やはり昨夜はあまり眠れなかった。

エレクトリック・プルーンズの『今夜は眠れない』は、
やはりシャレにならなかったというわけか。

いや、ビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』のゴールドCDがまずかったのだ。

昨日入手した『ペット・サウンズ』のゴールドCDを夜中に聴いていると、
いろいろな楽器やコーラスのアレンジが気になりはじめ、
そういう音に集中していると、
なんだか気分が悪くなってきたのだ。

美しく崇高な作品だが、
どの楽器の音もコーラスも全部変てこりんなのだ。

いや、変てこりんというよりは、
不気味そのものなのだ。

ミレニウムのカート・ベッチャーは、
素晴らしいハーモニーには必ず不協和音を混ぜなければならない、
といった。

香水を作る際にウンコ臭い成分を入れるやり方と同じ発想だ。

だが、天才ブライアン・ウィルソンの紡ぎだす音は、
全部が不協和音なのだ。
どの音も完全に狂っている。
なのにどうして『ペット・サウンズ』は美しいのだろうか?

そんなことを考えていたら、
目がギンギンに冴えはじめた。

これじゃいかんと思い明け方に聴きはじめたCDが、
ニルソンが1967年に発表した『パンデモニアム・シャドウ・ショー』だ。

あのジョン・レノンがその素晴らしさに興奮をして、
思わずニルソン本人に直接感動の電話を入れたといういわくつきの作品で、
事実上のニルソンのファースト・アルバムである。

ニルソンのビートルズへの強い愛憎や、
変態性が見事に集約されている1枚である。

何が変態といってこのニルソンという人は、
コーラス・パートを他人に任せず、
カメレオンのように変化する己の声で全部のボーカル・パートを録音しているのだ。

カート・ベッチャーがミレニウムを使い、
ブライアン・ウィルソンがビーチ・ボーイズ、
さらに最近ではワンダーミンツまでを使って、
自己の表現を確立しているというのに、
ニルソンは一本どっこで完結させているまさに自己完結型の才人なのだ。

暗い部屋でエヘラエヘラ笑いながら、
自分の趣味に没頭する人間の行動は、
僕にも理解できるが、
見ていてあまり感心をしない。
それがイモバン彫りだったりした日には、
不気味というよりも変態に思えてしまうのだ。

そうニルソンの作品は、
この『パンデモニアム・シャドウ・ショー』に限らず、
全作品が暗い部屋でイモバンを作っている変態のノリなのだ。

そんなニルソンのアルバムの中でも、
ジャケットの際立った不気味さと、
サウンドの美しさ、
そしてイモバン彫りぶりがあからさまに反映されているのが、
このアルバムである。

多重録音でもっていろいろな声や音程を使い分けるニルソンのイモバンは、
強烈な個性を放っているが、
その変態ぶりが気になり過ぎて、
僕はますます目が冴えてしまった。

僕も病気だろうか?
スパリゾート井上の魔性の火山