日本では長い間、地下鉄や近郊電車など混み合った車内における痴漢犯罪が問題になっている。被害者にとっては、心の傷が一生残ってしまいかねないだけに、事態は深刻だ。そして痴漢犯罪の問題は、中国も同様だ。ところが江蘇省南京市の地下鉄では、防犯ブザーや防犯スプレーなどが「安全上の理由」により、持ち込み禁止されている。市民からは疑問のの声が出ている。
地下鉄の駅入り口には「可燃性に物品や爆発の恐れのある者、法律で規制されている刃物類」など、持ち込み禁止品についての表示があるが、「痴漢撃退用の道具」と明記されているわけではない。
しかし実際には禁止されており、構内新入時の検査で所持が発覚し、それでも乗車を希望する場合には「一律没収」になるという。地下鉄の駅で持ち物検査を担当している職員のひとりは、人々が薄着になる夏が近づくと、「痴漢撃退用の道具」の所持が見つかることが増えると説明した。多くの場合には、所持者が持ち込み不可の規則に応じるという。
同措置に対しては、理解を示す市民もいるが、「自分の身を守る物品」の携帯を認めない措置に、疑問を示す人も多いという。
南京市警察で地下鉄関連の担当者は、駅の入り口の持ち込み禁止リストに痴漢対策用の物品が明示されていないことについては、「すべてのものを列記しているわけではない」と説明。「公共の安全に危害を与える恐れがあるものは、すべて持ち込み禁止です」との方針という。
痴漢対策用の物品については「万一、間違って作動させたり、不法分子に使われたりした場合には、公共の秩序を乱す可能性が高く、パニックを起こす場合もある」から、禁止していると説明した。
同担当者は、「女性が痴漢被害に遭遇した場合、最も有効なのは大声で助けを求めることです。対策用物品を使えば、過剰防衛になったり関係のない乗客に損害を与える恐れがあります」と述べた。
**********
◆解説◆
同問題からは、中国人の「法感覚」も垣間見えてくる。
痴漢犯罪をできる限り減らすということは、「被害を受けることによる、個人権利の喪失」をできる限り減少させることと言える。もちろん、「公共の安全」を図ることも極めて重要だ。法感覚とはつまり、矛盾しがちの両者のバランスをどう取っていくかということだ。
中国の場合、「公共の利益」を「個人の権利」よりも重視する感覚が、相当に強い。したがって、「中国的な法感覚」からすれば、“当局”の判断は、比較的自然な結論だ。(編集担当:如月隼人)

日本では長い間、地下鉄や近郊電車など混み合った車内における痴漢犯罪が問題になっている。被害者にとっては、心の傷が一生残ってしまいかねないだけに、事態は深刻だ。そして痴漢犯罪の問題は、中国も同様だ。ところが江蘇省南京市の地下鉄では、防犯ブザーや防犯スプレーなどが「安全上の理由」により、持ち込み禁止さ......