土曜日はABEMA地域対抗戦を見た。藤井竜王名人が最後4連勝で締めた。そして日曜日は新人王記念対局の藤井竜王名人対上野裕寿四段の対局がABEMAで放送された。NHK杯では準決勝第2局の藤井竜王名人対羽生善治九段戦が放送された。蛇足だがNHK杯は対局日を明らかにすることは出来ないのかな。結果は秘密でも仕方がないが、放送後も対局日がわからないのは気色が悪い。銀河戦などは対局日を明記している。何か不都合なことがあるのかな。予選の関係があるのかもしれないが、終わりの方は負けても本戦シードになるので、関係ないと思うのだが。

 さて10時からABEMAで新人王記念対局を見た。持ち時間3時間でチェスクロック使用であった。非公式戦ではあるが、以前は公式戦になっていることもあった。藤井竜王名人は王位対女流王位の記念対局で持ち時間のハンデイはあったが里見女流王位に敗れている。今回は先手新人王だけのハンデイである。振り駒でないというだけで、公式戦扱いにならないのは解せないな。上野新人王は今売り出しの藤本渚四段を3番勝負で破って、四段昇段後最速の優勝を飾っている。三段で決勝進出する奨励会員はかなりいるが、なかなか棋士の壁を破れない。しかし三段で新人王戦を戦っていて、途中で四段昇段を果たし、そのまま新人王に輝いた棋士はいる。昔はA級八段への登竜門という感じで、新人王を獲得してA級昇級できなかった棋士はむしろ少なかった。その後次第にA級昇級が難しくなったのか、本人のその後の頑張りが足りなかったのか、A級に昇級できないまま終わった棋士も増えた。新人王になったのがピークの棋士も出た訳である。最近は私の記憶も曖昧になって自信が持てなくなっているが、三段から途中四段になって新人王を取ったのは、森内俊之九段や糸谷哲郎八段がいたと思う。三段のまま新人王を獲得したのは都成竜馬七段がいるのではないかな。三段が新人王戦で優勝したので、それからは三段に次点一つを与えることになったと聞いている。新人王戦の出場資格にはいろいろと変遷がある。年齢制限があった。最初は30歳ではなかったかな。六段以下は割と守られているのかな。現在は26歳以下である。30歳で六段以下となると、新人王に何回もなるケースが増えたように思う。今みたいな色々なケースでの昇段規定がなかったので、C級でタイトル獲得したりするのでおかしくなる。渡辺明九段は竜王を先に獲得してそして新人王も取ったのではないかな。最近はタイトル挑戦をすると、出場資格を失うらしいので起こらなくなったようだが、屋敷伸之棋聖や郷田真隆王位などは新人王戦に出ていたのではないかな。藤井竜王名人は新人王になった時は既にタイトルを獲得していたはずである。女流棋士も参加するが、ほとんどが1,2回戦負けでベスト8になるのも大変である。

 さて記念対局は中盤まで互角に進行した。消費時間も藤井竜王名人の方が早く消費していた。解説は佐々木勇気八段だったが、中盤戦までに藤井竜王名人に30分以上使わせたら上出来でしょうと語っていた。しかし52,3%までは行くが上野四段が完全に有利と言う場面は作り出せなかった。後一手で詰むという所まで進んだが、佐々木勇気八段の講評は藤井竜王名人の完勝譜でしたねということだった。優勢になって、更に勝勢になっても勝ちにくいのが藤井竜王名人になるのであろう。

 NHK杯はいい勝負だったと思うのだが、結局は棋士が最も嫌う読み負けということなのかな。互いに後には引けないとなって、終盤から寄せ合いになったのだが、羽生玉が辛うじて残して即詰みは無かった。しかしそこで悠然と必死をかけたのである。藤井玉も危なくて駒を渡したら詰みになると思われたのだが、寄せに入って詰まなかった。これは羽生九段の逆転勝ちというのが相場なのだが、藤井玉は上手に逃げ回っている。1一竜と香を取った手が絶妙手で寄ったと思ったのだったが、5二玉と歩を取った手が、桂などの王手が続く場所だけに盲点になっていた。詰まないのである。詰みがあるかもしれないと手を進めていたであろう羽生九段がガックリした表情になったのが印象的であった。まだ王手は続くはずだったが、そこで投了した。何故か棋聖戦の渡辺棋聖の局後の談話で、「え、これ詰まないの。詰まないんだあ。」というのが思い出された。一目だと詰む感じなのだが、詰まなかったので仕方なしに必死をかけたように思えたのに、それが読み切りだったことの恐ろしさ。この最初があって、その後渡辺九段は次々と4つものタイトルを明け渡すことになった。最初のインパクトが強かったのであろう。すっかり苦手意識を植え付けられてしまった。

 羽生九段は次々と先輩棋士からタイトルを奪っていったが、羽生世代以降はそんな棋士なのだと思って挑戦していった。結局は「島研」のメンバーの争いが続いた。年上の佐藤康光九段は羽生九段以外には大体勝ち越しているが、羽生九段には負け越しが大きい。互角近くになったのは同年の森内俊之九段であった。

 現在藤井棋王は同年の伊藤匠七段の挑戦を受けている。おそらくこのまま防衛するであろう。ところが叡王戦では伊藤匠七段が挑戦者決定戦に進んでいる。待ち受けるのは研究会仲間の永瀬拓矢九段である。永瀬九段は伊藤匠七段とも研究会を実施しているらしい。このところの伊藤匠七段の充実ぶりは素晴らしい。藤井八冠にタイトル挑戦しなければ、最高勝率争いに首を突っ込んでいるであろうという感じである。NHK杯は藤井竜王名人対佐々木勇気八段戦になった。勝っていれば最高勝率争いは藤井竜王名人になるが、果たしてどうなったのであろうか。3月17日にNHK杯の決勝戦と棋王戦の第4局がある。一番いい形になってくれれば良いのだが。