こんにちは! 胚培養士の大野です。
今回は、培養部のスタッフが2025年1月に開催された「日本臨床エンブリオロジスト学会」で発表させていただいた内容をご紹介します。
実際に発表したスタッフからのレポートです!
発表のタイトルは、「CLCGのGrading assessmentによる蛍光輝度の差により発生成績は予測できる」ちょっと難しそうに見えますが、要するに「ある特徴をもとに、卵子の成長が予測できるのか?」という研究です。
この発表で、新人演題賞と優秀演題賞という結果をいただくことができました!
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研究のきっかけは?
当院では「タイムラプスインキュベーター」という最新の装置を使っています。
これは、卵子や受精卵の成長を観察できるカメラ付きの培養器なのですが、「もっとこの装置の力を活かして、何か新しい発見ができないか?」と思ったのが、研究の始まりです。
そこで私が注目したのが、「CLCG(シーエルシージー)」という特徴です。
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CLCGってなに?
CLCGとは、卵子の中心あたりがザラザラして見える状態のことです。
ただ、誰にでもあるわけではなくて、ある卵子もあれば、ない卵子もあります。
これまでは「CLCGがあると、あまり良くないかも」と言われてきたのですが、明確な定義がなく、見る人によって判断がバラバラだと感じました。
そこで今回は、CLCGの見え方を客観的に評価する基準を作ることに挑戦しました!
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どんな研究をしたの?
まず卵子を3つのグループに分けました:
1.CLCGがないグループ
2.CLCGがあるけど、薄いグループ
3.CLCGがあるけど、濃いグループ
さらに、年齢で2つのグループにも分けました:
・35歳~40歳
・41歳~45歳
これらを組み合わせて、「どのタイプの卵子が胚盤胞まで成長するか?」を比較しました。
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結果は…?
驚いたことに、35歳~40歳のグループでは、CLCGが“薄くある”卵子の方が、成長率が高かったのです!
これは、今まで言われていた「CLCGがあると良くない」という考えとは違う結果でした。
また、41歳~45歳のグループでも、CLCGがあっても受精していればしっかり育つ力があることがわかってきました。
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最後に
今回の研究では、CLCGの「見え方(グレード)」を評価して、卵子の成長との関係を探りました。
まだ検討数は少ないですが、今後さらにデータを集めて、もっと確かな結果にしていく予定です。
新しい知見を通して、少しでも多くの方に希望を届けられるよう、これからも努力を続けていきます!