先日から、腰の付け根に激痛が走っており、動かすどころか寝がえりすらうてないほど、重症だった俺。
しかも、痛むのは左腰!!
実は俺は、怪我をする時に右ではなく左だった場合、必ず物理的なものではないという特性がある。
俺は昔、人の運命を変えるために自分の体が代償に持っていかれたことがある。
本来ならば、命を持っていかれるところだったものを、全治三か月の膝の裂傷の怪我だけで済んだのだ。
「もう少し強く打っていたら膝の皿が割れるところだったし、歩けなくなっていたかもしれないよ
危なかったね。運が良かったよ」
と医者に言われた。
しかし、その時の怪我は後遺症が残り、何年もたった今でも寒くなったり、使いすぎると痛みが走って上手く階段を降りれなかったり、走ることが出来ない。
俺が左側を怪我する時は、浄化が上手くいかなかった時や何かしらの目に見えない影響を受けている時だ。
そんな最中、最近あることがあって、チャージした巫女力を吸い取られる出来事があった。
もちろんその後、数々の酷い目にもあったが…
遂に左側を傷めてしまった。
最初は、『重いものを持ったからだろう』なんて楽観視していたんだけど、よくよく考えれば左側!!!
『…ヤバい…』
気が付いた時には、もう遅かった。
この時の俺は、感知能力もガード力も完全に鈍っていた。
そして昨日の夜中、ついに起こってしまった。
いつもならば、入ってきた時点で分かるのに、気が付いた時には完全に間合いを詰められた後だった。
『なんか変なのいる…!女か!!』
俺は、肉眼では霊体は目視できない。
存在感と第三の目で霊視する。
部屋で寝ている視点が脳内に広がり、その女は俺のほぼ目の前の右に横顔があった。
距離は30cmもない。
髪はロングで日本人。
年齢は26~32・33あたり。
二、三束の細い髪の束が目の横から垂れ下がっている。
俯いていて無表情…
ネットだろうがリアルだろうが、俺と接触した知人なら誰なのか解るもんだ。
しかし、目の前の女性は初見だった。
『誰だコイツ…見た事ねぇぞ?』
ただ黙って俯いているが、負の感情が渦巻いていて明らかに俺に的を絞って標的にしてきているのが解った。
『あ…こいつヤバい奴だ!!』
そう気が付いた途端に、無理やり目を開けて、大祓詞と伊勢外宮・内宮神前祝詞が必要と判断!!
速攻、流す!!
… 祝詞聴いてるとスゲー嫌な感じにザワザワして嫌がっているのが解る。
これは俺の感覚じゃなく、相手の感覚。
少し大人しくなったのでXでポストしていたら、隙を見て仕掛けてくる気なのが解った。
『やっぱり諦めないか…いよいよヤバいな!』
危機感を覚えて速攻、東京大神宮まで自分の魂魄を飛ばす。
鳥居の前で一礼して、手水舎で左手、右手、口元、左手、柄杓の手持ちを清める。
そうしている間にも、女はうつ向いたまま追いかけてくる。
清めが終わって、急いで参道の階段に差し掛かる。
豊受大神様の声に従い、駆け足で参道の階段を上る。
神門を駆け抜けると本殿前の参道には、天照皇大神様と豊受大神様がいた。
必死に走って逃げてくる俺は、天照皇大神様の胸に飛び込んだ。
神殿に入った時には、本来の白い天女服に長い髪の俺になっている。
天照皇大神様は、そっと優しく抱き留めてくれた。
息を切らせて神門側に振り向くと、その女は神門からこっちには入れないようで見えない壁に手を着いて、口惜しそうにこっちを見ている。
天照皇大神様は、『もう心配ありませんよ』と言うように黙って、小さな愛娘に柔らかい微笑みを向ける優しい母のように、こちらを見ると、怒るでもなく通常の顔で神門にいる女の方を見る。
――ほんの一瞬だった。
強い光が広がって、悲鳴のにも似た
「ああああああ!!」
という声が聞こえて…光が収まると、もう女はいなかった。
その後、俺は煌びやかな神殿の中に通されて、沢山の巫女や神官の様な人の居る所にいた。
とても暖かくて、安心する。
祝詞が響く中、いつの間にか俺は眠っていた。
久々に本気で怖かったわ!
