「初代平安東福寺」の贋作と覚しき鉢が手元にやって来たので、真作との違いを比べてみます。
(其々の部分の比較写真ですが、上が真作、下が問題の鉢です。)
先ず、鉢上部の呉須の縁取りですが、真作は釉薬をタップリ含ませた筆で、正確に一気に描かれてるようですが、贋作の方はチマチマと何回か筆を入れたかのように、斑(まだら)に成っています。
桔梗の花も、真作は手慣れた筆使いで呉須の濃淡を巧みに使い分け、花弁の一枚一枚をひと筆でリズミカルに描いてあります。
贋作の方は一度描いた後、濃くしたい部分に再び筆を入れ上書きしたようです。
大きく違うのは鉢裏の部分で、真作は全体均一に少し青みがかった透明釉が掛けられ、冴えた綺麗な色に仕上がっています。間口4.8センチと云う小さな鉢にも拘わらず、4本の足も均整がとれた実に丁寧な仕事振りです。
それに比べ贋作の方は透明釉も斑で、足の大きさや幅もマチマチで雑な造りに成っており、全体的に品格、風格が感ぜられません。
幾ら形だけ真似ても、元々の技量の違いは明らか、職人技まで一朝一夕に盗みとることは出来ません。
(真作の写真は、千葉県松戸市の「盆栽屋.com」宮本孝行さんのホームページ内「思い出の名鉢」からお借りしました。)