恋人の条件Ⅲ【35000HITリクエスト】 | KIRAKIRA☆

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こちらはスキップビートの二次小説ブログです。CPは主に蓮×キョ-コです。完全な個人の妄想の産物ですので、原作・出版者等は全く関係ありません。また、文章の無断転載は固くお断り致します。


「なら、キョーコ、俺と付き合おうよ」


レインの発した言葉にその場にいた全員が凍りついた。





クーのホテルに着くと、すでにキョーコとレイン、それに別の共演者がもう一人来ていて鍋の準備が出来ていた。

本当に何人前あるんだ・・・?とあっけにとられる量が盛られていて、蓮は見ただけで、気分が悪くなり回れ右をして帰りたくなった。


「敦賀さん!お疲れ様です!」


パタパタとエプロン姿のキョーコがやってきたのを見て、なんとか気持ちを立て直した。

その笑顔につられて蓮自身も甘い表情になる。


「最上さんもお疲れ様。この量を準備するの大変だっただろう?」

「以前にも先生のお世話したことがあって慣れていましたから!それに、野菜を切ったりは皆でやりましたし」


そう言って、キョーコが振り向いた先にはクーと話しているレインがいて、蓮はわずかに頬を強張らせた。



あの後、すっかり「蓮くんとキョーコちゃんの仲を応援しよう」の会を盛り上げてしまったクーと社は、クーの長~いリムジンに乗せられてホテルに向かう間レインとキョーコの話を聞いていた。


曰く、昼間聞いた「レインにごちそうになった」というのは、先日蓮が別件の仕事で先に上がった時に、レインがキョーコを食事に誘っていて、それを見かねたクーが自分も行きたい!と割り込んだらしい。

だが、クーの食べる量を考えれば今からレストランを予約するのも憚られたので、クーのホテルで三人で手巻きずしを作って食べたとのことだった。


クーはその時は単に「キョーコと食事を出来るチャンス」ぐらいにしか思っていなかったのだが、今考えれば、もしクーが割り込まなければ二人で行っていた事になるのだ。


「感謝して欲しいな、敦賀君」


「・・・・・・・ッ」


行きあたりばったりとはいえ、キョーコとレインのデートを防いだとなれば多少恩着せがましてく言ってもバチは当たるまい。

「そうだぞ、Mrヒズリに感謝しろよ」という社さんの言葉もあって、蓮はホテルに着くまでの間、一体何の拷問だと頭を抱えていた。




ともあれ、食事にまで誘ってくるなんて・・・・これはどうやら本当に「馬の骨」認定で間違いなさそうだ。




蓮としては、キョーコと確実に距離を縮めていっていると思うし、時々自分を見るまなざしに好意が含まれているのは判っていた。

ただ、それが先輩への親愛なのかそれ以上のものなのかは・・・正直自信がないうえにあまり期待しすぎると危険だと学んではいる。


今回のクー・ヒズリとの共演はいいチャンスだと思っている。


もし、この役を演じきる事が出来たら・・・少しは自分に自信がつくかもしれない。



そうしたら・・・・







何人前になるかわからない量の肉と野菜が次から次へと消えていくのを、初めてみる社などは呆然と見ていた。

クーが鍋の中身をお水のようにどんどんすいあげていく横で、キョーコがせっせと中身を月足していく流れ作業はある意味見ものだったりもするのだが、キョーコの隣をちゃかり確保している蓮は、クーの食べッぷりにほとんど箸は止まっている。



