台湾・蔡英文新総統の就任演説全文(第5回) 族群の違いを超えた台湾社会づくりを | 如月隼人のブログ
2016-05-21 21:31:49

台湾・蔡英文新総統の就任演説全文(第5回) 族群の違いを超えた台湾社会づくりを

テーマ:政治・経済

 台湾には「族群(エスニック・グループ)」の問題がある。まず、終戦前から台湾に住んでいた華人系の「内省人」と戦後になり国民党と共にやってきた「外省人」の問題だ。華人が台湾に住み着くはるか昔から台湾で生活してきた原住民族もいる。「族群と格差」の問題はかつてに比べればかなり緩和されてきたが、蔡総統は歴史の真相をさらに綿密に調査・公開し、必要な措置をとることで、「台湾人としての団結」をさらに強化すると表明した(解説参照)。

 新政権が負わねばならない第3のつとめは、社会の公平と正義です。この問題について、新政府は国民社会との協力を続けます。台湾の政策を多元性、平等、開放、透明性、人権といった価値とさらに合致させていきます。台湾の民主メカニズムをさらに深化させ進化させていきます。

 

 新な民主制度をスタートさせるにあたり、私たちはまず、過去と向き合う共通の方法(社会の誰もが受け入れられる共通の方法)を探し出さねばなりません。私は総統府において、「真相と和解委員会」を発足させます。最も誠実で慎み深い態度で、過去の歴史を処理します。

 「移行期の正義」問題を追求する目的は、社会の真の和解を追求し、すべの台湾人があの

時代の過ちを記憶するためです。

 

 私たちは真実の調査と整理から始めます。3年以内をめどに、台湾自らの「移行期の正義調査報告書」を完成させます。真実を掘り起こし、傷跡を癒し、責任を明確化します。その後に、過去の歴史を、再び台湾を分裂させる原因にはせず、台湾を共に前進させる動力にします。

 

 同じような公平と正義の議論として、私は同じ原則を採用して、原住民族の問題に取り組みます。本日の就任式典では、原住民族の子らが国歌を歌う前に、彼らの集落の伝統的な古いメロディーを歌いました。これは象徴なのです。私たちはこの島にやって来た前後の順

を忘れることはできません。

 

 新政権は謝罪の姿勢をもって、原住民族に関する議論に向き合います。原住民族の歴史観を再構築し、少しずつ自治を推進し、言語文化の再生を行い、生活の支援を向上させます。これこそが、私が新政権を指導して推進する変革です。

 

*********

 

◆解説◆
 「移行期の正義」とは「Transitional Justice」の日本語訳。社会の急激な変革期に発生した、人権侵害や各種の不正を見直し真相を解明し、場合によっては責任追及を行う動きにおける用語として定着した。台湾では「転型正義(ヂュワンシン・ヂェンイー)」と呼ばれる。

 

 台湾で外省人と本省人の対立が引き起こした悲劇の典型が、1947年に発生した「2.28」事件だ。同事件では本省人を中心に最大で2万8000人が殺害されたとされる。その後も外省人上層部が本省人を抑圧する構図は長く続いた。外省人に強い恨みを持つ本省人も多く出た。

 

 しかし外省人と言っても、社会を支配する側に回った人は少数で、大部分は生活の基盤をすべて失って台湾に逃れ、つらい日々に直面した人々だった。

 

 さらに「内省人」にも、多数派の「閩南系」、少数派の「客家系」などがある。さらに「原住民族」はごく最近になるまでは常に、政治的にも経済的にも抑圧される立場だった。

 

 蔡総統は、原住民族のパイワン族の血が多少入っているが、基本的には華人本省人と言ってよい。その蔡総統が原住民に対して「謝罪の姿勢」を基本に各種政策を推進すると明言したことは興味深い。つまり、自らを「抑圧の被害者」と考えやすい本省人にも、「自分たちも加害者の一面があった」と再考してもらい、「今、大切なのは台湾人としての共通意識を持つこと」との社会通念を強化しようとの狙いと理解できるからだ。(編集担当:如月隼人)

 

関連:
台湾・蔡英文新総統の就任演説全文(第4回) 社会の安全性高め、超高齢化社会への準備を

 

参考:
蔡英文520就職演說全文(中国語)
(中国語)

如月隼人さんをフォロー

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

コメント

[コメントする]

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス