(ネタバレ注意!)映画版、各場面ごとの原作との比較と感想⑥ | 近キョリ恋愛、原作と映画の比較

近キョリ恋愛、原作と映画の比較

原作無視で話題となった映画「近キョリ恋愛」を原作と比較するブログです、映画の感想も時々書きます。原作、映画共にネタバレあるので注意!

映画の近キョリ恋愛を原作と比較するのもこれで6回目。

これまで頭ぽんぽんはともかく、壁ドン、お姫さま抱っこ、そして教卓キス、と近キョリ恋愛のウリである胸キュンシーンのほとんどが不自然になるという最悪な状態でした。

ここからは、もはや原作の面影なんてほとんどないに等しい、スタッフが考えた「もしも私たちが『近キョリ恋愛』の原作者だったら」と言ってもいいくらいやりたい放題の展開になります。








そんなわけで、美麗としては今までハルカが自分からキスしたことなかったのにゆにに自分からキスしたことが相当悔しかったのでしょうか、ゆにの目の前でハルカとちょっと仲良くして見せます。

それを見たゆにはさらに女子生徒たちの会話からハルカと美麗が幼馴染だということを知り、嫉妬したのか、その場から逃げ出してしまいます。

急に走り出したゆにを誰も気にならないのが不思議なのが相変わらずですが、一応ゆにはこの時点ではハルカと美麗が昔付き合っていたということは知らないはずです。

原作では滝沢美麗という名前を見た時点で既に知っていましたが。

そりゃ、幼馴染から恋へ、というパターンは少女漫画とかではよくあるっちゃありますが、幼馴染だった2人が再会してちょっと仲良くしている程度で、もう見たくないとまではならないと思います。

もしかしてこれも申し訳程度の原作リスペクトなのでしょうか。

原作でも、ゆにが美麗に対して嫉妬をする場面があります。

しかし、映画みたいに薄っぺらいわけではなく、美麗が知っていて自分は知らないハルカの秘密があることや、かつて美麗はハルカにプロポーズされていた(後にこれは美麗がゆにに嫉妬した結果ついた嘘だと判明しますが)など、色々な要因が合わさった結果の嫉妬です。

ゆにが、美麗先生なんかいなくなればいいのにと思ってしまう自分が嫌になる、という原作の世界観にしては珍しくリアリティのある展開で、個人的には結構感情移入できた場面だと思います。

脇役が主人公に嫉妬して悪い事をする、というのはよくありますが、主人公が脇役に嫉妬して悪い事(美麗が昔ハルカからもらったピアスを盗む)をするというのは珍しいんじゃないでしょうか。

しかし、そんな斬新な展開も映画化するにあたって再会した幼馴染2人がちょっと楽しそうに話しているだけでいきなりその場から走り出すという薄っぺらい嫉妬になってしまいました。





そして、雨の中、ゆにはもう一度ハルカに告白しますが、相変わらずハルカはゆにの気持ちを考えていなさすぎです。

自分からキスしておいて「ごめん」の一言で全て解決すると思っているのでしょうか。

ゆにに対してその気にさせといて「お前の気持ちは一時的なものだ」だなんて自分勝手にもほどがありすぎます。

インタビューなどではこの辺のハルカの事は言及されていなく、ハルカがゆに思いの優しい教師だという話題ばかりですが、中盤のハルカは本当に最低な人間だと思います。

劇場で見ていてものすごく腹が立ちました。

そりゃ、常に無表情(のはず)のゆにが「何もわかってない!」って怒鳴るのも無理ないです。

教卓キスのくだりからこの場面までを見るたびにイライラしてきます。

ゆにのスカートくしゃ、のくどいアップがさらにイライラさせます。

少なくとも原作のハルカはこんなのではありません。

…ところで、季節的にはまだ夏休みに入っていないのに、なぜ教室から出た生徒はハロウィンのかぼちゃを持っていたのかが気になります。








初っ端から感情的になってしまいましたが、ここでやっと原作を再現した場面が登場します。

原作では第8巻の第30話「天才少女の新生活」。

まさに原作と同じ展開でここまで原作無視ばかりだったこともあり、ここの原作再現はとても嬉しかったです。

しかし、相変わらずそれゆえにまたもやゆにのキャラがおかしくなっています。

最初の方で述べられていたように映画ではゆにはナミ以外友達がいません。

それまではどんなことがあっても無表情で周りの事にも反応していなかったゆにがここで突然的場のノートを男子生徒から守ったのです。

ハルカに恋して自分の気持ちに素直になったからってことなのでしょうか…でもその割には相変わらず友達はいないようだし。

あと、演技の事には色々言いたくないのですが一つだけ。

的場役の小瀧望さんは以前からよく舞台に出演されているそうですが、そのせいか「ありがとうございました!」とか、この後の「枢木さん!」の言い方がすごく舞台っぽい言い方なんですよね…

