Roman Antioch, 59-60, Tetradrachm, 14.97g (silver), Choice AU, Strike 4/5, Surface 4/5
表:皇帝ネロの肖像 裏:稲妻に乗るワシ
この銀貨の特徴は皇帝ネロの肖像に頬から顎にかけて髭があること。
髭があるネロのコインは金貨も含めて非常に稀です。
実際のネロはどうであったか?
髭があるネロの大理石像も残っているため髭を貯えていた時期があったと思います。
https://www.worldhistory.org/Nero/
ハドリアヌスを髭を貯えた初めてのローマ皇帝としましたが、正しくは
常に髭を貯えていた初めてのローマ皇帝がハドリアヌスであり
一時的でも髭を貯えた初めてのローマ皇帝はネロであったのでしょう。
さて、皇帝ネロ、彼ほど「無名より悪名」という言葉がふさわしい人物もいないと思います。
皇帝在位中に発生したローマ大火の犯人としてキリスト教徒を迫害し
初代ローマ教皇とされるペテロを殉教させたことは
後のキリスト教社会においてネロの悪名を決定的なものとしましたが
それゆえ、ローマ皇帝の中で知名度は抜群、数々のエピソードが知られています。
そもそも、彼は先代皇帝クラウディウスの後妻アグリッピナの継子でしたが
野心に燃えるアグリッピナの策略により実子を差し置いて第5代ローマ皇帝となりました。
その翌年、先代皇帝の実子を暗殺、更にその後、実母であるアグリッピナまでも暗殺。
その際、アグリッピナは下腹部、あるいは、股を指差し次のように言ったとされています。
「刺すならここを刺すがいい。皇帝はここから生まれてきたのだから。」
政治を顧みることなく芸術をあまりに愛好した結果、帝国内で反乱が勃発。
逃亡したローマ郊外で自殺する際には次のように言ったとされています。
「何と惜しい芸術家が私の死によって失われることか!」
自殺直後に現れた追っ手の百人隊長がネロにマントを掛けようとしたところ
「遅かったな、だが、大儀である。」と言って絶命したという話も残っています。