「どういうつもりですか、社長。」
社長室、蓮がローリィを睨みつける。
「なんのことだ?」
「ふざけないでください!どうして最上さんがあの人たちの迎いにいくんですか!?」
「別にいいだろうが。クーが家庭料理を食いたいって言うから最上くんをつけただけだ。」
「…あの人、料理できるじゃないですか…。」
「今回も、休暇を取るらしいから、わざわざ自炊なんてするバカがいるわけないだろ?」
「…今回も?」
前回もあったかのように彼が言うため、蓮は眉を寄せたが、
「そこんとこは自分で思い出せ。」
「…何を企んでるんですか?」
「ひでぇな。まるで俺がいつも企んでるように言いやがって。」
「言ってるんじゃなくて、やってるから言ってるんです!」
「ほ~!そこまで言うなら、企んでやっても…。」
「結構です!とりあえず、それを聞きにきただけなので、それじゃあ、失礼します。」
ローリィに背を見せると蓮は社長室から去り、
(…結局、はぐらかされたな…。)
廊下を歩きながら、蓮はため息をつく。
彼に口で勝てる人間など、指で数えるほどしかいないのではないだろうか?
(あとで最上さんに聞かないと…。)
そんなことを考えながら、エスカレーターで降りようとして乗ったら、栗毛の少年がエスカレーターだと言うのに、階段を上る。
(…!!)
すれ違いに少年の顔をみて、蓮は驚くと、エスカレーターを急いで降りて、エスカレーターに再び乗ると、先程の少年のように駆け上がって、少年の跡を追う。
「最上さん!」
少年…いや少女の名を呼ぶ。見違えるはずがない。ましてや好きな人を…。
しかし彼女は止まることなく、走っていくので、蓮は本気を出して走り、ついに細い手首を掴んだ。
「捕まえた…!」
驚いたようにこちらに振り返る彼女。
しかし、彼女はニッと笑うと、
「レンじゃないか。俺とオニごっこでもしたかったの?」
「最上…さん…?」
「…?モガミさんって誰?」
本当に分からないとでも言うように彼女は首を傾げる。
「最…。」
「クオン。」
「…!」
蓮は聞き覚えのある声に、彼は振り返ると、そこにはクーがおり、
「父さん!」
彼女は蓮の手を振り払って、クーの元にいく。
「社長室はそっちじゃないぞ、クオン。」
「あれ?そうだっけ?」
「お前、方向転換じゃないのか?」
「え~?違うよ~。」
自分の目の前で会話する二人に蓮は状況がよく分からず、
(一体、何がどうなって…。)
動揺していたら、彼女がこちらを見て、
「そういえば、また嘉月やるんだよね!俺、見るよ!父さんと一緒に!ね、父さん!」
「ああ、そうだな?」
「まあ、父さんには負けるけどね!」
「こら、クオン!」
「だって、俺にとって父さんが一番だから!」
「い、いや、父さんは嬉しいけどな?だからってな?」
「わかってるよ、父さん。でも、父さんが一番だから、レンは二番目!」
そう言って無邪気に笑う彼女に蓮は目を見開いた。
「あ、父さん!そろそろ、行かないとボスが怒るよ!」
「そうだな。じゃあ、敦賀くんまただ。」
「じゃあね、レン!」
彼女が蓮に手を振って、クーと去っていく。
「っ…。」
ギュッと拳を作った蓮を置いて…。