一ヶ月過ぎて城山が会社を辞めた 辞める前「あの人ね 美里ちゃんと二股じゃないって言ってた やり直したいって言っても 嘘ばっかり・・・・・・だから 会社辞めるんだ 前からやりたかった仕事があったから そっちに行くんだ三月から あの人のことは初めて嫌いになった 美里ちゃんもあんな人なんて相手にしないで頑張ってね 今までありがとうね こんなことが無ければ ずっと仲良く出来たのにね・・・・・・」といって 電話が切れた 城山は多分 五十嵐のことより 私のことが許せないのだろう 少しでも私が安川に優しくされたのが気になるのだ・・・・・・・・・ 安川は城山が辞める間際まで知らずに居た 仕事が一緒になった時私は「城山さんが辞めてしまうのは 私が悪いの?」そう問いかけた時 引き止めた私の手を振り切り 去っていった 瞼には涙が溢れていた「泣くほど好きなら どうして城山さんだけ好きで居なかったのよ バカ!」 会社にいることも忘れ 安川に投げかけた 「男なら 泣くなバカ!」・・・・・・・・泣きたいのは私のほうだ 女のために死のうとし 土下座をし 涙を流した 私には二人に関わるのはお門違いだった しかし 城山に頼まれたことがある 五十嵐の仕事の移動と 二人の関係が続いたのなら 奥さんに電話して 安川が辛い思いをするようにと 辞めていく前に頼まれた 「美里ちゃんにしか頼めないから」と・・・・・・・・・・嫌なことはみんな私の役割なのだ 最後まで城山はいい子で居たいのだ 

私は たびたび電話をして 五十嵐の移動はまだかと問い詰めた 五十嵐の『私は 何もしてません』と言いたげな態度が気に入らなく『みんな傷ついたのに あの人だけ 何も無いような態度ね 上司なんだから 大人しくするように 言ったら 目障りだから』と 彼に辛くあたった そうすることで私は 彼を嫌いになるきっかけを探し 彼に嫌われてしまえば楽になると思い始めていた 『上の人間にばれてるのに よく平気でいるね 俺がいるから 心配するなって言ったんじゃないの?』『そんなこと 言わないよ 仕事以外の話もしないさ』『どうかな もう一度 やり直したいとか 遊びって言ったのは嘘だったとか 言ったんじゃないの 城山さんがいなくても 全て話しはメールしてるから これ以上城山さんががっかりしないようにしたほうがいいよ』『城山のことは もういい そんなに怒るな 俺も五十嵐がいると胃が痛くなる 離れたいさ』『どうかな?そんな言葉信じないから!』 私は本当に嫌な女になった 鏡を見ればきっと嫌な人相をしているだろう デモ アノヒトエノタイドハカエナイ マタアイシテシマウカラ・・・・・・・・・・・・・・・・・



希望の年が明けても 私の心には喜怒哀楽が無い 人生という台本を棒読みしているみたいだった 感情をなくしてしまった 無駄に毎日を暮らしている 会社に居ても ただ言われたままに仕事をこなし 安川には会わないようにしていた ただ時々姿を見かけることがあったが 安川の顔色がよくなかった 五十嵐といえば 以前よりは大人しくなったが 私たち三人が受けた苦しみほどダメージを受けていないようだ むしろ『遊びだった』と言われた事など 忘れたかのような態度だった 「もしかしたら もう一度 電話して 誤ったかもね」城山に五十嵐の変わらない態度をみて私は告げた「えー まさか そういう人かな?安川さん」「そういう人だから こんなことになったんじゃないの?」「そんな人じゃないと 信じてたのに 最低! ぼろぼろにしてやりたい!」私は 早く忘れるために 安川を憎もうとした 未練を残したくない そうしないと前に進めないから 城山は みんなに安川と五十嵐のことを 会社の人間全てに噂を流し 会社にいられないようにしてやりたいと 私に告げた 私に身近な人から話して欲しいと頼んむ 城山はあくまでも自分の手は汚したくないらしい 安川には 嫌な女と思われたくないのだ・・・・・・・・・・噂はたちまち広まった 話題性が無かったからか 安川や五十嵐の姿を見るなりひそひそ話を始めた 安川はそんな人たちの態度に気が付き 心を痛めていた しかし 五十嵐は相変わらず何も無いような態度だった 「あの人の神経って 分からない 平気なのかしら」城山が首をかしげる「もしかしたら 安川さんが気にするなとか 俺が付いてるから大丈夫だとか 言ったかも知れないわね」「私 奥さんに電話してやろうかな?」