こんにちは! 胚培養士の大野です。

 

今回は、培養部のスタッフが2025年5月に広島で開催された「日本卵子学会」でポスター発表させていただいた「第1分割の形態と培養成績の関連について」の内容をご紹介します。

 

以下は、発表してくれた胚培養士からのレポートです。

 

研究の背景

当院では、タイムラプスインキュベーターを導入しており、受精卵の成長を時間経過とともに動画で観察することができます。
受精卵は通常、1つの細胞から2→4→8…と順調に分裂していくのが理想的です。

しかし実際には、いきなり3つ以上の細胞に分裂したり、フラグメント(細胞の破片)が多く見られるような分裂もみられます。このような分裂がみられると、将来胚盤胞まで育ちにくい傾向があることが知られています。

そこで今回の研究では、受精卵の最初の分裂の仕方に注目し、胚盤胞に成長しやすいパターンについて調べました。

 

 

研究の方法

受精卵を、最初の分裂パターンによって以下の5つのグループに分類しました:

  1. 1→2細胞分裂
  2. 1→3細胞に分裂
  3. 1→2細胞になった後、すぐに3細胞になる
  4. その他の複雑な分裂
  5. フラグメントが多く見られる分裂

それぞれのグループについて、胚盤胞への発生率を比較しました

 

 

結果と考察

・最も胚盤胞に育ちやすかったのは、やはり「1→2への細胞分裂」をしたグループでした。
・特に「1→3細胞への分裂」や「フラグメントが多い」グループは胚盤胞まで育ちにくい傾向がみられました。


 

今後の展望

最初の分裂は、受精から2日目には観察できるため、初期胚で凍結する際の選択基準として非常に有用です。
今後は、2回目以降の分裂パターンも含めて解析を進め、より早い段階で妊娠しやすい胚を見極める研究を続けていきたいと考えています。