気になる言葉 <第837回> | MIKEのブログ

気になる言葉 <第837回>

『冬至』の次候、『麋角解(さわしかのつのおつる)』です。

麋(さわしか)とは大鹿のことで、その角を麋角(びかく)といいます。大鹿の角は毎年生え変わりますが、この時季に抜け落ちて春に生え始めます。

クリスマスも過ぎ、これからが年の瀬の本番になっていきますが、何かと忙しく、気ぜわしくなりますね。

 

朝の散歩道は、『冬至』を迎えて、出かける時は夜明け前の暗さの中にあります。反射バンドを腕に巻いて対向車に気をつけながらの朝散歩です。

しかし、この暗さと寒さがいかにも師走の朝という感じがして、ピリッと身が引き締まります。

しばらく歩くと東の空に日の出が見えてきます。この日の朝は東の空には、弱いながらも「サンピラー(太陽柱)」のような天に向かって伸びる光の柱が見られました。

この現象は空中に浮かぶ氷の結晶に光が反射することで見られるのですが、いよいよ寒くなってきた証拠ですね。

 

 <写真1>

 

この日の散歩道は、田んぼの水溜まりとか道のくぼみなど、そこかしこに氷が張っているのが見えました。この辺りでの初氷(はつごおり)です。例年より少し遅かったのですが、

いかにも真冬になってきたという感じがしますね。

 

<写真2>

 

はりはりと山の浮田の初氷 (遠藤とく)

昨夜吹きし風のかたちの初氷 (伊東恵美子)

初氷日を照り返し照り返し (森田蝌蚪)

 

冬の詩ということでは、やはり高村光太郎の『冬が来た』が思い出されますね。

冬の緊張感が伝わってきます。

 

きっぱりと冬が来た

八つ手の白い花も消え

公孫樹の木も箒(ほうき)になった

 

きりきりともみ込むような冬が来た

人にいやがられる冬

草木の背かれ、虫類に逃げられる冬が来た

 

冬よ

僕に来い、僕に来い

僕は冬の力、冬は僕の餌食(えじき)だ

 

しみ透れ、つきぬけ

火事を出せ、雪で埋めろ

刃物のやうな冬が来た

 

 

 

今週の<気になる言葉>は、早大名誉教授、池田雅之さんが語った幸福度についての言葉です。

最近、日本は経済力だけでなく、国民の感じる「幸福度」の国際順位も下がって来ています。

とくに、幸福度については先進国137か国の中で最下位というのですからショックです。日本は物質的にはかなり豊かになっているのですが、その幸福度を実感していないということになります。

これについて池田雅之さんは、日本人が古来から持っていた「人間もまた地球、自然の一部である」という素朴なアニミズムの感覚を明治維新以後の西洋化や戦後のGHQによる占領政策やマネーを優先する資本主義化の中で失っていったせいではないか、と語ります。

かつて持っていた「幸せな日本」の感覚を取り戻すために池田雅之さんは三つの提案をしていました。

一つには、「日本文化・伝統の見直しと復権」、二つには、「人間の生命観・自然観への反省」、三つには、「市民一人ひとりの精神的自立」という指摘です。

 

 

今週の<旅スケッチ>は、先日訪れた北九州の旅の途中で見た九十九島の景色です。

 

 

日本各地に複雑に入り組んだリアス式海岸がありますが、北九州の佐世保にも「西海国立公園」に指定された「九十九島」があります。

九十九島は大小208の島々からなる風光明媚な景勝地として知られており、とくに、その島々の密度は一級品だそうです。

私たちは午前中、船から美しい景色を楽しんだのですが、船長からの説明ではとくに夜明けの風景が最高だそうで、その写真を見せてもらいました。私のイメージした夜明けの景色とぴったりでしたので帰ってから絵にしてみました。

 

マスキングで光の部分を描いてから、濃いブルーの夜空や海、そして島の森を水彩絵の具で描いていきました。その後、マスキングをはがして、その上にいろいろな光の色を載せていきました。

白々と明ける早朝の空と、その茜色を反射して輝く九十九島の静かな雰囲気を感じていただければありがたいですね。

 