「え? するの?」「このまま 何も変わらなければ 電話するかも・・・・・・・・」「安川さん どうなるかな?・・・・・・・」「どうなっても構わないんじゃない?自分が悪いのよ」「今度 安川さんと一緒に仕事することが在るけど どうするの?」「美里ちゃん 代わってよ あいつね この間 もう一度やり直したいって 電話してきたから あんたと話す気にもなれないって言ったら それから 電話してこなくなったの 何度か電話すれば話ぐらい聞いてあげるのに 失礼だよね だから あの人の電話 着信拒否にしたの 二度と話したくないから お願いね」プライドの高い城山は 以前愛していた男を軽蔑し罵った 私はそんな城山に聞きたかった 『貴女は本当に安川を心から愛していたの? 貴女が愛していたのは 自分のことで 自分だけを愛してくれる安川がいることに 優越感を感じていただけではないの?」と 嫌いになろうとしても嫌いになれない 憎もうとしても憎みきれない そんな苦しんでいる私とは違うのだ ときどき仕事で一緒になると 安川はなぜか私に優しかった 重い荷物を運んでいれば黙って運んでくれたり 色々なことがありすぎて胃が痛く誰にも見られずに薬を飲んでいても どこで見ているのか 「無理するな 具合悪いなら 帰ってもいいんだぞ」と声を掛けた 以前ありえないことが起きている 常に彼の視線が私に在るのだ 『お願いだから 貴方を嫌いにさせて』声にならない叫びが安川の電話の番号を押させた「どうした?」代わらない安川の声「私に関わらないで 私がしたことは 貴方を追い詰めているのよ 私に優しくしないで 貴方を忘れたいから」「何か あったのか?」「別に 何も無いわ 私に優しくする前に 城山さんともう一度やり直したいなら きちんとケジメ付けたら? 私はもう 独りでも 大丈夫だから」「泣き虫の癖に」「いい!二度と優しくしないで 仕事以外の話もしないで!」溢れる涙を抑えた どうしてこんなにも嫌な女になったんだろう?・・・・・・・・どうして 好きな人に酷いことが言えるようになったんだろう・・・・・・・・・・・・

23日は祭日出勤だった 本当は休みたかった 安川の顔を見るのが辛い 電話して 遅れて行くと告げた 総務部長には 全てを話した 処分は会議を開いてからになるだろうと言っていた 安川は会社にとって重要な人間だから 五十嵐を何らかの形で処分するだろうと言った 私は 心の隅で安川が処分されないことを祈った どこまでもバカだなと自分で情けなく思う 会社に出ると やはり安川は 目をそらした その代わり 五十嵐が安川を見て 嬉しそうにニコニコと笑い返していた 何度も何度も 『五十嵐さんとは何でもないよねと』 問い詰めていた私の感が当たっていた 『うそつき』心の中でそうつぶやいた 耐えられなかった 仕事など手につくはずが無い 具合が悪いといい私は家に帰った 立っていられるのが不思議なくらいだった 力なく ソファーに横になっていた 何も考えられなかった 時計の音だけが心に響く 何度も何度も安川と五十嵐の影が思い浮かぶ 忘れたいと何度も頭を殴る しかし 心の痛みのほうが強い 陽が沈み 部屋の中が暗くなる 時計を見るとすでに時計の針が6時をさしていた 重い体を動かしいつもの生活に戻る 夕飯の支度を始めた 買い物などしていないので 冷蔵庫の中をのぞいた 旦那と子供たちが出かけていてよかったと安堵した 携帯の呼び出し音 安川だ 「はい」 「城山に話したのか?」「話したよ」「どうして 信じてたのに」「信じてた?何を?私だって 信じてた ずっと 五十嵐さんとは 何でもないよねって 聞いたじゃない」「あいつとは 遊びだ」「どうでもいい もう どうでもいい」「悪かったな 俺が全部悪い 全部持っていくから」「どういうこと?」「今まで すまなかったな 辛い思いさせた」「良いよもう どうせ遊びだったんでしょう?」「違う!好きだって言ったのは本当だ」「どうでも良いですもう 私がバカだった」「ごめん 俺が全て責任取るから 悪かったな」「どう言うこと?」