朝起きると、ストレッチはしたもののコルセットを巻き、寝る前まで体制も変えられず、寝返りさえ打たないほど痛かった腰の激痛は嘘のように消えていた。
曲げても伸ばしても、何の痛みすらない。
寝起きの開口一番
と驚く俺がいた。
もちろん、天照皇大神様と豊受大神様に朝の挨拶と感謝の言葉を述べて仕事場へ。
後々、仕事中にアレが何だったのかを知る。
あの女は、思念体で生霊の一歩手前だったこと。
関りどころか面識すら全くない俺の所まで、どうやってたどり着いたのか。
あの時、黙って俯いていたけど、その思念体には
『寂しい・悲しい・悔しい・どうして?
…こんなはずじゃない・羨ましい・暗い・重い』
こういうものが少しずつ、ごちゃ混ぜになってた感じで、一番強い感情は分からない感じだった。
ただ明らかだったのは、俺が標的だったこと!
しかしだ!!
俺は好きを通り越して、愛してしまった人に3回もこっぴどく振られ、挙句には距離も置かれ冷たくもされる。
(気分次第で、たまに優しい雰囲気になる)
俺から話しかけない限り、相手からコミュニケーションを取ってくることは絶対にない!
誘ってもやんわりと、しかしキッパリ断られる。
そして…数か月前…
『何で今更…こんな事…!?
気が付かなきゃ良かった!
今更、それを知ったところで何になるんだよ!』
と思う、本人にすら自分で気がつくまで言えないこともある。
ぶっちゃけて言うと、なぜ自分の好みタイプでもなく、むしろ苦手なタイプだった相手に惹かれてしまったのか。
それが、俺が知ってしまったことだ。
そして、初めて会ったときに俺の巫女の力で、望まぬのに強制視聴させられたものもある。
リアルの時間では、ほんの数秒の間に五分くらいの動画を見させられた気分だった。
俺は、自分の気持ちを素直に言って3度振られている。
相手とは、もう二度と会えないかも知れない。
もう俺からは、二度と自分の気持ちは言うことはない。
ゆえに…結ばれることもない…。
それでも愛している気持ちは消えることもなく、ただ相手が自分らしくいれること。
気兼ねなく自分のやりたいことに向かえて、心から笑顔でいられることだけを願っている。
そんな俺の何が羨ましいんだ!!
絶対に届かない人を愛して…
それが唯一、俺の巫女の力を制御出来る自分の魂魄の僅かな欠片を持っているのを知りながらも、自分から気持ちを言う事は、もう二度とない!
そう覚悟を決めて、相手の幸せを願う事しかできない俺の何が羨ましい!?
俺を標的にすることがお門違いなんだよ!
俺は、貴女が羨むほど幸せじゃない!
こんな力を持っているがために知りたくもないことを知って、本気で誰にも言えないことや誰にも言えない悩みで孤独になることだってある!!
独りで一生誰にも言えずに、抱えていかなきゃいけない事だってあるんだ!
唯一、心配なのは、あの見ず知らずの女性が生霊化しなかったか?だけだ。
思念体のうちは、ただ強い想いだからまだいい。
生霊になってしまっていたら、本体に返った時の反動が出てしまう。
怪我や体調不良は必ず起きる。
せめて思念体のまま返っていてほしいと心から思う。
強い想いは、相手を護ることも出来るけど、一歩間違えば相手を貶めたりすることもある。
だから俺は生霊は本体が生きてる分、本人も気が付かないから厄介だと思うんだよ。