
中国を代表する(と言っていいかな?)伝統劇の京劇が成立したのは1820年ごろ
もう少し古くは1790年にまでさかのぼって
安徽省の地方劇の劇団(徽劇班)のいくつかが北京に来て活動を始めた
これが京劇のそもそものはじまり
1820年ぐらいには湖北省の劇団が北京にやってきて
安徽と湖北の伝統劇が融合して
台詞なんかが北京の言葉になって京劇が成立した
ということになる
まあ中国では安徽省の劇団の上京で京劇が発生したとして
京劇の歴史は300年以上としていますけどね
さてさて
日本を代表する伝統劇の歌舞伎(と言っていいかな?)
その原型は阿国歌舞伎とされる
出雲阿国という女性が安土桃山時代に登場させたとされる
ただこの歌舞伎は踊りが主体で今の歌舞伎とはかなり違う
この阿国歌舞伎はかなりエロっぽかったそうだ
それでもってしばらくして成立した徳川幕府は
女性が舞台に出ることを禁止
するとイケメン美少年が演じる若衆歌舞伎が登場
まあ戦国時代から男色の風習があったからでしょうかね
徳川幕府は若衆歌舞伎も禁止
ということで成人男性が演じる野郎歌舞伎が登場した
これが1652年のこと
ということで
公平を期すために京劇と歌舞伎が
現在に直接つながる様式が完成された時期を見ても
歌舞伎の方が100年以上も長い歴史を持つ
ただなあ
それをもって
「日本の演劇は中国以上に長い歴史を持つ」
と早トチリしてはなりませぬ
先ほど
安徽と湖北の伝統劇が融合して京劇た誕生した
と
ご紹介しましたけど
中国の演劇は京劇の登場よりはるかに前からありました
まあ紀元前にはありました
ただそのころは
歌や踊りや曲芸は寸劇みたいなものが
ごっちゃになった舞台だったようだ
今の概念の演劇とはちょいと違うかな
ということで「演劇のはじまり」を論じるには
何をもって演劇と呼ぶか
ということを考えねばならぬ
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一つの作品を構成するストーリがある。
そのストーリーは役者が発する台詞によって示される
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これを演劇が満たさねばならない必要条件として
「ストーリーを紡ぐ役者の台詞を基本的に決定する『台本』があること」
を演劇が成立する要件とするならば
北宋から南宋に移り変わる時代に中国南部で成立した
南劇が中国の最も古い演劇ということになります
12世紀初頭のことでした
中国ではその後
南劇の流れを汲む崑曲(崑劇)が発生しました
だいたい14世紀後半のことでした
崑曲は高度に発展して中国各地で演じられるようになりました
ただ
なんというか
とてもお上品だったんですな
さきほどの京劇の成立のお話ですけど
北京でも崑曲は盛んに演じられていた
ただ
庶民にとって「手に汗握る面白さ」ではなかった
というか
崑曲はどんどん洗練されて
ゲージツ化していって
庶民の楽しみからは乖離していった
そこにきて
かなり強烈な地方劇が入ってきた
音楽も強烈だし
アクロバティックな要素もある
お笑いの要素もある
ということで北京っ子に受けた
受けに受けた
ということで
京劇が北京を代表する伝統劇になり
ついでに
中国を代表する伝統劇と見なされるようになった
という次第であるわけです
中国文化の特徴の一つに
どんどん新しいものが生まれて来ることがあります
もちろん
どの民族の文化もそういう事情はあるのですけど
中国の場合には特にダイナミック
そして
とっても古そうに思えることも
長い歴史からすれば
ごく最近に始まった
ということも多いわけです
ただ新しく発生した文化は
それより古い文化の特徴を受け継いでいるのが
たいていの場合
たとえば京劇にしても
用語や基本的な仕草
それから役者の育成法も
崑曲の方法が基本になっています
まあ
自分の考えで新しいものをどんどん生み出すけど
先人が成し遂げた成果を尊敬して
いただけるものはいただく
というやり方と言えば
よいでしょうかね
それにしても
中国文化では新しいものが
どんどん登場してきました
本当に古くからあるものは
案外少ない
前に
ある中国人
かなりのインテリ先生でしたけど
「よく中国5000年の歴史っていうけど
5000年前からあって
今もほぼそのままの形で残っている文化って
具体的になにがある?」と尋ねてみました
すると彼はしばし考えて
「そうだなあ。漢字と
それから
家族を中心とする人間関係ぐらいかなあ」
と言っておりました