嫌な予感がした いつもの安川らしくない 声も乱れている 「どこにいるの?」「言えない」川の流れる音?「死のうとしてないでしょうね!」「俺 もう疲れたよ 疲れた」「どこにいるの?」ツーツーツー電話が切れた何度掛けなおしても出ない 城山に電話した「安川さん おかしいの 死ぬかもしれない どうしよう」「死ねば良いんじゃない?」「でも お願い 電話してみて!」ほんの数分が永遠に感じた 城山から返事が来た「大丈夫だわ 明日はちゃんと仕事行くって 心配してるかもしれないから 美里ちゃんに伝えてって言ってた」「よかった」「まさか 美里ちゃんに電話するなんて 最低だね」「話したの?」「今日の 帰りに たまには食事に行こうかなんて電話してきたから 言ってあげたの 私の前から消えてって」「だから 安川さん 死のうとしたんだね」「どうかな 立場無くなって どうにもならなくなったんじゃない?」「でも・・・・・・・・・」「とにかく 明日は 会社休まないでね 美里ちゃん また明日ね」 頭の中がグルグル回っていた 私は何だったんだろう 城山のために死のうとまでするなんて だったらどうして私に声掛けたの? 結局 安川が愛していたのは 城山だと 改めて思い知らされた・・・・・・・・・・・・・・

 城山の怒りが収まらなかった 会社の人間全てに噂を流し安川の立場を悪くして安川をぼろぼろにしてやりたいといい始めた 25日の土曜の日に 三人で会った 城山が話した「2年前から 美里ちゃんと付き合っていたんですってね 私と二股だったんだね」「違う」「今度は五十嵐さんだなんて 私 自分には 自信があったのに あの人と一緒にされたくないは」「遊びだった」「美里ちゃんは?」「遊びだった」安川の言葉に私は自分を笑った バカだなと やはり 城山のことばかり 見ていたのだと 私の入る隙間はない 多分 五十嵐のことは 城山と会えなくなった 寂しさを紛らわすため 私は多分 都合のいい女 「五十嵐さんに 電話して 遊びだったって言いなさいよ」言われるままに電話する安川「遊びだった すまない 会社のことは 俺から説明する・・・・・ああ ・・・・・・・そうだ遊びだった・・・・・・」どんな 会話をしたのか分からないが 『遊びだった』の言葉は耳に入った 心がもう何処かに行ってしまった 今は心の空白をどうしたらいいのか 途方にくれている 「子供が大きくなったら お互いに離婚して 一緒になろうって言ったのも 嘘だったんだね」「違う!本気だ!」「別に いいから どうせ私のことも遊びだったんでしょう?」「違う!」「無駄な時間を過ごしたんだね」「そんなこと言うな!」「一番可哀想なのは 美里ちゃんでしょ 土下座して!」言われるままに安川は土下座した そんなにしてまで城山を愛しているのかと 私は 土下座する安川を見ないように手で顔を覆った・・・・・・・・・・・・・・・・さようなら私の恋心・・・・・・・・・・・・・・・


寝室で独り 携帯電話を握り締めた 幸い 旦那はテレビに夢中になっている 城山の携帯掛ける 以前から電話やメールで 色々な話をしていた 今度はどんな情報が得られるのか 城山はワクワクしながら電話に出るだろう「はい」明るく電話に応答した「城山さん?」「何?美里ちゃん」「今 話していても 大丈夫?」「大丈夫だよ」「城山さん 安川さんと 付き合っているよね」「え?」「私も付き合っているんだ」「ええ!」「今日 安川さんと五十嵐さんが キスしてるところ 見たんだ」「なにそれ?」「城山さん 安川さんと 付き合ってるよね 安川さんから聞いたんだ 付き合ってるって」「付き合ってたよ」声の色が変わった やわらかさが無い 心の強い女の声だった「付き合ってた?」「今は 会っていないから」「え?」「五十嵐さんとホントにキスしてたの?」「嘘じゃない 五十嵐さんが帰った後 追いかけて聞いたの 何でそんなことしたのって 遊びだからと言って 突き放された 」「ばっかじゃないの! 何それ! 信じられない!」「でも見たんだ」「美里ちゃん いつから 付き合ってたの?」「二年前」「二年前?」「夏の花火大会の 後に 好きだって」「それって 私とダブってたってことよね?」