こんにちは!
胚培養士の大野です。
今回は前回に引き続き、東京で開催された「日本受精着床学会」で発表させていただいた
「第1分割形態を用いた良好胚予測の検討」
の内容をご紹介します。
以下は、発表してくれた胚培養士からのレポートです。
🔬 研究の背景:第1分割の重要性
受精卵が最初に分かれる「第1分割」は、
その後の成長を左右する非常に重要なイベントです。
通常は1つの細胞が2つに分かれますが、
いきなり3つに分かれるような「異常な分割(Direct-Cleavage)」が起こると、
受精卵の発生率や着床率が下がることが分かっています。
しかし、現在広く使われている評価法(Veeck分類)では、
この第1分割の様子が十分に考慮されていません。
そこで私たちは、
従来の評価に「第1分割の形態評価」を加えることで、
より正確に良好な胚(胚盤胞)や
染色体が正常な「Euploid(正倍数性)胚」を予測できるか検証しました。
📊 良好な胚を見極めるポイントは?
2024年から2025年にかけて
当院で受精が確認された4,271個の受精卵を対象に分析した結果
以下のことが分かりました。
- 良好胚盤胞の予測:従来の指標に第1分割の評価を加えることで、予測の精度が有意に向上しました。最も重要な指標は「3日目の割球数(8細胞であること)」で、その次に「第1分割が正常であること」が重要です。
- 染色体結果(Euploid)の予測:意外なことに、第1分割の評価は染色体結果の予測には直結しませんでした。むしろ、見た目のグレードが低い受精卵からでも、高い確率で正常な染色体を持つ受精卵が発生する傾向が見られました。
- 受精卵の自己修正能力?:正常な分割をしたグループではモザイク胚(正常と異常の細胞が混ざった胚)が15%だったのに対し、異常分割をしたグループではモザイク胚率がなんと「0%」でした。異常な細胞を胚盤胞に取り込まずに排除する、受精卵自身のメカニズムがある可能性が示唆されています。
💡 他の演題からの学び
今回の学会では、自院の発表以外にも多くの刺激的な報告がありました。
特に、受精卵の評価において培養士の目と
AI評価を組み合わせることで予測精度が向上するという報告や
卵を裸化する際のピペットの太さ・速さがその後の発生に与える影響など
日々の業務に直結する興味深い内容が盛りだくさんでした。
また、PGT-A(着床前ゲノム異数性検査)に関するセミナーでは
他施設での細かな工夫や手順を学ぶことができ、大変勉強になりました。
🌱 今後の展望
論文や学会報告から他施設の良い取り組みを積極的に取り入れ、
患者さまの成績向上に繋げられるよう、チーム一丸となって努力してまいります。