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裁判所に提出する書面には,もちろん作成者の氏名を記載しなければならない。

 

氏名の表示は,検察官や弁護人においては記名で足りる(刑事訴訟規則60条の2)。

 

つまり,記名印を押しても,パソコンで印刷した文字であってもよい。

 

だが,それ以外の人が作成する書類には署名押印が要求されているから(刑事訴訟規則60条),記名では足りず,自書が要求される。

 

自書がないと無効である。

 

以前,ある控訴審の国選弁護事件を受任したところ,高裁の書記官から,「控訴申立書に被告人の署名がないのでその理由を調査して下さい。」と言われ,私は驚いた。

 

被告人が作成する控訴申立書には署名が要求されるから,これがないと控訴は無効で,控訴申立期間はとっくに満了しているため裁判は門前払いで終了してしまい,控訴審の判断をもらうことはできない。

 

私が調査してみると,以下のような事情であった。

 

一審の弁護人であった弁護士が,控訴申立書の案を作成して被告人に渡し,「これに押印して地裁に提出すれば控訴できる。」と助言した。

 

この弁護士は,おそらく刑訴規則60条の存在を知らなかったのだろう。

 

被告人の氏名まで印刷した控訴申立書の原稿を作成して被告人に渡してしまった。

 

被告人は,当然法律なんて知らないから,言われるままにこの原稿に自分の印鑑だけを押して地裁に持って行った。

 

こういう場合,普通は地裁の窓口で職員が気が付いて「署名が必要です。」と補正を命じるものなのだが,なぜか書記官も裁判官も誰も気が付かずに被告人の署名のない控訴申立書が受理されてしまい,記録に編綴されて高裁に送付されてきた。

 

高裁もきっと驚いたことだろう。

 

私は,以上の調査結果を報告書にまとめて高裁に提出し,「被告人の責めに帰すべからざる事由によって署名のない控訴申立書が作成され,受理されたのであるから,有効な控訴があったものとして扱うべきである。」との意見を述べた。

 

そうしたところ,広島高裁平成29年10月24日判決は,「弁護人作成の報告書によれば,被告人の意思によって控訴申立が行われたことは明らかであるから,法律の趣旨からして控訴は有効と扱うのが相当。」とし,控訴審としての判断を示してくれた。

 

被告人が気の毒であるから救ってくれた救済判例であって,一般化することはできない。

 

弁護士としての職務を行う上で,上訴期間と時効期間には常に細心の注意を払わなければならない。

 

これら期間が徒過してしまうと,本来存在する依頼者の権利が消滅してしまうからだ。

 

法律的には私の調査によって救われたのは被告人だが,実際上は一審の弁護人であった弁護士が救われたといえるだろう。

 

控訴が無効とされていたら,懲戒処分に処せられるなど大変なことになっているところだった。