こんにちは! 胚培養士の大野です。
今回は、2026年7月に開催された「ESHRE」で発表させていただいた
「Time-lapse–guided polar body–based intervention for second polar body incorporation in a patient with high anti-centromere antibody titre and recurrent multipronuclear fertilization」
の内容をご紹介します。
以下は、発表してくれた胚培養士中山からのレポートです。
ESHRE 2026に参加して ~世界最先端の生殖医療から学んだこと~
先日、イギリス・ロンドンで開催された
ESHRE(European Society of Human Reproduction and Embryology)2026に参加してきました。
ESHREは、生殖医療分野では世界最大級の国際学会であり、
世界中の医師・胚培養士・研究者が集まり、最新の研究成果や技術について議論する場です。
今回の参加を通じて、改めて感じたことがあります。
それは、「患者さんのために、より良い治療を届けたい」という思いは世界共通であるということです。
「薬で改善する」研究が世界中で進んでいる
今回の学会で特に印象的だったのは、卵子や胚に起こる異常に対して、
薬剤や培養環境を工夫することで改善を目指す研究が数多く発表されていたことです。
これまでは「原因が分からない」「改善方法がない」と考えられていた現象に対しても、
- 卵子の活性化を促す方法
- 染色体異常を減らす可能性のある薬剤
- 胚の発育を改善する培養条件
など、患者さんに直接つながる可能性のある研究が数多く進められていました。
もちろん、これらの研究の多くはまだ基礎研究や臨床研究の段階であり、
すぐに日常診療へ導入できるものではありません。
しかし、「治療できない」と考えられていた課題に対して
新しいアプローチが生まれ始めていることを実感しました。
私たちも新しい挑戦を続けています
私たちの施設でも、「患者さんの利益につながる新しい治療法」を目指した研究を進めています。
その一つが、第2極体(2nd Polar Body)の除去という介入的な手法です。
通常は観察対象とされる第2極体ですが、特定の症例では異常な挙動を示すことがあります。
私たちは、その現象に着目し、介入することで受精や胚発生の改善につながる可能性を検討してきました。
この研究は今回のESHREで採択され、発表する機会をいただきました。
まだ限られた症例での報告ではありますが、「原因を観察する」だけではなく、
「患者さんの利益につながる介入」を目指した研究として評価されたことは、大きな励みになりました。
AIが進歩しても、「伝える力」はまだ人にしかできない
今回の学会では、AIの進歩も強く感じました。
英語の発表内容は、以前に比べるとAIによる翻訳や要約によって理解しやすくなっています。
海外の研究に触れるハードルは、確実に低くなってきています。
しかし一方で、実際の質疑応答や研究者同士の議論では、
まだAIだけでは十分に補えない部分も多くありました。
研究の背景や細かなニュアンス、その場でのディスカッションは、
やはり直接英語でやり取りできることの価値を改めて感じました。
日本人研究者の姿に刺激を受けました
そのような中で、とても印象に残った出来事があります。
日本人の研究者の友人が堂々と英語で発表し、
海外の研究者からの質問にも自分の言葉で答えている姿を見ることができました。
その姿は本当に格好良く、同じ日本人として大きな刺激を受けました。
「世界に向けて、自分たちの研究を自分の言葉で伝える。」
その姿を見て、「次はもっと成長したい」と強く感じました。
次の目標はオーラル発表へ
今回の発表は、私にとって大きな一歩でしたが、ここがゴールではありません。
次の目標は、オーラル(口頭)発表で、そのためには、
- 英語で研究内容を伝える力
- 世界の研究者と議論できる力
- そして何より、患者さんに直接役立つ研究を積み重ねること
が必要だと感じています。
京都IVFクリニックとして
今回のESHREで学んだことを、できる限り日々の診療へ還元していきたいと思っています。
世界では新しい治療法や考え方が次々と生まれています。
私たちも、その流れを追いかけるだけではなく、自ら新しい知見を発信し、
日本から世界へ貢献できる研究を続けていきます。
そして何より、その研究の先には、患者さん一人ひとりのより良い治療結果があることを忘れずに
これからも挑戦を続けていきたいと思います。
最後に
今回のロンドンでの経験は、世界最先端の研究に触れるだけでなく、
「なぜ研究を続けるのか」という原点を改めて考える機会にもなりました。
「研究のための研究」ではなく、「患者さんのための研究」
この思いを胸に、京都IVFクリニックはこれからも国内外の最新知見を取り入れながら、
新しい治療の可能性を追求し続けます。