「そうね」「信じらんない」「時々 会ってた 忙しいからと言われて 会社で・・・・・・・」「会社で会ってたの?」「夜 誰も居ない時に」「へー」「だから 今度も会いに行ったら 五十嵐さんと・・・・・・」「あの男 バカじゃないの!」きつい言葉に私は 戸惑った いつもの城山らしくない 「悪いけど 私 今 彼と会っていないのよね 奥さんにばれて 別れたんだ」「え?」「メールしたら 彼 いつもは私のメール 消すのに その時は 消すの忘れて 奥さんに見られたの 結構 奥さんて用心深くて 彼の携帯何時もチェックしてるのよね それで 奥さんと両方の親の前で 私は土下座させられたの 旦那を取った悪者として」「えーそんな・・・・・」「去年の 九月に 別れたの」「別れた?」「今でも 彼から電話が掛かってくるけど 出ないから」「どうして? 土下座までして 安川さんは?」「彼? 居たけど 別に 何も言わなかった 奥さんには頭上がらないから」「そんな・・・・・・」「彼ってね 何時も 威張ってるけど 問い詰めたりすると 弱いのよね」「えー・・・・・・」弱弱しい誰かに守ってもらうような城山が頼もしく思えた 「それで 彼 美里ちゃんに 何て?」「嫌なら 離れればいいって」「バカみたい 彼 貴女に 甘えてるんだは 情けない!」「でも 私も 色々あって 安川さんが支えだったから」「だからよけい 甘えるのよ! バカな男! 許せない!」「私ね 総務の部長 知り合いだから そのこと話そうかと 思って」「いいんじゃない 会社辞めればいいのよ 目障りだから」「それで いいの? 好きだったんでしょ?」「時々 会いたいなーって思うけど 今は嫌いかな」「そうなんだ」「美里ちゃんも あんな人 忘れたほうがいいよ」「今は 何も考えられない」「そうだよね 嫌なとこ見ちゃったものね」「ごめんね 変な話で」「気にしないで また 明日ね」そっけなく電話が切れる 嫌な思いしているのが分かった 私の存在が気に入らないらしい 五十嵐さんのことなど そっちのけで私のことを聞いていた・・・・・・・・・・彼女のプライドが許さないのだろう私の存在が・・・・・・・

安川が 別の部署の係長になった 出世したのは嬉しいが 離れてしまった おまけに 経理から移動になった 五十嵐敏江が安川の部下になった 彼女は色々と問題の女らしい 安川より8歳年上だが 仕事はいい加減で 尻軽女だと噂されていた 若い男を見ると 必ず飲みに行こうとか ゴルフに行こうと誘うのだ 五十嵐の旦那は 出張が多いらしい だから暇をもてあましているらしい 心配だった 安川と常に側にいる 年甲斐も無くチャラチャラしているからだ 安川に対して『安川く~ん』と呼ぶような女だ 私が仕事をしていると時々顔を出してくれるが 五十嵐が一緒の時もある そんな時はついつい顔色が変わるのが分かったらしく「俺何かしたか?」と すれ違いざまに言う「五十嵐さんといつも一緒だから 一緒に居たくてもいられないのに あの人とは何時も一緒 世の中不公平ね」「仕事だから仕方が無いよ」「そのうち 好きだなんて 言ったりして」安川の返事を待たずに 足早にその場を去った ヤキモチと不安が渦巻いた 嫌な予感がしたのだ 会社が休みのときでも 二人で仕事をしているらしい 直ぐに噂は広まる 五十嵐は安川の専属の秘書だと言われている 安川も何かにつけ「五十嵐 五十嵐」と全てのことを五十嵐に頼んだ 私が近くに居ても 遠くにいる五十嵐を呼ぶ 私の姿など目に入らない様子なのだ しかし 城山のことは忘れない 忙しくしていても視線は城山に向く 風邪を引いて咳をする城山を見て 「大丈夫か?無理するな」と声を掛ける やはり 私の不安は当たった 安川はやはり私との事は気まぐれだったのだと・・・・・・・・・・・・ 会社の忘年会の時も 遅れてきた安川を外で待っている五十嵐の姿があった 「どうしたの?