短い準備期間に心配も 気温上昇で一気に生育

 札幌開幕週の8日火曜。調教を終えた多くの騎手が驚いた様子で引き上げて来た。「例年よりかなり芝が短いですね。やっぱり開催時期が早まったからですからね?」。札幌市では8月に五輪マラソンを予定。それに伴う変則日程で、09年(当時は函館競馬場のスタンド改修)以来の6月札幌開催となっている。もしかして芝の生育が間に合わなかったのか?真相を確かめるべく、札幌競馬場の施設整備課に問い合わせた。

 夏にしか開催がない札幌だが、翌年開催まで準備期間がたっぷりとあるわけではない。開催直後に芝の張替えなどの修復作業を済ませれば、3月末までコースには雪が積もる。実質、洋芝の生育が見込めるのは4、5、6月。つまり、7月25日に開催スタートだった昨年より、2カ月弱も芝を生育する期間は短かった。施設整備課・馬場造園担当の小畑篤さんは「洋芝は大体、気温が上がる5月下旬くらいから伸びます。準備期間が短い今年は初めての試みで4月に2週間くらいコースの内側に保温シートを敷いて成長を促しました」と苦労を明かした。

 施設整備課の数々の努力が実を結び、小畑さんは「芝丈は例年と同じくらいで12〜16㌢をキープしていますよ」と説明。だが、これでは冒頭の騎手の証言と食い違う…。違和感の答えは開催数日前の急激な気温上昇にあった。実は小畑さんに取材したのは開催日前日の11日金曜。水、木曜の札幌は半袖でも汗をかくほどの夏日で、芝が一気に成長した。週初めに不思議そうな顔をしていた騎手たちだが、レース当日に芝の長さを気にする者はいなかった。

 開幕週は土日の新馬戦で2つのレコードが誕生。馬たちはふかふかの馬場お気持ち良さそうに走っている。また例年通りの涼しい日々に戻った札幌。異例の夏日がもたらした“小さな奇跡”から、札幌の暑い夏は始まった。

※スポニチから