今日はちょっと、裏社会と携帯電話の文化について話そうと思う。

もちろん話せる範囲で、だ。


普段は何気なく使っているスマホや携帯も、反社会的勢力の人間にとっては「ただの便利な道具」では済まされない。


契約ができない、足がつく、証拠が残る――そうした理由から、彼らは長いあいだ独自の使い方や調達ルートを編み出してきた。
今回は「飛ばし携帯」や「沈黙の電話」といった、一般の人には耳慣れない言葉を手がかりに、その世界をのぞいてみたい。

 

 

まず、飛ばし携帯とは何かーーー

「飛ばし携帯」とは、本人確認をすり抜けて契約された携帯電話のこと。
たとえば、

・他人の身分証を不正に使って契約

・架空名義(存在しない人物)で契約

・すぐに転売する目的で大量に契約

こうして作られた携帯は契約者本人に責任を追わせることができず、「足がつきにくい」という理由で、詐欺グループや裏社会で好まれてきた。
一方、一般人にとっても「飛ばし携帯」という言葉はニュースで耳にするが、実態はあまり知られていない。

本来、暴力団関係者は携帯電話会社の契約を断られることが多い。
2000年代以降、各社は「暴排条例」に基づき契約を拒否する仕組みを整えており、表向きは正規の手段で契約が難しい。

そのため、反社のような人たちが利用するのは次のような調達ルートだとされる:

  1. 第三者を介した契約
    組織に直接関係のない人間に契約させ、端末とSIMを渡させる。
    名義上は「一般人の契約」であるため、足がつきにくい。
  2. 闇ルートでの購入
    不正契約や未払いで止まったSIMカード・端末を転売する「闇ショップ」。
    昔は歌舞伎町や大阪ミナミなどで堂々と売られていた。
  3. 海外SIMの利用
    外国人名義や海外で発行されたSIMを使う。
    ローミングで国内でも使えるため、追跡は煩雑になる。

もちろん、これにかかわった人物たちも法律で罰せられる。

反社会的勢力に「協力」したことになり、今後もマークされるのは目に見えている。

最悪の場合、手を貸した本人たちも契約関係はできないような状態に陥ることもある。

 

 

そして一時期、最も使われたのが「プリペイド式携帯」。
コンビニでカードを買ってチャージすれば契約不要で利用できるため、裏社会の御用達だった。
しかし2005年前後から、プリペイド携帯にも本人確認が義務化され、急速に姿を消すことになった。

 

調達した携帯は、必ずしも「会話」に使われるわけではない。
特に裏社会では「沈黙の電話」と呼ばれる習慣がある。

・相手からの着信に出るが、声を出さない

・一定時間の沈黙で「確かに出た」と確認

・用件は直接会うまで話さない

つまり携帯電話は「呼び鈴」や「存在確認」にすぎず、重要な内容は対面でしか話さない。

 

LINEや暗号化アプリの普及で、若手はスマホを日常的に使っている。
ただし痕跡が残りやすく、摘発につながることも多い。
結果的に、古参は「通話は避ける」「文字は残すな」という鉄則を守り続けており、
最新のスマホを持ちながらも、その使い方はどこか時代に逆行しているのが実態だ。

 

今回紹介したのは、裏社会の携帯文化のほんの一端にすぎない。


技術がどれほど進化しても、彼らは常にその隙を突き、抜け道を探し続ける。
それは一般人にも捜査関係者にも容易に解けない謎であり、だからこそこの世界は、いまも私たちの社会の“裏側”に静かに息づいている。