたい それを 邪魔するやつは許さない・・・・・・・・・




睡眠不足のためか 頭の中が霧がかかっているようだった でも とても心地良かった 悲しみで眠れない夜じゃなかったから 心惑わされた彼のことで眠れなかったから 心は晴れていた 恋を初めて知った少女のような気分だ 子供がいる母親が考えることではないのは分かっている でも 人を愛する心とは不思議なものだ・・・・・・・・・「美里ちゃん お疲れモード?」「え?」城山だった 「ボーってしてるから 疲れてるのかな?って」「ううん 疲れてないよ」「ホントだ 今まで見たことも無い さわやかな笑顔 へーさては何か良い事があって 思い出してたんだね」「やだ!何も無いし 何も思い出してないよ 気のせい気のせい」右手を大きく左右に振る私の行動が不自然になる「怪しいーーー」探るような目で見る城山は 書類を手に 室から出て行く 後ろ姿を目で追う私は 一つため息を付く「バラの花か・・・・・・本当はどうなのかなー二人の関係は・・・・・・・・」独り言を言い自分の心に問いかけた『もし 二人が付き合っていたら 貴女はどうするの?』「どうしようーーー」うな垂れた私の横で声がする「どうかしたのか?」安川だ「あ!あ いいえ何もありません」「今 どうしようって」「ただの 大きな独り言です 気になさらないでください」 ごまかし笑いをみせ その場から離れた ダブルパンチだ 二人のことを考えているときに 二人に話しかけられるなんて 最悪だ・・・・・・コーヒーを飲み 頭の中をスッキリさせた 「また 城山ちゃん 個室で仕事してるよ」同じ課の柳沢の声だった 自動販売機の反対側で同じ課の東野と話している「安川さんに また 仕事頼まれたらしいわよ」『また?』「いつもの事だけど 仲良くするのは 会社の外だけに して欲しいわね」「ホント 見てるだけでも 気分悪い」「あのー」思い切って声掛けた 「あら 美里ちゃん」「今の話なんですけど」「聞こえちゃった?でもいいか みんな知ってるものね あなたもうすうす気が付いてるでしょ 二人のこと」「え・・・・・あまりよくは知らないです 城山さん綺麗だし男の人は嫌いな人いないと思いますけど」「安川さんは特別よ なんていっても 城山さんをずっと見ていても飽きない なんて 言ったことあるんだから 態度だって違うし」柳沢が何か知っているような口調で話す 「二人が会っているのは見たこと無いけど 二人の態度がねー」東野が柳沢に同意を求め二人同時にうなずく「今に分かるわよ 二人を見ていたら」ふくみ笑いを見せる二人が笑いながら室に戻る『やっぱり 安川の気まぐれだろうか・・・・・・・バラの花を見続けていたら ふと 雑草の花に気がつき つまんでみた こんな花もあるのだと でも すぐに飽きて捨てるのかな?』KOだ!立ち直れない 虚ろな視線の先に個室から楽しそうに出てくる安川と城山の姿「書類重い」「ごめん 持つよ」書類を持ってあげている安川『リングに深く深く 沈んだわ』 二人に背を向け 外に出る ゆっくりと深呼吸『バカだな 罪なことすれば 必ず罰は受けるものね』涙が出た いい気になっていた バカバカバカバカバカバカ・・・・・・・・・・・・・・・・・