待ってたんだよ遅いから 電話しようとしてたんだよ」「仕事してたんだろ」・・・・・・明らかに上司と部下の会話ではない その後から遅れて入っていく私のことなど分からずに中に入ってゆくのだ 女の感は当たるのだ嫌な予感がした 会社のゴルフ大会にも一緒に行っているらしい 休日に仕事をすれば 他の部署の坂井を誘って三人でお昼を食べに出かけたりもしているらしい 坂井の場合 だしに使われているようなものだった・・・・・・・・・・噂だからとか仕事だからとか 何度も自分に言い聞かせた 時々安川にも 誰も居ない会社で ほんの短い時間でも二人きりの情事を繰り返し 不安を消そうと安川の愛に答えた 頭から城山と五十嵐を消すために 激しく燃えた・・・・・・・・・・・そんな不安の中 一年前の12月22日 私は地獄に落とされた 会いたいと思う気持ちが 私を会社えと導いた 会社の駐車場に着いた時だった 外灯の下で 安川と五十嵐の姿があった 私は とっさに塀の陰に隠れて 二人を見ていた「だって 中山さん嫌いなんだもん」 すねる様な五十嵐の態度 「しょうが無いだろう 仕事なんだから」「やだ」「やだじゃないだろう わがまま言うな」「わがまま言わないから キスして」安川の首に腕を巻きつけ キスをせがむ 何の抵抗も無くキスする安川・・・・・・・・足元から何かが崩れていった 体が振るえ 自分の目を疑った 夢であって欲しい 目を閉じてあけた時には何も無く 悪い夢を見たと笑えるような・・・・・・・・・・・しかし 目に映るのは バイバイと嬉しそうに手を振る五十嵐の姿だった 五十嵐が帰った後 私は安川の後を追いかけた「全部見たから」驚いた安川に 大きな声で言った「何?」「五十嵐さんと キスしてた どうして!」「してないよ 目にごみが・・・・・・」「言い訳しないで!みんな見てたから どうして!」「遊びだよ」「遊びで キスするの?」「ごめん もうしないよ」「信じられない 私との事も 遊びなの?」「違う!」「違うなら どうして 平気でキスできるの?」止めどなく涙が溢れた 私の支えが無くなった 信じて愛してきた人は今偽りの世界へと姿を変えた「今日は 帰れ 仕事がまだ残っている」安川は私を置き去りにして行ってしまった 家に帰りながら 安川に電話した なかなか出ない 何度も掛けなおし 五回目の時出た「何?」「五十嵐さんが好きなの?」「好きじゃない」「じゃあ どうして?」「遊びだ」「付き合ってるの?」「違うただの遊びだ」「信じられない」「嫌なら 俺から離れればいい」「離れられないの知ってるでしょう?」「・・・・・・・もうしないから・・・・・・忙しいから」電話が切れる 耐えられない心の痛みが私を襲った・・・・・・・・・・・・・・・助けて・・・・・・・・・・



彼の存在が これほどまでに大きいのかと 自分でも驚いていた 家庭でも 旦那のイライラしている顔など気にせずに 全ての家事をテキパキとこなし 会社でも他の上司に褒められるほどにミス無く仕事をこなしていった 彼が居てくれる彼が心の支えになってくれると思うだけで 心も体もウキウキしていた 毎日が楽しかった 会社の噂では 彼と奥さんとの仲もあまり上手くいってないらしい 子供を連れて実家に帰っていると聞いた 実際彼から聞いたことではないが 彼が家に居てもメールが着たり電話が掛かって来たりしていた 普通なら電話で話すことなどできないのだから・・・・・・・・・・「会いたい 側に居て欲しい」旦那が残業で遅い時 電話した「会えるよ 会社にいるときだって 君を見てるから」「でも 仕事の話しかできないもの」「しょうがないだろ 監視しているおばさんが 沢山いるんだから 噂好きのね」「城山さんに見られたくないんでしょ?」「ばか」「会いたい」「今度会えるよ」「ホントに会える」「会えるから 心配するな」「分かった」「旦那には あまり逆らうなよ」「うん 分かってる」「おやすみ」「おやすみなさい」・・・・・・・・電話を切ってすぐにメールが届く『綺麗な月が出てるよ 見てごらん』外に出て 空を見上げた 澄んだ夜空にまん丸の月が出ていた「綺麗・・・・・・・」『綺麗 今日は綺麗な月と 貴方の夢を見ながら眠りたい』 穏やかだった 幸せだった 人を愛すること愛されることこれほどまでに幸せだと感じたことはない ・・・・・・・・・・・でも その幸せは長くは続かなかった やはり 会社での私の行動が目に付くのか 口うるさいお局様には目の上の瘤なのだ 誰かが自分より仕事をこなしたり褒められることが 目障りなのだ 陰険ないじめがある 噂話に花が咲き 話一言で悪者にしたがる 仕事のミスをさせようとするのだ 会社に何しに来ているのか分からない 安川もどうすることもできず 『気にするな』と声を掛けてくれるのが 精一杯だった それは仕方の無いことだと理解できる 組織の中にいるからだ 私事では解決できない・・・・・・・・悪いことは続けて起こるもので 彼に電話やメールが自宅にいるときはできなくなった 彼の話では奥さんが最近の彼の様子が変だと言い出したらしい 浮気でもしているんじゃないかと疑っているらしい 『私?』