「キョーコは本当に料理が上手だし、手際がいいよな」

「ありがとうございます。そう言って頂けると光栄です!」


レインが手放しで褒めるのをキョーコは頬を染めて喜ぶが、その笑顔に蓮がぴくりと眉をひそめたのは誰も気付かなかった。

さっきから二人はダシの取り方がどうとか、野菜の切り方がどうとか蓮には全くわからない話で盛り上がっていて、その度に蓮はイライラが募っていたのだ。


「キョーコはいいお嫁さんになるな」


「それはありえませんよ」


清々しいほどにすっぱりキッパリと言い切ったキョーコにレインはきょとんとした顔になった。


「なんで?」


「結婚しませんから」


「なんで?仕事に生きるの?独身主義?っていうんだっけ?でも、好きな人が出来たらわからないだろ??」


「好きな人なんて出来ません。私は恋なんて愚かなモノしませんから」



少し強い口調になったキョーコに、蓮はわずかに顔を曇らせて目を伏せた。

キョーコがそう言うのはずっと聞いている。その心境に至った経緯も知っているだけに何も言えずにいた。


そしてキョーコはそんな蓮の様子に気付かないフリをした。


気付かなければ見ずにすむ。

見なければ気付かずにすむから。



そんなキョーコの様子にレインは呆気にとられていたが、少し考え込んだ後に


「もしかして、以前手酷い失恋でもしたとか?」


と聞いてきたので、キョーコは目を見開いて「どうして・・・ッ」と思わず口走っていた。

キョーコの嘘の付けない素直な対応に、レインも思わず噴きだした。


「なるほど、それでか。でもそれって勿体無くない?」


「は?」


「だって、その男のせいで今後の人生縛られちゃっているんだろ?まだ若いんだし、こだわる必要ないだろ」


「いえ、そうでは無くて、私は恋自体が・・・」


「最初に辛い恋をして、そういうものだと思い込んでいるのかもしれないけど、もっと軽くて楽しい恋愛もあるのに勿体無いよ」


「楽しくて軽い・・・?」


キョーコの恋を連想するものとは全く正反対の単語に目を白黒させた。


「それに、それだったらずっとバージンじゃないか」


「バ・・・ッ!?」


「あんな気持ちいいものないのに、知らないなんて勿体ないよ」


「き・・・ッ!?な、なんて事いうんですか!」



顔を真っ赤に叫ぶが、レインは何で?と不思議そうに首をかしげるだけだった。



「キョーコだって、これから恋愛ドラマやベッドシーンを避けては通れないだろ?」


「それは・・・そうですけど・・・それは役の上ですし・・・」


「気持ちの載っていないラブシーンやベッドシーンって、見ている分には白けるんだよね」


「白ける・・・」



レインの容赦ない単語にキョーコはどんどん顔色を無くしていった。

確かに、敦賀さんもダークムーンの時に本気の恋の演技の演技につまずいていた。


いつかは自分もぶるかる問題だと思っていたけど、心のどこかでずっと避けていた。



「しかもキョーコは恋の素晴らしさを頭から否定しているだろ?尚更恋の素晴らしさを伝えられる訳がない」


そんなものない。

素晴らしい恋なんてない。


そう、思わず口に出そうとした時だった。



「ストップ。二人とも、そこまでだ。少し感情的になっているな」

「最上さん、少し落ち着いて?」



クーが二人の頭を軽くコツンをこぶしを置いて止めて、ハッとした。

蓮はキョーコの顔を覗き込んでいて、キョーコは一気に青ざめた。


「す、すみません!!食事中にうるさくしてしまって!!」


「うん、そうだね。はい、これ飲んで落ち着いて?」


そう言って差し出されたお茶を恐る恐る受け取りながら蓮の様子をうかがう。

怒っては・・・いない・・・?アンテナは・・・出ていないけど・・・・・。




「レインも言いすぎだぞ。個人の感情の問題なのだから」



クーのたしなめる言葉に、レインはまだ納得出来ていないように。うーん・・・と頬をかいていた。


「でもキョーコの演技が気になっていたんだけど・・・納得したよ」


「・・・・・気になっていたって・・・?」


レインの言葉にキョーコが再び反応するのを、蓮は思わず舌打ちするのを堪えなければいけなかった。


さっきから心の中を渦巻くモノを必死に抑え込んでいるのに・・・これ以上は気持ちの決壊を押さえておける自信がないというのに・・・


どうして、この男は自分が言えずにいる事を・・・・



「ほら、キョーコの役って、周囲の反対を押し切って駆け落ちしても俺と国際結婚した役だろ?その割には俺を見る目に尊敬の情ぐらいしか無かったからさ」


レインの言葉に思わず息を飲んだ。

それは・・・正直心に引っかかっていた事だった。


「大人しい性格の役だから眼差しや仕草で表現しなくてはいけない分誤魔化しが聞かないだろ」


「誤魔化し・・・」


呆然と呟くキョーコに、蓮もそれは判ると思った。自分もダークムーンの時に緒方監督に言われた言葉だった。

あのときはこの子の恋心を自覚することで乗り越えられたけど・・・


「まあ、ラブストーリーじゃないし特に監督もNGだしていないから問題はないけどね」



わざとおどけた様に言うレインに、それは嘘だと判る。

見えない部分の役作りも必要だと教えてもらった。プロである以上、「ストーリーに関係ない」からと言って中途半端な演技をして言い訳が無い。


そしてまだ短い期間だけど、レインはプロ意識の高い役者だ。




すっかり黙りこんでしまったキョーコにレインは少し一方的に言いすぎたか・・と後悔した。



出会った頃からまっすぐで素直なキョーコに好感をもっていた。

正直、大和撫子のような内面に惹かれ初めてもいた。

そして、その演技にも光るモノを感じていた。



だからこそ勿体無いと思って、つい色々言ってしまったけど・・・・






いや、まて・・・・・・






だったらもっといい方法があるじゃないか。








「なら、キョーコ。俺と付き合おうよ」





レインの提案にキョーコを始め、その場にいた全員が固まった。