「D&AD Awards」審査員による「アイアムミカン」の解説。
1962年、英国で創設された「D&AD Awards」
世界中から専門家が集い、厳正な審査を行うことで知られる世界最高峰のデザイン、広告賞です。
「D&AD Awards 2022」の中からYellow Pencil(金賞)を受賞した「アイアムミカン」を、際立ったプロジェクトとして審査員が取り上げ、解説しています。
18:33頃~です。
訳しました。
Amy Frearson(エイミー・フレアソン)Dezeen(デザイン雑誌)編集者
Emma Follett (エマ・フォレット) Design Bridge(デザイン会社)チーフクリエイティヴオフィサー(CCO)
エイミー)では次のデザインに話を移しましょう。エマ、お願いします。アイアムミカンについてですね。
エマ) はい。これは今日取り上げてきた作品たちの中でもとても興味深いものですね。パッケージデザインとしてとても独特なものがあります。私がこの作品を選んだ理由は、選考するために部屋に入った時にこの喜びに満ちあふれたような姿を見て、すぐにこの作品を手に取りたいと思ったからです。
シンプルでありながら同時にエモーショナルなつながりを感じさせます。本来はただの段ボールの箱なのにです。選考するために部屋に入った時のことを思い返すと、あの小さな目たちが私を見ているんですよ。
「これは何?何なの?」となってしまいました(笑)
私はこのパッケージデザインの美しさの要素としてシンプルさがあると考えています。この作品は過剰なデザイン重視なものではなく、すべての要素が非常によく考えられています。その素材やデザインに誠実さのようなものが感じられます。そしてみんな納得するでしょうが、とてもユーモアがありますね。
箱に目がついているというシンプルさ、そこに実際、穴を開けてあるんです。それが何というか、このシンプルな箱をまるで小さな人間やキャラクターのように思わせてくれますね。みんなすぐそう感じるはずです。
さらにそのデザインは箱内の空気を循環させたり、箱の持ち手になるといった機能的側面も有しています。
こういった両面が、本来はただの普通の箱をまるで一人の人物のようにさせています。
印刷も愛らしい美しさがありますね。デザインは配置も含めて美しく考え込まれています。例えばこの箱を頭にかぶるとすぐにキャラクターになれる、そういった遊び心が感じられます。
それと同時に真剣に語りたい面もあります。いま世界中で食料をムダに廃棄している問題、この作品はその問題にも光を当てています。少しキズがついたみかんがなお食べられるし、美味しくもある。そして彼らには愛らしい絆創膏シールがはられています。目のシールもそうですよね。そのキャラクター性は、まるで誰かを家に迎え入れたような気持ちにさせてくれます。あなたの子供が怪我したときにその傷に絆創膏をはる。それと同じように傷がついたフルーツを扱う。その愛らしいデザインにもかかわらず、いろいろと考えさせられる作品です。完璧でなければすぐ廃棄されたり投げ捨てられる、そういったものとしてではなくです。
これはまさに天才的ですね。すべて要素が素晴らしく、この箱を家に持って帰りたいくらいです。そして家では子供たちが喜んで箱を頭にかぶって遊んだりするでしょう(笑)とても愛すべき作品ですね。
エイミー)同意します。この作品に惹かれずにはいられない。キャラクターとなったみかん達から想像をかきたてられますね。同時にあなたが言ったように、すべての細かなディティールが機能的意味も持っている。そこも気に入っています。そうしたことがこの作品とのエモーショナルなつながりを生み出しますね。そしてキズとか不完全さが何かしらの寛容さや共感といったものを生み出す。それはファンタスティックですね。