と思った 最近?・・・・・・『城山さんの時は どうだったの?疑われなかったの?』 私はそう思った とにかく家にいるときは 電話もメールも出来ないと安川が言った 少しの間だからと付け加えた 多分しばらくは 彼に会えないかもしれないと感じた 女は敏感だ 少しでも私と何かあれば 疑われるだろう 私は 奥さんに私とのことがばれて 会えなくなるよりは 今だけでも我慢しようと 寂しくても 元気でいた また 二人だけで会えることを信じて・・・・・・・・


私だけを見て欲しいと思う気持ちは 逆に 心の中に嫉妬心が生まれるものだった 何気ない安川と城山の会話を 見てしまうと私にはそんな優しい表情を見せたこと無いとか 常に何かあれば城山を呼び仕事をするのも一緒だったりすると やっぱり仕事の時も一緒に居たいのだと 私は遠くから不安を抱く と 同時に城山さんがどこかに行ってしまえばいいと考えていた でも 神様は悪戯が好きなのだ 諦めたほうがいいのかと思う時 独りでいると安川が近づいてきた 若い新入社員の田村とバカな話をして笑い転げている時も「田村 まだ 会社辞めないで頑張っているのか?」と二人の間に割って入ってきた いかにも見た目にはヤキモチを焼いているようだった 私の気のせいかと思っていたが 必ず 男性社員と話していると 嫌な顔をして見ていた 私もバカだった そんな安川の態度を見て 優越感にひたり 少しは私を見ていてくれるのかと幸せな気分になった だから私は安川から離れられない・・・・・・会話の無い沈黙の中家にいるのは苦痛だった 会いたい安川に会いたいと思う気持ちで一杯だった そして神様はまたも悪戯をした携帯の振動が体に響いた安川のメールだった『会いたい 今会社にいる 誰も居ない 今会えるか?』『大丈夫 直ぐに行きます』直ぐに私は家を出る口実を考えた 旦那に怪しまれない方法を 「あ!はい え?書類?はいできてますどこにあるのか分からないのですか では今から行きます 大丈夫です はい」電話がかかってきた振りをして 一人芝居した「会社から呼び出されたから 行ってきます 必要な書類があるみたい」旦那は私の話を聞いていたが 好きにすればいいと言いたげな表情だった 「行ってきます」私は急いで家を出た 玄関を出たと同時に走り出した 会いたい会いたい・・・・・・・・会社につき安川のところに会いに行く 私の姿を見るなり室の電気を消した 携帯の明かりを頼りに 倉庫代わりになっている室に私を連れて行った 中から鍵を掛け携帯の明かりの元 安川が私を抱きしめ強引に私を愛撫した 息がすえないくらいのキス 首筋をはい右手の指がボタンを外し肌が見えてくると首筋から乳首えと 唇を這わせた 「ああああああ・・・・・・」私の体が熱くなる 私の体を床に押し倒し ズボンのチャックを外す 安川自身も肌をさらけ出していた 「誰か・・・・来るよ・・・」安川の愛撫を止めようとしたが「誰も来ない!」余計に激しくなる 「あああああ・・・あー」安川が私の中に入ってきた 安川の唇が 私の唇を感じさせ 乳房を噛む 二人は夢中になり 大きく揺れた 何度も何度も突き上げる安川 私の甘美の声と大きな波に酔いしれた 官能の世界に二人で愛を確かめ合う 「会いたかった」大きな波が静かに消えてゆく時 安川が服の乱れを直しながら言った 「私も会いたかった でも 貴方を諦めようとしていた」「なぜ!」「だって城山さんがいるんだもん」「城山は関係ないだろ これは 君と俺の二人の事だから」「でも」「もう何も言うな 君に会いたかったから君に連絡したんだ」「うん」「また連絡する 旦那は大丈夫か?」「大丈夫 ホントにまた合えるの?」「会えるよ 連絡するから 気をつけて帰るんだぞ」「うん」「オヤスミ」「おやすみなさい」かるくキスを交わし 会社を後にした 再び会社の電気がついた 窓から安川が見ていた 小さく手を振った 体が雲の上を歩いているようだ 愛撫の余韻が体をとろかした また会いたい スリリングな情事・・・・・・・・・・・・・

