読書記録です。


「タダイマトビラ」村田沙耶香 新潮文庫






母性に乏しい母親、
そんな妻に辟易して帰らない父親、
長女恵奈と長男啓太。

この家族は機能不全家族…
とまでは言わないのかもしれません。

子どもは少なくとも虐待はされておらず、
ただ甘やかな親の温もりや団欒、
気遣いに欠けた家で、
長女恵奈は子どもの頃から
「おかえり」と言って迎えてくれる
自分の「トビラ」を夢想して成長する。


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欲望をどう満たしていくのか。

それに相応しい名前をつけながら
恵奈が日常を生きる所から
ぐいぐい読ませる魅力があります。

お腹が空いたら、
美味しそうな匂いを嗅ぎながら
もぐもぐすると空腹が満たせる。

寒かったら赤い折り紙を見つめると
暖かくなる。

少女らしい「気付き」で
親からは満たされない思いを
補填しながら。

中でも少女が愛した方法で
特筆すべきは
自室のカーテンを「ニナオ」と呼び
「カゾクヨナニー」(家族欲を満たす)
自慰行為でしょう。
この「カゾクヨナニー」だけが
他の方法と違うのは
彼女の成長によって
バージョンアップする所です。

これがテーマを動かしていく
大きな行為になっていく所に
感心と共感して…。


最初は
学校であった他愛もない出来事を
揺れるニナオ(カーテン)に語りかけ、
そっと顔や身体に触れる感触が
「そうなの?」「いい子ね」と
母親のように撫でられて
恵奈は「家族欲」を満たします。

次第に彼女は自分の醜い部分、
級友にわざと酷い言動した事を告白して
それでも甘やかに撫でて許されて。

ニナオ(カーテン)と共に過ごす
「カゾクヨナニー」は
彼女だけのサンクチュアリのようでした。

恵奈には
友だちもいて、恋人もいて、
近所の憧れのお姉さんもいて、
大人になったら家を出て
私だけの「トビラ」を手に入れる
そんな未来もあったはずなのに、

彼女が崩壊してしまうのは
ほんの些細な気付きでした。


生活の中で
ユニークな自慰行為を編み出しながら
成長する、
少し周囲と噛み合わない彼女に感心して
「この子には両親も弟もいらないな、
早く大人になってね爆笑」と 
応援して読み進めておりましたのに…。



村田沙耶香ワールドがラストにびっくり


家族というシステムを破壊する恵奈に
実は狂おしいほどの理想の家族を、
これほどまで「家族欲」を
渇望していたのかという驚きと共に
私はそう読みました。



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でもインナーチャイルドって
誰でも現れますよね。

皆さまどんな時に現れますか?


私はたとえば
好きな服(普通の服♪)を着ている時。
バッグや洋服、メイク用品を買う時。 
美容院に行く時。
仕事や用事以外で
好きな時間に好きな所に出かける時。

頭の中で
母親に罵倒されています…笑。


子どもに接する時。

わざとらしく優しいフリするなぁ…
とやはり気持ち悪がられます…笑。

誰かに優しくされたり、
褒められたりする時。

ホンマは嫌われてんねんで…
と声が聴こえます。

なにか
(落ち込まないようにしておりますが)
不幸な出来事に見舞われたら…

嬉しそうに詳細を聞きたがる誰かに
心の中で質問ぜめにあいます。


誰もそんな風に思ってないだろうし、
誰からも言われもしないのに、
自分の心の中で勝手に自分を傷つける、
日々のあれって何なんでしょうね笑い泣き
(インナーチャイルドじゃない?)


でも脳って騙せるらしいのです。

だから
なるべく笑って
「私毎日楽しいーー!」
「私ってラッキー!」って
過ごすようにしております爆笑