「暴力団員はパスポートを持てるのか?」
一見すると単純な問いだが、掘り下げると意外な現実が見えてくる。
結論から言えば、日本の旅券法に「暴力団員や反社会的勢力はパスポートを発給しない」といった条文は存在しない。
したがって、反社という属性そのものはパスポート取得の直接的な障害にはならないのだ。
では、どのような場合にパスポートが発給されないのか。
旅券法第13条などに基づけば、主に以下のケースがある。
・服役中や未決拘禁
・執行猶予や保護観察中で、外務大臣が制限を必要と判断した場合
・出国禁止措置を受けている場合
・過去にパスポートの偽造・不正使用など旅券法違反で処罰された場合
要するに、刑事手続や出国制限に引っかかっていない限り、反社であっても「普通に」パスポートを取得できる、というのが実際のところである。
ということなので、暴力団がパスポートを作ることができない、ということはない。
ある元暴力団関係者が、観光名目でロサンゼルス国際空港に到着した。
渡航目的、滞在先ホテルの予約確認書、帰国便の航空券、さらには観光予定表まで揃えており、審査の質問には模範解答で返した。
「What is the purpose of your visit?」には即答で「Sightseeing」。
「How long will you stay?」にも「One week」と自然に返答。
しかし、審査官は無表情のまま端末を確認し、「Come with us」と一言。
どれだけ答えを用意していても、裏で名前がリストに載っていれば意味がないのだ。
別室での尋問と通告
別室では複数の係官が核心的な質問を投げる。
・“Do you know anyone in organized crime in Japan?”(日本の組織犯罪と関わりがあるか)
・“Have you ever been arrested?”(逮捕歴はあるか)
彼が「No」と答えても、係官は冷たく「We already have information.(我々はすでに情報を持っている)」と突きつける。最終的に「You are not eligible to enter the United States.」と告げられ、入国拒否が確定する。
待機と帰国
その後は空港の待機室で一夜を明かすことになる。自由はなく、椅子や簡易ベッドで時間を潰すしかない。
翌日の便で強制送還される。
航空券代の扱い
・往復チケットを購入していた場合 → その復路便に乗せられる。追加負担はない。
その場で日程の変更をさせられるのだ。
・片道しか買っていなかった場合 → 航空会社が復路便を手配し、その費用を本人に請求する。
クレジットカードがあれば即時決済、なければ未払いの債務として残る。
つまり「送り返すコストは税金ではなく本人か航空会社が負担する」仕組みになっている。
日本入国の扱い
日本到着後は、あっさりしたものである。日本国民である以上、入国拒否はできない。入国審査官は「おかえりなさい」と通すだけだ。
ただし、入国拒否された情報が警察や入管に共有されていれば、税関や警備担当から別室で事情を聞かれる可能性はある。
国境の壁は想像以上に高い
このように、完璧に答えを準備しても、情報共有の壁は突破できないのが現実だ。
無論、噓をついて入国しようとした本人に責任があり、本記事はそれを推奨しているものではない。
さらにアメリカに入国できなかったこの元暴力団員は、今後一切、アメリカに入国することができなくなる。
これはアメリカの判断にはなるが、入国時に必要なESTAの登録に「嘘」を入力したからである。
このような履歴が残ると、今後一切アメリカに入国できなくなる可能性が大いに高くなる。