2024年1月中旬、愛媛県の地方都市にある商業施設で、信じがたい事件が起きた。
買い物客や家族連れでにぎわうカフェのテラス席で、男性が銃で撃たれ命を落としたのである。
平和な午後のひとときを突き破った銃声は、現場に居合わせた人々だけでなく、地域全体を震撼させた。
「まさかこんな場所で」という驚きと恐怖が、ニュースとともに全国を駆け巡った。
事件の現場となったのは、誰もが日常的に利用する全国チェーンのカフェ。
日常の延長線にあった空間に、突然“非日常”が侵入した瞬間だった。
警察発表や報道によると、撃たれた男性と容疑者は、かつて同じ組織に属していた関係にあったとされている。
その後、男性は組織を離れ、別の組織へ移籍し、最終的には関係を断っていた。
事件の背景には、反社会的勢力の内部対立や報復があったとみられている。
だが、今回の特徴は、その抗争が裏社会の範囲にとどまらず、一般社会の空間で実行されたという点にある。
閉ざされた世界の争いが、一般市民の生活圏にまで流れ出してきた――その事実こそが、最も深刻な問題である。
なぜ、あえて人の多いカフェが舞台となったのか。
私個人としてはこのように考察する。
動機のすべてはまだ明らかではないが、いくつかの推測が成り立つ。
被害者がよく立ち寄る場所だった可能性が高く、加害者ともここで面識があった可能性がある。
または、目撃者が多い環境を選ぶことで、示威的な意味を持たせた可能性。
さらに、発砲後の逃走経路や防犯カメラの配置を計算に入れた上での犯行だったとも言われている。
いずれにしても、公共空間での発砲は、一般人を巻き込む危険を極めて高くする行為である。
事件当時、店内には家族連れや学生など多くの客がいた。
偶然の条件が重ならなければ、被害はさらに拡大していた可能性がある。
この事件は1月に発生し、事件発生の翌日の夜には捜査関係者らによる指名手配がなされた。
この対応についてはスピード感のある対応であるといえる。
通常、殺人などの重大事件でも「指名手配」に至るまでには数日〜数週間かかることが多いのである。
さらに、事件発生後1週間あまりで逃走先とみられる暴力団事務所の家宅捜索が行われたとの報道もある。
警察側は「一般市民が巻き込まれるリスクが極めて高い」と判断し、逃走中の容疑者を早期に捜索・指名手配に至ったと考えられる。
その後、2024年3月5日付で、指名手配されていた同幹部が岡山県内で逮捕されている。
カフェやショッピングモールといった場所は、多くの人にとって「安心」の象徴だ。
家族で食事をし、友人と語り、ひとりでくつろぐ場所――そこに危険が潜むとは誰も思わない。
しかし、この事件はその常識を打ち砕いた。
どんなに明るく整った空間でも、暴力の火種はどこにでも潜んでいる。
裏社会の抗争は、私たちが暮らす日常と地続きの場所に存在しているのだ。
ただ、すべての暴力団関係者が一般人を巻き込むわけではない。最も、加害者側も
一般人を巻き込もうと思っていたとは考え難い。
事件後、地元の商業施設では防犯カメラの増設や警備体制の強化が検討された。
だが、本質的な安全対策は施設の側だけに委ねるものではない。
警備員を配置するには人件費や業務委託費がかかるし、防犯カメラの設置には維持補も含めて莫大な費用が掛かる。
しかも完全にこれらに頼っているから安心。とは到底思えない。私たち自身が、異変を察知する感覚を持つ必要がある。
違和感を覚えたらその場を離れる、危険な場面では撮影や接近を避け、安全確保を最優先に行動する。
そして、社会の“裏側”の出来事を遠い世界の話として片づけないことだ。
知らないことが安全を守るわけではない。
むしろ、知ることこそが、自分や周囲を守る最初の一歩である。