やはり 夫婦の会話が無い 子供には心配させないためにも 平常心を保っているが 子供は敏感だった いつもより聞き分けがいい 親の顔色を伺っているようだ 母親として失格だった 心の中で『ごめんね』と 謝った 今はどうすることもできない お互いに不振を抱いたままでは 元通りにはならない 所詮夫婦は他人同士なのだ 気に入らないことがあれば 反発する それを乗り越えれば 寄り添って人生をお互い助け合って生きていける・・・・・・・・・今の二人には壁ができてしまった 

会社では安川が心配そうに見つめていた 大丈夫だと笑って見せたが 顔が引きつっているのが自分でも分かった これでよかったのだろうか・・・・・まだ 城山さんとの事は終わっていないだろう 時々見つめる安川の目が全てを物語っていた 『まだ愛している』と 二人の姿を見るたびに後悔した 救いを求めるべきではなかった・・・・・・・・だけど 今の私には彼が居ないと 駄目になりそうで怖かった 最近では旦那が眠った後に独りで酒を飲むようになった 安定剤のように 夕飯の用意をしながら隠れて飲んでいた しらふではとても家にはいられない またいつ 旦那に殴られるかと思うと 体が震えた・・・・・・・・・もし殴られてもアルコールで痛みが半減する 痛みの神経を麻痺できるだろうと考えた楽しく飲むものではなく 悲しみの酒だった 時々飲みすぎて会社で胃薬を飲むことが多くなった それをどこで見ているのか 安川が誰も居ないことを確認しては私に近づき「具合わるいのか?また何か旦那とあったのか?」と 話しかけた あまり辛いところを見られたくなく「食べすぎかな?」といってごまかした「ばか 無理するな 辛い時は辛いと言うんだ 何もしてやれないけど そばにいるから」 「うん」 幸せだった 支えてくれる人がいる そう感じたとき旦那との喧嘩もすべて 耐えられた彼が居てくれる そう思うだけで元気が出た 自分でも笑ってしまうくらい気持ちと体が楽になった そんな時は城山の存在も忘れられた でもその反面城山には彼を渡したくないと思う独占欲が生まれた 『私だけを見て欲しいと』 欲望が心の中に入り込んでゆく・・・・・・・・・・・・・


最近 私たち夫婦の間に溝ができていた 細かいことに怒鳴るようになった旦那 怒鳴られると冷めてしまう私 感情の無い言葉そんな私をみて余計に気にいらないのかどんどん色々な愚痴をいう 子供の教育ができていないとか 最近料理らしい料理していないとか 落ち着いて考えれば些細なことなのだが 一度溝ができてしまうとそれは大きくなる埋まる事はない 特に喧嘩が多いのは 子供のことだった 子供も迷惑に違いない 父親と母親の喧嘩など見たくない 今では夕飯を食べ終わると自分の部屋に入ってしまう 「最近 お父さん 怒りっぽいね」上のこの言葉だった「お父さん 仕事で疲れているから仕方が無いのよ 許してやってね」子供のほうが優しい・・・・・・・・・・・そんな子供の優しさも無駄になった 仕事で疲れたから先に休みますと寝室に行きかけた時 私の態度が気に入らなかったのか 追いかけてきて「仕事で疲れただと そんな仕事辞めてしまえ 俺一人で生活できるからな!」「辞めろって 何いってるの?家のローンだってあるのに ローンが無くても 仕事は辞めません」「なに!そんな口の利き方をして 何様のつもりだ」旦那の右手が私の頬を打つ 反動で私は床に倒れた「殴って気がすむなら 殴ればいいでしょう!」どうにでもなれ!