 

今週の<朝の散歩道>の一枚目は、クロガネモチが赤い実をつけた様子です。

 

 

クロガネモチの花期は5~6月ですが、おもしろいのはイチョウと同じ雌雄異株なんですね。その花粉は数百メートルも飛ぶそうです。そして、11月から2月にかけて5~6mmほどの球形の赤い実を多くつけます。

ただ、毒はないのですが人は食べられません。野鳥も好みではなさそうですが、餌がなくなると啄みに来ます。

クロガネモチの名前の由来は「苦労がない金持ち」から来ているようですが、そのために縁起物として庭木などに好まれるとのこと。

 

因みに、俳句ではまだ正式な季語になっていませんが、ひとつ紹介します。

冬日さす黐(もち)の実赤き停留所 (遊雀)

 

 

二枚目は、枇杷の花です。

 

冬の寒さから花を守るために、ビロードのような毛で被われています。しかも、極上のコートです。風のない日に満開の花のそばに行くと、バニラのような桜餅のような甘い香りがします。

しかし、色自体は地味で目立ちませんので花に気づく人はあまりいません。朝散歩する人の密かな楽しみになっています。

 

しみじみと見上ぐる今朝の枇杷の花 (小牧喜美子)

枇杷の花乾きし風の触るるばかり (朝長美智子)

こんなにも寂しき日々よ枇杷の花 (宮本道子)

 

 

 

 

1.「幸せな国・日本を再び取り戻す三つの柱とは」

           ー池田雅之(早稲田大学名誉教授)ー

 

国連が発表した2023年度版の世界幸福度ランキングでは、世界137か国中日本は47位と、先進国の中で最下位になっています。つまり、日本は物質的に豊かになっているにもかかわらず、幸福をあまり実感して生きていないということになります。

これに対して日本神話研究などで知られる池田雅之さんが、再び「幸せな国日本」を取り戻すための三つの柱についてインタビュー記事の中で語っていました。

 

一つには、「日本文化・伝統の見直しと復権」です。あらゆるものに仏性があると説く仏教の教え、あるいは関わる皆の幸せを考える「三方よし」の商習慣、血縁や地域社会、職業などを中心に形成されていた相互扶助のあり方の見直し、は西洋の人間中心二元論思考を克服していく可能性を持っています。

二つには、「人間の生命観・自然観への反省」です。「人間対地球」と分断して考えるのではなく、「人間=地球」というような統合志向に向かうことで、地球と人間の共生関係を再構築していくことです。

三つには、「市民一人ひとりの精神的自立」です。とくにコロナ禍以後の世界、ウクライナ危機に伴う世界秩序の大転換期にあっては、日本人一人ひとりの自覚と自立がますます求められています。

お上やメディアの言うことを鵜呑みにするのではなく、何が最も日本、日本人の幸福に繋がるのか、自分自身の信念に従って考え、判断して行動することです。

 

「人間もまた地球、自然の一部である」こうした考え方は古来、アニミズムの世界に生きてきた日本人がごく普通に持っていたものだったのですが、明治維新以後の西洋化や戦後のGHQによる占領政策やマネーを優先する資本主義化の中で失っていったわけですね。

そこに日本の様々な問題の根があり、世界的に日本人の幸福度指数が低い理由があるように感じるのです。

 

かつて小泉八雲が語っていたように、「日本人の美徳として持っていた自然や超自然との共生、善良や素朴なものへの愛、質素や節約、などを大切にし、そのようなかつての日本人の文化伝統、生き方に今一度光を当てて、現代社会に合う形で再生させていく」それが幸福な国を再び取り戻すための一つの道ではないでしょうか。

いや、おそらくそこからしか、日本の幸福も個人の幸福も実現できないのではないかと思うのです。

 

来週は、お正月ですのでお休みさせていただきます。

みなさま、今年も『気になる言葉』の配信をお読みくださり、ありがとうございました。

来年もよろしくお付き合いいただければ光栄に思います。

ぜひ、よい年をお迎えください。

それではまた。