ラブコラボ研究所企画第五弾!!『夏といえば・・・』のお題を頂き、書いてみました。
【夏といえば・・・・・・花火・浴衣そして虫刺され】
「あ、蓮。これ、今年は来週やるんだな」
事務所を歩いていると、社が壁に貼られたポスターに目をとめた。そこにあったのは、花火の写真と【隅山川花火大会】の文字。
都内でも有数の規模を誇る花火大会の宣伝ポスターだった
「ああ、去年は交通規制に巻き込まれて大変でしたからね」
「だよな~、今年はあらかじめしっかり調べてから移動しなきゃな」
夏の風物詩も日夜仕事に明け暮れる自分たちには、移動を妨げる障害物でしかない
第一自分の立場でそんな人の多い所に行ける訳もなく、蓮も大した興味もなかった
「この日は街中に浴衣の女の子が増えるから面白いよな~」
「まあ、そこは、やっぱり日本の文化という感じがしますね。でも、あんな格好で暑くないんですかね。わざわざ真夏にする格好でも無い気がしますけど。」
日本に来た頃から感じていた疑問を口にすると、社は呆れた様な表情をした
「お前ね。そこは風流ってやつだろ。暑さよりも夏の風物詩を大切にする大和撫子の・・・・」
「きゃ~!!蓮さま~!!!」
社の言葉は皆まで言うことは出来ず、その声は突然走り寄ってきたマリアの声によってかき消された
「マリアちゃん、待って。走ったら着崩れちゃうわよ」
さらにその後ろから駆け寄ってきたのは、やっと付き合い始めて2カ月になる恋人のキョーコだった
思いもがけず会えたのは嬉しいのだが
「二人ともどうしたの?その格好は」
蓮が驚くのも無理が無く、二人ともたった今話題にしていた浴衣姿だったのだ
マリアはピンクの生地に白い花柄の浴衣で、キョーコは白い生地に赤い花柄の浴衣。
対照的だが、二人ともとてもよく似合っている
「あのね、蓮さま!来週パパが日本に来るの!それで一緒に花火を見るのよ!!」
「それで、マリアちゃんに浴衣の着付けを教えて欲しいと言われて練習していたんです」
「ちゃんと覚えてパパにも着付けてあげようと思って」
お姉さま凄いのよ!とにこにこと笑うマリアに蓮は微笑ましく笑う
社もしっかり着つけられているキョーコとマリアの姿を見て感心する
「へえ~キョーコちゃん着付け出来るんだ。すごいね」
「ええ・・・・まあ・・・・」
キョーコは旅館にいた頃茶道もやっていたし、花火見学に来たお客様が着付けを所望する事もあったので、一通りの着付けは出来た。
が、それを口にすると何となく蓮の機嫌が悪くなるような気がしてごまかした。
(今ので、何か感づいたかしら)
ちらりと蓮を見れば、まばゆいばかりの笑顔を向けられていて、キョーコはつい固まってしまった
「とてもよく似合っているよ。」
「ああああああああありがとうございます」
「うん、何だか理解したな」
「・・・・・・・・・・・・へ?何がですか?」
「えーと、夏の風物詩?ってやつが」
「・・・・・????はぁ・・・???」
相変わらず、いや、恋人同士になっても一方方向な会話に社も頭痛を覚える
「はぁ~、蓮そろそろ・・・・」
かなり言いづらいが、言わざるを得ない言葉にキョーコが反応した
「あ、すみません。お忙しい所呼びとめてしまって。お仕事がんばって下さいね」
「ああ、うん・・・・」
綺麗にお辞儀をしてあっさりマリアと一緒に戻ろうとするキョーコに蓮の方が名残り惜しそうだったが、しぶしぶ歩きだした
「蓮さま!」
「マリアちゃん、どうしたの?」
少し歩いた所で、マリアが一人走りよって来た
何事かと、蓮も足を止めてマリアに目線を合わせる
「あのね・・・・・蓮さまが忙しいのは知っているの。」
「・・・・・?どうしたの?」
「さっき、少し聞いたんだけど、お姉さま花火大会に行った事ないんですって」
「え?」
「だから、写真とって来てねって言われたんだけど・・・・」
何となく、マリアの言いたい事がわかって、蓮は微笑んだ
マリアがキョーコを本当に慕っていて、二人の交際を祝福してくれているのが嬉しかった
「うん、わかった」
優しく言うと、マリアは少し不安そうな顔をあげた
蓮の忙しさを知っているだけに余計な事をしたかも知れないという自覚があるのだろう
「ありがとう、マリアちゃん」
重ねて言うと、やっとマリアもほっとした表情になった
「いい子だな~マリアちゃん。俺は最初、お前に彼女ができようものなら全力で阻止されると危惧していたけど・・・」
社の言葉に蓮は苦笑する
確かに、相手がキョーコでなければあながち大げさな話では無かっただろう
「それはそうと、社さん。調べて頂きたい事があるんですが・・・・・」
あれ?やっぱり終わらなかった・・・・そして全然甘くない・・・・後篇に期待してください!!!