と思った 溝は埋まらない 怒りに任せて旦那は私の背中を蹴った 悲しかった体の痛みよりも 心の痛みに耐えられなかった いつから間違った道に入ってしまったのだろう いつから 夫婦のすれ違いができたのだろう・・・・・・・・・・『助けて 私を助けて これではあまりにも辛すぎる』知らないうちに彼に救いを求めていた 私をそのままにして 旦那は出かけてしまった ポケットに入っていた携帯電話の数字を押す090・・・・・呼び出し音一回で電話を切った『何してるんだろう 安川に電話してどうしようとしているんだろう・・・・・」携帯の画面をしばらく眺めていると着信があった 着信履歴をみると安川だった しばらくためらっていると 何度も掛かってきていた 救いを求めて電話を掛けた「どうした?」優しい声だった「すみません・・・・・電話して・・・・・」言葉が詰まった 声を立てて泣いてしまった「何かあったのか?泣いてたらわからないよ」「旦那と喧嘩して 殴られて・・・・・・」「どうしてそんなことに・・・・・・今どこにいる 旦那は?」「今家に居ます 旦那は出かけました どこかで飲んでると思います」「大丈夫か?」「私バカだから 殴りたいなら殴ればいいって そしたら 蹴られて・・・・・・・」「バカだな どうしてそんなことを言うんだ 自分を大事にしなきゃ駄目じゃないか」「だって・・・・・・」「だってじゃないだろ?旦那を怒らせちゃだめだよ」「うん」「痛むか?」「大丈夫」「何度も電話したんだぞ」「着信拒否してたから」「ばか どうして?」「辛かった 城山さんがいるから」「城山とはもう会っていない 心配するな 君を好きになったのは 嘘じゃない 」「でも」「遊びじゃない 本気だから 信じろ」「ホント?」「大丈夫だから」「うん」「今日はゆっくり休むんだ 悪いことは考えるな いいな」「分かった ごめんなさい 電話して」「いいよ 君からの電話待っていたから 嬉しいよ」「ありがとう」「オヤスミ」「おやすみなさい」・・・・・・・・・・・・旦那のことなんてどうでもよくなった 好きにすればいいと思った 私には彼が居てくれるからと・・・・・・・・・・・


仕事中 私は彼を完全に無視することにした それで 忘れることはできないのは分かっている でも それしか方法は無かった 嫌われてもいい 嫌な女だと思われてもいい そうしなければ 私は彼を求めてしまう心が今でも悲鳴を上げているから『会いたい会いたい会いたいと』しかし 私は心の宝箱に鍵を掛けたから 愛する心をそこから出すわけにはいかないのだ 仕事を頼まれても笑顔一つ向けずに無表情のまま仕事に専念した 無駄な抵抗かもしれないそんなことをしても これから先何も変わらないのだから 城山さんを忘れて私に振り向いてくれるわけが無い そんなこと分かっている 家に居ても上の空の毎日だった 旦那が体の具合でも悪いのかと いらいらした表情で聞いた 皮肉たっぷりに 俺と話すのが嫌みたいだな などと言った 実際に 旦那が仕事が忙しくて大変だと愚痴をこぼした時でも 話を聞いている振りをしていた 聞いたところでだから何?と言いたくなるからだ 私だって仕事しているのよと言いたくなる 旦那が体を求めても 頭が痛いからと拒否した 触られたくなかった 殴られてから 旦那を体が拒否している 触らないでなどと言えない 眠っている時でも 安川のことが忘れられないのか 城山さんと仲良く街で買い物をしている夢を見たり 『君とは遊びだった 俺が愛しているのは城山さんだけだ』そう 夢の中で彼が言う 眠るのが怖くなった 毎日が睡眠不足だった 親しくしている会社の先輩が「美里ちゃん 最近何か辛いことでもあったの?見ていて痛々しいほどやつれたって感じよ 何か必死に耐えてる感じね」 そんなことを言われ 自分でも知らないうちに 自分が人の目にはそんな風に見えたのかと驚いた 言われてみれば最近洋服のサイズが合わなくなっていた 好きな人を無理やり忘れるとやはり何かが変化するのだろうか・・・・・・・・・・・・・久しぶりに体重計に乗ってみたら 3k減っていた ため息が出た ダイエットしようとしても減らない体重が恋の病で簡単に減るのだ なんだか可笑しかった 独りで体重計に乗り泣き笑いしてしまった 『バカみたい』・・・・・・・・深く考えないようにしよう 前の自分に戻ればいい マイペースの自分に 寄り道しただけなのだ だからまたもとの自分に・・・・・・・・・・・心に決めた 明るく忘れよう!

でも神様は意地悪でした・・・・・・・・・・・・・