平静さを装い 自宅に帰る私は 夕飯の後かたずけや色々と動きまわっていた 旦那と顔を合わせるのもできず 何かをしていなければ 妻の顔ではなく 一人の女の顔になりそうだからだ コップを洗っていると 携帯から振動が伝わる 『安川だ』 ・・・・・・・手からコップが滑り落ちる 「おいおい 気をつけろよ」 旦那が少しだけ振りかえり一言言っただけでまたテレビに夢中になる 「ごめんなさい」 割れた破片を拾いながら メールを見る 『カレー美味しかった ご馳走様 怒ってない?俺がしたこと 本気だから』『痛い!』ガラスで指を切る・・・・・・・心臓の音が口から出てるみたいだ・・・・『怒ってませんけど でも・・・・・』城山の事を 文字にしそうになり そのまま送信してしまった にじんできた血を 口元に近づけ ペロリと舐めた 安川の唇を思い出しさらに心臓の音が大きくなる 再び携帯の振動が体に伝わる 『でもなに?俺が嫌い?』『嫌いとかじゃなくて ただ・・・・・・・』どうしよう 文字を入れる手を止める・・・・『みんなが 城山さんのような 人が好きだとか 言ってました』  遠まわしに聞く『城山? 嫌いな人はいないんじゃないかな?でも 関係ないじゃないか君との事は』『でも 私なんて 城山さんに比べたら 花なら バラと雑草ですよ』『バラと雑草?雑草も綺麗だよ 儚げでさびしがり屋で でも 一生懸命生きてるよ』『雑草でも 良いんですか?』『雑草が好きなんだ』『ありがとう』『明日 会社で 遅刻するなよ』『眠れなくて 早く行きそう』『俺の夢を見れば 眠れるよ オヤスミ』『おやすみなさい』 ・・・・・・貴方の事考えたら 余計に眠れません!携帯の文字に向ってアッカンべーした 心の中に宝箱があるとしたら 私の宝箱は安川で 蓋が閉まらなくなった 会いたい 会いたい 彼に会いたい 宝箱にオルゴールが付き 会いたいと鳴る・・・・・・・

睡眠不足のまま 会社に来た 口元を手で隠し 小さくあくびした 携帯の振動 『おはよう』『おはようございます』『他人行儀な言葉は使うな電話でもメールでも』『でも』『また でもか?はい だろう』『はい おはよう』他人行儀・・・・・か・・・・・・他人だと思うな・・・・・・年下のくせに 私に命令するわけ?確かに 仕事では上司だけど・・・・・・暑い日ざしが照りつける空を見上げた 窓に見える安川の姿 優しく微笑んでいた ・・・・・・・・本当に私でいいの?・・・・・・・・・・・彼から離れられなくなった8月初め 暑い夏はこれから続く・・・・・・・・


キッチンで夕飯の支度をしているとき メールが入った 安川だ 『今なにしてるだ?』短い文だし 何してるんだなんて 主婦してるんじゃない・・・・・・『夕飯の支度してます』 『今日は なに?』 すぐに返事がくる 旦那がチラリと私を見たので 音を消し バイブだけにした ジーパンの後ろのポケットに携帯を入れる バイブの振動が体に伝わる ドキドキした 『カレーです 子供が好きだから』 『俺も好きなんだ 食べたいな』『無理ですね まさか 食べに来てくださいとは言えませんでしょ?』『出前 頼むよ 会社にいるんだ』出前?仕事してるんだまだ・・・・・・・『三十分 待てますか?』『出前 してくれるの?』『仕事がまだ終わらないなら』『仕事は永遠に続くぞ』『分かりました 後で』『君が来てくれるまで いつまでも待ってるよ』鍋のふたを開ける手が震えていた ふと旦那に視線を移すと 気が付かずにテレビを見ている 心の動揺が指先に伝わる これって浮気?不倫?バカな!カレーをパックに詰め 旦那には 会社の後輩が まだ仕事してるから 差し入れに持っていくと話した 旦那は何の疑いもなく出されたカレーを子供と食べている「いってきます」 あせる気持ちを抑えて家を出る 出るとともに私は走り出した 走らなくても 安川は待っていると言っていたし 三十分 経っていない 会社の中に入り 明かりの付いている室を次々と安川の姿を探した まさか・・・・・・倉庫代わりの室のドアを開ける 明かりは付いていない 「いないか・・・・・・」 ドアを閉めようとしたら 中から安川の腕が伸び私の体を抱き寄せる 突然のことと暗闇で 私の体は硬直した 「おどろいた?」「なにをしてたんですか?こんなところで」「窓から見ていたら 君の姿が見えたから 驚かせてやろうと思って」「子供みたい」腰に回された安川の腕が熱い・・・・・・・・「これが 君の作ったカレー?」持っていた袋を左手で受け取り そのまま私を抱きしめた 「会いたかった」 耳元で囁いた 安川の唇が頬に優しく触れる 体がビクッとして 離れようとしたが 安川の腕の力で 動けない 安川の唇が 私の唇に重なる もう後戻りできない・・・・・・・・

