謡
高砂や この浦舟に帆を上げて
月住の江の通い路は 尉と姥とが相生に
妹背の道も遠からず 枝に不断のつまごとは
非情有情の唄の声 変わらぬ色ぞゆかしけれ
( 小唄 『高砂』 )
私の知っている小唄の『高砂』です。小唄の『高砂』にはこの他に別の曲もあるようです。
小唄の元は、能の『高砂』で、今でも結婚式などで歌われますが、これから派生したものには、長唄の『夫婦松高砂丹前』、『新曲高砂』、箏曲『高砂』、端唄『高砂』などがあります。
能の音楽の歌の部分を謡(うたい)、謡曲といいます。
能と茶道は武士の芸能で、加賀百万石の城下町金沢では、藩主前田家の庇護によりこれらが古くから盛んで、謡は、武家はもとより町人の間でも、出入り先の武家屋敷で酒食を振舞われる折などの余興のために、広く嗜まれておりました。
現在でも金沢では、古くからの街中の商工会などの宴席では、オープニングとエンディングは謡(うたい)なんだそうです。
で、自分でもCDで謡を聴いてみたりするんですが、どうも、あの低音でフルに倍音を効かせた歌には、いまいち乗れないんですね。
聴きなれていない者としては、やっぱり能舞台で演奏されるように、笛、鼓、大鼓、太鼓、囃子声などの高音、中音と合わさってこそ、バランスのとれた音楽になるように思えます。
あまり多くを聴いてはいないですが、それ以前の貴族文化である雅楽、それ以後の町人文化である浄瑠璃や小唄と比べ、凛とした緊張感と雄々しさを感じる能の音楽は、やはり武士のものという気がします。
イーヨーオォ、ポォーンという掛け声に、戦に臨むもののふの気迫が感じ取れます。
- 風と樹と人の囁き薪能 -
日本音楽の歴史を遡る
小唄は、それ以前の邦楽、清元、新内、長唄などをベースにしています。
なんで、真面目にやるなら、これらの唄い方、演奏の仕方を理解しておかなくては!
と言う訳で、清元、常磐津、長唄、すなわち歌舞伎の音楽のCDを聴きだしましたが、歌舞伎の演目には能から来ている物があり、さらに能を遡れば今様、催馬楽、雅楽があり・・・で、totalで日本音楽を知るために、「ベスト純邦楽100」という5枚組CDを買いました。
収録されているものは、雅楽から民謡、俗曲まで、時代は平安時代から現代までの純邦楽です。
邦楽のCDは録音によって良し悪しがかなりあるのですが、このCDはかなり良く、小唄なんぞは唄い方や三味線の、粋なところがよく出ています。
おかげで、戦前の日本人なら誰でも知っていた有名な曲の、サワリだけなら大体わかるようになりました。
私の周囲には、小唄をやっている人の他に、能の謡曲をやっている人、さらには雅楽をやっている人なんかもいますが、まったく別物に思えるこれらのジャンルも、CDで通して聴いてみると、前後の時代に共通点が見つかることもあります。
これらの音楽が、それぞれの時代でどのように演奏されてきたのか・・・・大河ドラマの平清盛のテーマに今様の「遊びをせんとや ― 」が入っていますが、実際あの時代では、どんな人がどういう思いで唄っていたんでしょうかねー。
連休後半、今年は天気が悪いですね。
- ゴールデンウィークに遣らずの雨の冷たさよ -