なんか、的場だけ1人ミュージカル状態、みたいな。








そして、前日雨の中傘もささずにいたせいか、ゆには熱を出して倒れてしまいます。

この場面こそ、3回目(詳しくはこちらの記事で)の時に書いた、原作でゆにが倉庫に閉じ込められる場面から引用されたと思われる場面です。

原作では倉庫に閉じ込められた時に既にゆには体調を崩していて、ハルカと小南が閉じ込めた生徒からカギを取り返し、倉庫を開けた時には既にゆには倒れていました。

以前述べたように原作ではこの時一度2人は別れていて、ハルカはまたゆにを抱きしめたくなってしまうことを恐れ、小南に保健室へ運ばせます。

原作ではこの時既に小南は2人の関係を知っているからこのような会話が成り立つのですが、映画ではまだこの時点では的場は2人の関係を知りません。

そもそも、的場はつい数分前に登場したばかりですからね。

それなのに、保健室でハルカに「俺の事は言うな」と言われてあっさり了承しているのです。

普通は「なんでですか?」とか、「え?」って反応をするのが自然なはずなのですが…

そして、3回目の記事でもう一つあげた「ここでお姫さま抱っこをやった方が自然だった」という場面もここです。

原作とは違い、映画ではハルカがゆにを保健室に運んだと思われます。

もっとも、担任でもないのに「どうしたのか?」と聞かずいきなりゆにのもとへ行ったあたり、この2人に何かあったと思う人がいてもおかしくないと思うのですが。

3回目の記事の時のお姫さま抱っこは2人が両想いになる前である上、ゆには軽い捻挫程度で、歩くことができたにもかかわらずハルカはお姫さま抱っこをしていました。

一方、今回のはまさに原作の美麗と同じ、意識を失って歩くことなんてもってのほかという状況です。

現に保健室の先生も「このまま1人で帰すのは無理ね」と言っています。

絶対にここでお姫さま抱っこをやった方がずっと自然だったにもかかわらず、ハルカがゆにを保健室に運ぶところは見事にカットされています。

せっかくハルカが保健室に運ぶってところまではいい感じだったのになぜここでやらなかったのでしょうか…

教室に大勢の生徒がいて騒がれるからでしょうか、でも、それは捻挫の時も騒がれていましたよね。

なぜスタッフはあんな不自然な場面でお姫さま抱っこをやろうと思ったのか理解できません。





こちらの場面も原作を再現…とまではいきませんが、第8巻の第32話「天才少女の変化」とほとんど同じ流れです。

原作では的場が家庭科室でケーキを作っているところをゆにが目撃し、2人でそのケーキを食べながら2人の進路について語らっていましたが、映画では的場がカフェのケーキを食べて味について勉強したいものの1人では入りづらいから、とゆにと2人で食べて、そこで進路について語らっています。

的場が作るケーキをゆにが絶賛する、という部分が欠けていますが、まあ物語にはさほど影響していません。


…というわけで、一瞬だけですが原作の面影を感じることができる場面がありました。

しかし、原作の完全再現はもうここで終わりで、多少引用している場面はありますがもうここからは本当にやりたい放題です。

結局原作を再現した部分なんてほとんどなかったのです。


次回からいよいよ後半に入りますが、いきなり史上最強の情緒不安定教師、櫻井ハルカがゆにを連れ去ります。

また前回のようなメチャクチャな展開のオンパレードです。



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この巻に収録されている第13話から第16話全てにかけて、ゆにの美麗に対する嫉妬と、それに対する葛藤が描かれています。厳密には第3巻の第12話から美麗が登場しているのでそちらから読んだ方がいいかもしれません。


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