<・・・・・・・・・・・2005年10月25日 彼は 私から離れて行った 私が二人の愛を 壊したから 愛しすぎて 壊してしまったから できるなら もう一度 彼に出会った頃に戻りたい ・・・・・・壊れてしまうことが分かっているなら 愛してしまう前に 戻って 私に問いかけたい 壊れてしまうけどそれでも彼を愛しますか?・・・・と・・・・・・>

 



ランチタイム 職場のみんなでわいわい騒ぎながら 食事をした 普段は仲がいいたとえ裏で色々な噂をしても みんな役者だ ニコニコしている 話も服の話や食べ物のことや旦那の愚痴ばかり 楽しそうに笑っている 仲がいい 上辺だけは・・・・・・・ 私は食べる手を休め 携帯の電話帳登録に安川の名前を登録した 複雑な気分だった 『どうして私を・・・・・・・・・』 なにも映らない瞳が 遠くに視線を向けていた 「どうかしたの?美里ちゃん」城山の声だった 一瞬に心臓の音が大きく鳴った 「え?」「美里ちゃん 具合でも悪いの 食欲だけは人一倍あるのに 今日はあまり食べないから」「あ!ああ別にどこも悪くないよ ただ 人生に疲れたのかな?」「えーーーーー」「あははは・・・冗談 脳天気な私が疲れるわけないじゃない!」「やだ!美里ちゃんは いつも冗談ばかり言って」「冗談で生きてますから」「まったく美里ちゃんたら・・・あ ごめんなさい 年上なのに 美里ちゃんて呼んじゃって」「ううん 嬉しい 前のところでもそう呼ばれてたから」「この前 三課の坂井さんと美里ちゃんが話してた時 そう 呼んでたから」「ありがとう うれしい」「二課はもう馴れた?」「うん だんだん慣れてきた」「周りの人も?」周りの人の言葉には 色々な意味があるのだと感じた 「仕事よりなれた」私はふくみ笑いを城山に見せた まさかこの時から 城山に個人的に関わるとは思いもしなかったのだ・・・・・・・・・・・安川がいるから・・・・・・・・・「林さん」安川が呼んだ「はい」「この製品を管理部長の所まで持っていってくれ」「はい」立ち上がる私の腕をつかみ 「重いものを平気で頼むんだから うちの主任は 楽な仕事はいつも城山ちゃんでさ」城山と一番仲のいい村木が耳元で囁いた 苦笑いして 私は製品をもち室を出た 確かに重い 『好きな人は 特別扱い・・・・・・か・・・』 一つため息をついた 『私は特別じゃないわけか・・・・・・安川に関わるのやっぱり止めようかな・・・・・・もし本当に二人が浮気していたら?何故安川は私に近づいたの?二股?それとも安川が単に女好き・・・・・・・?』大きくため息 落ち込んだ 誰もいない階段で製品を持ったまま座り込んだ 「どうしようーーーーなやむなーーーー」製品に顔を埋めた「どうした?やっぱり重たかったか?」「え!」階段の一つ上から安川が私の顔を覗き込む「いいえ 大丈夫です」立ち上がり歩き出そうとした私の前に回り 持っている製品を私の腕ごと抱えた 手を離そうとした私に「無理だなこのままじゃ離れられないよ」安川の顔が直ぐそばにあった 息が耳元にかかる 「だったら 安川さん離してください」「重そうだから 持って行ってあげようとしてるのに」「平気ですから 力だけはありますから お金は無いけど」安川がハハハハ・・・・と笑った「面白いな君は そうやっていつもみんなで笑っていたのか」「あのー」腕を抜こうとしている私に気づく 安川の腕の力が抜け 背中が壁に付いた形になる 「行くぞ」バカにされたのだろうか 満足そうにニタリと笑いながら私の横をすれすれに通り過ぎて行く 関わるのは止めようと考えている時に彼が現れてしまえば また 心の入れ物が安川で一杯になってしまう・・・・・『安川さん 貴方はやっぱり 罪な人だ!』