平成28年5月27日から29日の期間、東京医科歯科大学を会場として第65回日本口腔衛生学会が開催されました。
臨床家にとって、ともすれば忘れがちな学術的な視点を持ち続けることは、日々の臨床においても幅広い視野、客観的な判断材料と成り得るので、私は年に数回は学会参加するように心掛けています。
80歳で20本の自分の歯を持つ、という8020運動があります。これを達成するためには、いつから何をすれば良いのでしょうか?
もちろん80歳の時点で動き出しては遅く、では60歳だったら大丈夫か? 40歳から始めたら大丈夫か?と考えていくと、実際のところは生まれてすぐ、否!生まれる前からのアプローチが大切で、親、特に母親の考え方や意識こそが大事なのです。
ライフコースアプローチは、「成人における疾病の原因を胎児期、乳幼児期、およびその後の人生をどのような環境で過ごし、どのような軌跡をたどってきたのかという要因で説明しようとする学問」です。すなわち、成人期の疾病の発症を胎児期からのリスクの蓄積や連鎖で説明し、リスク低減の方策を長期間で追究する手法のひとつとして注目されています。
ライフコースアプローチの手法を用いた研究は、口腔保健領域でも報告されるようになってきています。
これまで歯科疾患は蓄積性の疾患と捉えられていて、小児期からのう蝕予防をはじめとする対策は、歯の喪失防止および口腔機能の保持にかかわる生涯保健に有効であるのは確かです。
しかし、歯科領域で妊娠期(胎児期)・乳幼児期からの口腔保健が、成人および高齢期にどのような影響を与えるかについては、これまで十分に検証がなされていません。
口腔保健には、ライフステージ毎の特性が明確であり、その課題や目標を設定しやすい分野です。一方でこのライフステージという考え方には、各ステージを断片的に捉える意味合いが強い印象もあります。むしろ生涯保健として連続して捉えるためには、ライフサイクルという用語もありますが、ライフコースという概念がより優れています。
既存の歯科医師にとって、ライフコースという概念は今までの価値観を大きく変革させます。
疾病に対する治療方針や治療方法も、その歯科医師の価値観が元となっているので、価値観が変わるというのはとても大きな意義があります。
私たち歯科医師の対象となるのは、その人が「生まれてから亡くなるまで」といわれてましたが、ライフコースという概念が導入されることにより、これからは「生まれる前から亡くなったその後まで」となり、目の前の疾病に対して、その背景を精査し、予後に対しても疾病から派生するであろう諸々にまで、ご本人とその御家族に至るまで、意識を持つことが求められます。
臨床家にとって、ともすれば忘れがちな学術的な視点を持ち続けることは、日々の臨床においても幅広い視野、客観的な判断材料と成り得るので、私は年に数回は学会参加するように心掛けています。
80歳で20本の自分の歯を持つ、という8020運動があります。これを達成するためには、いつから何をすれば良いのでしょうか?
もちろん80歳の時点で動き出しては遅く、では60歳だったら大丈夫か? 40歳から始めたら大丈夫か?と考えていくと、実際のところは生まれてすぐ、否!生まれる前からのアプローチが大切で、親、特に母親の考え方や意識こそが大事なのです。
ライフコースアプローチは、「成人における疾病の原因を胎児期、乳幼児期、およびその後の人生をどのような環境で過ごし、どのような軌跡をたどってきたのかという要因で説明しようとする学問」です。すなわち、成人期の疾病の発症を胎児期からのリスクの蓄積や連鎖で説明し、リスク低減の方策を長期間で追究する手法のひとつとして注目されています。
ライフコースアプローチの手法を用いた研究は、口腔保健領域でも報告されるようになってきています。
これまで歯科疾患は蓄積性の疾患と捉えられていて、小児期からのう蝕予防をはじめとする対策は、歯の喪失防止および口腔機能の保持にかかわる生涯保健に有効であるのは確かです。
しかし、歯科領域で妊娠期(胎児期)・乳幼児期からの口腔保健が、成人および高齢期にどのような影響を与えるかについては、これまで十分に検証がなされていません。
口腔保健には、ライフステージ毎の特性が明確であり、その課題や目標を設定しやすい分野です。一方でこのライフステージという考え方には、各ステージを断片的に捉える意味合いが強い印象もあります。むしろ生涯保健として連続して捉えるためには、ライフサイクルという用語もありますが、ライフコースという概念がより優れています。
既存の歯科医師にとって、ライフコースという概念は今までの価値観を大きく変革させます。
疾病に対する治療方針や治療方法も、その歯科医師の価値観が元となっているので、価値観が変わるというのはとても大きな意義があります。
私たち歯科医師の対象となるのは、その人が「生まれてから亡くなるまで」といわれてましたが、ライフコースという概念が導入されることにより、これからは「生まれる前から亡くなったその後まで」となり、目の前の疾病に対して、その背景を精査し、予後に対しても疾病から派生するであろう諸々にまで、ご本人とその御家族に至るまで、意識を持つことが求められます。